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七話

「これからどうしましょうか? 」


 マリーから事情を聞いたレオンは来賓用の部屋でこれからのことを考えるため部屋にいる者に問いかけた。


 部屋にはレオン、マリーの他にタリア国国王ロレンツォ、ソフィアがいる。


「この機を逃したら、我が国で蛮行を繰り返す憎き誘拐犯共を捕まえられないだろう。しかし、奴らは王城や他の貴族達の屋敷に精通しすぎている。考えたくはないが、貴族の中に裏切り者がいるだろう。今もこの王城内にいるやもしれん。騒ぎ立てれば、裏切り者を逃してしまう」


「少数ならば動かせるのでは? 」


 レオンは考え込んでいるロレンツォに問いかける。


「少数といっても不穏な動きは悟られるだろう。奴らは未知の魔道具を使っておった。兵士の中にも裏切り者がいるかもしれない」


 ロレンツォは裏切り者を警戒するあまりレオンの考えに否定的であった。


「しかし、そのようなお考えでは犯人を捉える機を逃してしまいます。ここは一つ私に良い考えがあります」


 レオンは煮え切らないロレンツォに自身の考えを打ち明けることにした。


「それはありがたい」


「私の護衛であるマリーをいかせてはくれないでしょうか? 彼女は誘拐されそうになりました。そのことを利用して奴らのアジトに忍び込むのです」


 レオンは誘拐犯によるマリー誘拐未遂を成功させたと相手に思わせ、アジトに潜入しようという考えだった。


「確かに名案だ。しかし、客人である貴殿らをこれ以上この事件に巻き込むわけにはいかない」


「じゃあ、何か当てがあるのかしら? 」


 ここで沈黙を保っていたマリーが動いた。


「裏切り者を警戒して動けず取り逃しましたなんて間抜けな真似するより他国の人間であろうと使うのが賢いやり方だと思うけど」


「……」


 ロレンツォは黙り込んでしまった。


 マリーの気迫に押されたからではない。


 マリーの提案を受け入れたとして、彼女に怪我が有っては国際問題に発展する。


 マリーの実力はタリアにも届いている。


 優秀な魔法使いであるのは重々承知だが、それでも相手は未知の魔道具を使う奴らである。


 無事に帰ってこれる保証がない。


 しかし、他に案がない。


 故に黙り込んでしまったのだ。


 ――コンコンコンコン


「失礼します」


 この沈黙を破ったのはルイの声だった。


「入りなさい」


 マリーが答える。


 ルイが部屋に入ってくる。


「敵のアジトを吐かせました。場所は東にある貧民街です」


 ルイは部屋にいる全員に聞こえるよう話す。


 この部屋はマリーが防音の魔法をかけているため、どんなに大声で話そうと外に漏れる心配はない。


「そう。ご苦労様。敵の魔道具についてはわかった? 」


「分かりませんでした。アジトは簡単に吐いたのですが魔道具については何も。魔道具について話そうとした途端、苦しみ出して死亡しました。恐らく魔法で口止めされていたのでしょう」


「敵はなかなか用心棒深いわね。でもアジトがわかっただけでも充分よ」


 マリーは立ち上がり、部屋の扉に向かって歩き出す。


「私は行くわ。後始末はお願いね、レオン」


「待ってくれ」


 ロレンツォの呼び止めを無視してスタスタと部屋から去ってしまった。


 それに続いてソフィアが立ち上がる。


「どうしたんだソフィア? 」


「少しお花を積んできます」


「そうか」


 ソフィアはそのまま部屋から出ていった。


「マリー殿はなかなか豪快な方なようだ」


「はい。ですが心配ありません。実力だけは確かです」



 部屋を去ったマリー達は貧民街へ向かうため真っ直ぐ王城の正門を目指し歩いていた。


 そこへソフィアが話しかける。


「あのマリー様! 」


 その声に立ち止まったマリーとルイ。


「何かしら? 」


「私も一緒に連れて行って頂けませんか!」


「断るわ」


 マリーは即答した。


 戦力になるかならないかわからない人間を敵のアジトに連れていくことはできなかった。


 それに彼女は魔法使いとして未熟であることは見て明らかだった。


 足手まといを連れて行くつもりはなかった。


「そこをなんとかお願いします! 」


「なぜ? はっきり言って貴方は邪魔になるだけよ」


 マリーはキツく言った。 


 しかし、怯むことなくソフィアはマリーに向かって行く。


「ニコラを助けたいの! 」


 ソフィアはニコラが心配だった。


 ニコラに変装したということはニコラは誘拐犯のアジトにいる。


 これまで変装相手に選ばれた相手はバラバラとなって相手の屋敷に送られてきていた。


 そう考えるとソフィアは一刻も早く助けないと、と思った。


 自分が足手まといなことは分かっている。


 だからといって、自室で今も危機に晒されているニコラを待つことは出来なかった。


 マリーは断るべきだと思った。


 だが、断ってもこの女はニコラの元へ行くだろう。


 ソフィアの瞳を見れば明らかだった。


 詳しい場所も分からず夜の貧民街を出歩かれるのは危険だ。


 それならばいっそ自分の近くに置いておいた方が安全だと考えた。


「何もいっても無駄そうね。着いてきなさい。死んでも知らなけど」


「ありがとうございます!」

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