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遺恨ⅩⅡ ガール(ズ)トーク

 アルエット達が商業区画に向かった直後、ゼーレンの小屋。アムリス、ゼーレン、ガステイルの三人はお茶と菓子を食べて、のんびりしている。


「さて、今ごろ殿下もルーグちゃんといい感じになっているでしょうし、アタシ達も仲良くなっちゃいましょ!」

「あの、こんなにのんびりしてもいいのでしょうか?」


 アムリスがおずおずとゼーレンに尋ねる。


「アムリスちゃんもルーグちゃんも、あのまま続けてもパフォーマンスが落ちる一方よ。ガス抜きと頭の中を整理する時間が必要なの。ほら!二人とも〜!アタシに聞きたいこと、あるんじゃない?」


 胸を張るゼーレンにガステイルが挙手して尋ねる。


「あ、それじゃ。なんでレンちゃんさんは人間でも魔族でも弟子に取ろうとしたんですか?俺たちエルフよりも寿命が短いのに、受け継ぐ理由とかなくないですか?」


 ゼーレンは目を丸くするが、すぐにクスリと微笑みかける。


「確かに、魔法畑のエルフの人たちには分からない感覚でしょうね……。アタシね、元々魔王に召し抱えられてたのよ。」

「ええっ!?」

「昔よ、昔。一人でも追求できる魔法と違って、剣の稽古には相手が必要。修行を始めて100年もすれば、人間領に相手はいなくなったわ。だからアタシは魔族領に渡った。それでも、また200年もすれば魔族でも相手にならなくなった。」


 ゼーレンはお茶を一口飲む。アムリスとガステイルはゼーレンの話を前かがみになりながら聞いている。


「アタシの名は世界中に轟いたわ。剣翁なんて失礼な渾名がついたのもその頃よ。そしてアタシは魔都ジューデスに呼び出されたわ。」

「配下になれ、ってことですか。」

「ええ。最初は自分の稽古の時間がとれないと断ったのだけど、若手魔族の剣術指南役をして欲しいって必死に頼まれちゃってねぇ……。」

「それで、引き受けたんですね。」

「ええ。といっても、最初は稽古相手がいないなら自分で弟子を取って理想の相手にしてしまえばいいじゃないって思って受けたのよ。でも続けていくうちに誰かに技術を託す喜びがクセになっちゃったのよねぇ。弟子のみんなにも愛着が湧いたのもあって、これが600年続いたわ。」


 ゼーレンは満面の笑顔で語った。それを見たガステイルは赤面しながら


「すみません、失礼な質問でした。」


 と詫びた。


「いいのよ、気にしないで。アムリスちゃんは何かある?」

「え、私は……今は特にないです。」

「あらぁ……。まあでも、やっぱり聖剣はオーラがあるわねぇ。見れば見るほどうっとりするわ。」


 ゼーレンは聖剣を手に取る。アムリスは驚く。


「あれ?持てるんですか!?」

「もちろんよ。聖剣にも意思はあるの。持ち主と聖剣自身の機嫌を損ねなければ、ほら。」


 ゼーレンは聖剣を鞘から抜き、構える。


「少なくとも()()()()のように振舞ってはくれるわ。」

「そうなんですね……。」


 アムリスは少しショックを受ける。それを見たゼーレンは聖剣を鞘に収める。


「でもね、聖剣としての力を引き出せるのは貴女だけなの。こんな使い方なら聖剣じゃなくてもいいのよ。」


 ゼーレンはアムリスにしっかり向き直る。


「だから、貴女のやるべきことは聖剣の声に耳を傾けること。聖剣が貴女の何に呼応して貴女を選んだのか、自らを省みて考えること。それができれば、貴女はいくらでも強くなれるわ。」

「はい、分かりました。」


 アムリスはゼーレンの目をしっかりと見つめて言った。


「うーん、説教臭くなっちゃったわねぇ。それじゃ話変えましょう!殿下とルーグちゃん、どんな感じになって帰ってくると思う?」


 ゼーレンは手をパチンと叩き言った。


「本当に話変わりましたね……。でも、流石にルーグさんも気付くんじゃないですか?」

「いやいやいやいや」

「絶対にありえませんね!」


 総スカンを食らうガステイルに、アムリスは追撃する。


「ガステイルさんはまるで分かってないです!ルーグさんのヤバさを!」

「そんなにかよ……」

「ええ。あの人の辞書には自重と葛藤という文字は載ってないと思います。」

「アッハッハッハ!!」


 アムリスの熱弁が、ゼーレンのツボに入る。ガステイルはドン引きで言葉を失っている。


「ハハハ……あーいや、お腹痛い。いやでもね、殿下の方もあれはなかなか拗らせてると思うわよ。200歳以上歳下の子なんて普通は流石に受け付けないわよ。」

「それはそれでズレている気がしますが……」


 こうして女子会は盛り上がりを見せたその時。玄関の扉が開く音がする。


「帰ってきたみたいですね。」

「え、もう?」

「本当にご飯を買いに行って終わりだったみたいですね……。」


 口々にルーグへの文句が飛び交う中、広間の扉が開いた。


「あら、早かったじゃないの。」


 立ち上がり扉の方へ向く三人。しかし


「違う!!殿下じゃない!!!」


 そこに立っていたのは、赤い目をした女の魔族。ウサギのような耳が生えており、腰には異様な雰囲気の剣が2本提げられている。魔族は手袋を深く引っ張り、冷徹な目線で三人を射抜く。アムリスは剣を抜き臨戦態勢を取る。魔族を見たゼーレンは一瞬怯んだが、口を開き


「ラムディアちゃん……。」


 そう呟いた。


「25年ぶりですね、師匠。あの日以降、ジューデスを出られたと聞いて驚きましたよ。」

「どうして、ここが?」


 ゼーレンの質問に、ラムディアは柄をポンと叩き答える。


「クラウディに聞いたんですよ。そこの女の聖剣にも同じ遺伝子が流れているんでね。エルフの結界で混線が起きたので手間取りましたが、逆に言えばそこにエリフィーズがあるということですから。」

「……一応聞くわね、何をしに来たの?」


 ラムディアはふふと微笑み、


「愚問でしょう。」


 その刹那、アムリスを蹴り飛ばした。


「ぐぅっ!?」

「アムリスさん!」


 ガステイルがアムリスに駆け寄る。ラムディアとゼーレンは対峙し、ラムディアはゼーレンに告げる。


「私の目的はいつだってただ一つ。人類の殲滅でございます。師匠もご存知でしょう?」


 ラムディアはゆっくりと剣を抜いた。

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