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決戦ⅩⅩⅥ フォーゲルシュタット奪還作戦

 魔王城入口。アルエットは平静を装いながら改めてシイナに向けて質問する。


「シイナ……貴女、今まで一体どこに!?」

「フォーゲルシュタットです……お父様による攻撃があった、あの日からずっとです。」

「そう……あの日ね。」

「あの日……魔王様が帰る直前、代理の領主がジューデスから寄越され、私は彼女の元でフォーゲルシュタットの治安維持をそのまま任されておりました。」

「それで、なんで今こんなところに?」

「あら、アルエット殿下ならご存知なのでは?人間の襲撃ですよ。先程の領主代理が殺害されフォーゲルシュタットが人間どもに渡ったので退却した次第でございます。」

「フォーゲルシュタットが人間の手に戻ったんですか!?アドネリア殿下、上手くいったんですね!!」


 ルーグが割って入るように声を上げる。喜んでいる彼とは裏腹に、アルエットはシイナを訝しむように見つめていた。


「アルエット様、どうかしたんです?」

「……いくらなんでも、早すぎる。教会の助けがあるとはいえ半日で落とされた都市を半日で取り返せるなんて……。」

「でしたら、確認してみますか?」


 シイナは提案と同時に胸元からゴソゴソと魔道具を取り出す。シイナが魔道具を起動すると、空中に投影魔法のように映像が展開される。


「これは投影魔法を記憶する魔道具です。私が今日フォーゲルシュタットで見たこと聞いたことを全て共有することができます……ただし、一度発動したら壊れてしまいますがね。」

「見せて欲しい。」

「……即答するのですね。」

「シイナ、貴女を信頼していないわけではないの。ただ……もう自分の無知で誰かを傷つけるのは嫌。だから見せて欲しい……お願い。」

「分かりました。話は人間達による攻撃が始まった1時間ほど後、数人の護衛だけをつけ一直線に王城を奇襲した王女と教皇が、代理領主の魔族と対峙したところから始まります。」


 シイナが言い終わると、投影魔法の映像が動き始めた。



 フォーゲルシュタット王城、玉座の間。玉座に座った小さな女魔族が対峙する教皇デミスと王女アドネリア達を頬杖をつきながら見下ろしていた。


「玉座に土足で上がるなど……不敬ぞな。」

「他人の物を勝手に扱うのは不敬では無いのかのう?」

「何を言う?我々魔族様が人間の物をどう扱おうが自由でしょう。」

「「そーだそーだ!シーベル様の言う通りだー!」」


 脇を固めていた護衛の魔族にシーベルと呼ばれた女魔族は、腕を組み得意げな顔で悦に入る。デミスは話が通じないといったようにため息をつきながら首を振る。それを見たシーベルはムッとした表情になり、デミスを睨みつける。


「今、我をバカにしたな……」

「まあ、このまま話し合いで解決するとは思わないなとは思ったかな。」

「許せん……許せん許せん許せん!人間ごときが、我を見下すなど万死に値する!!お前たち、やっておしまい!!」

「「アイー!!」」


 合図と同時にシーベルの脇を固めた魔族がデミス達に向かって襲いかかる。デミスは大剣を構えながらアドネリアに告げる。


「アドネリア殿下、気をつけてください。ふざけた連中だがパワーはバカにならん!ワシが何とか食い止めますが……」

「撃ち漏らしの可能性ですね。分かりました!」

「いきます……うおおお!!」


 アドネリアはナイフを構え、デミスは護衛の魔族に向かって飛びかかる。デミスは襲いかかる魔族を次々となぎ倒していく。


(1対1の形式を維持できれば何とかなるか……?いや、流石にこの量は……)

「うふ……」


 シーベルはその様子を見つめながらかわい子ぶるように笑うと、突如猫なで声で呼びかける。


「みんなぁー!我のこと、どう思うー?」

「は?何言って……」

「「カ・ワ・イ・イィーッ!!!」」

「なん……!?」


 魔族達が可愛いと斉唱したその瞬間、魔族たちの力が倍増しそのままデミスを吹き飛ばした。


「聖下!!」


 デミスに駆け寄るアドネリア。その背後に魔族が襲いかかる。しかしデミスが大剣を突き出し魔族を串刺しにする。デミスはそのまま立ち上がってアドネリアを庇うように腕を伸ばす。


「味方の身体能力を強化する魔法か……キーワードは"可愛い"か?」

「ふふ……ざーんねん。この子達は我の血を飲んだ我の眷属……その眷属に、我を褒めれば身体能力を強化される魔法『真円深姫(サークルプリンセス)』をかけているの!可愛いだけじゃなくて褒める意思があればなんでもいいのよぉ!」

「シーベル様!最高!!」

「『真円深姫(サークルプリンセス)』最強!!!」

「フラーヴ様の後継者!!!」


 満面の笑みを浮かべていたシーベルだが、最後に褒めた魔族の言葉で真顔になる。そしてその魔族の元へ歩いていくと、その魔族を腰に提げていた剣で真っ二つに斬り裂いた。


「ひぇぇぇっ!」

「お爺様は関係ないでしょ……それにアンタ、我がロマリアの補欠だとでも言う気なの?そんなことを言う眷属は要らないわ……処刑よ!」

「「シーベル様ぁぁぁ!お許しください!!」」

「あらヤダ、こわーい一面見せちゃった……でも、そんな我も……?」

「「カ・ワ・イ・イ!」」

「「サ・イ・コ・ウ!!」」

「「うおおおおおおお!!!」」


 盛り上がる魔族達を、アドネリア一行は冷めた目で見つめていた。


「なんの茶番でしょうか……」

「じゃが、魔法の効果は本物じゃ。ちょっと気を引き締めていかねばのう。」

「ええ……、私も加勢します。」

「正直、助かるのう……ちょっとあのテンションは手に余ると思っておったのじゃ。」


 デミスが渋い顔をしながら剣を持つ手に力を込める。シーベルが不気味に笑みを浮かべながら魔族たちに突撃の命令を下そうとした瞬間、


「え……」


 物陰に隠れ魔道具で記録をしていたシイナが飛び出し、シーベルの首をナイフで刺し貫いた。

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