十三話
合コン当日の昼、冒険者ギルドにやってきたマリーとルイ。
王都のギルドとあってかなり大きい。
寂れた雰囲気もなく手入れは行き届いていて綺麗である。
冒険者のロゴがなかったらギルドとは思えないだろう。
マリーとルイはカロリーヌに会いにきていた。
冒険者ギルドの受付で三階へ行く手続きをするマリー。
ギルドの二、三階は限られた人間しか出入りできない。
二階はA級以上の冒険者、三階はS級のみが入れる場所である。
外部の人間もまた条件があり、貴族なら伯爵以上の爵位が必要で、商人は商人ギルドの幹部以上の必要がある。
手続きを終えたマリーは、ルイとともに階段を上がる。
三階に着いた二人は、大広間でくつろぐカロリーヌを見つける。
カロリーヌの背後には酒場にいた少年もいた。
「ちゃんと人数揃えたからな。文句言うなよ」
カロリーヌが酒を飲みながら話す。
「ないわよ。それでどんな男性達なの? 」
マリーが今夜集まる男達のことを聞く。
「知らねぇ。前から付き合いのあったA級冒険者の女に頼んだからな。その女しかしねぇよ」
「ならなんで呼んだのよ? 作戦会議かと思ったじゃない」
「その知り合いの女が来れなくなった」
カロリーヌが空になったジョッキに酒を注ぐ。
「一人くらい、いなくてもいいわよ」
マリーは特に気にした様子はなかった。
「それが一人じゃなく二人だ。どうやらその女の仲間も参加するつもりだったらしい。四対三ならまだしも、四対ニじゃ合コン出来ねぇだろ」
マリーはしばし考え込む。
「……諦めるのはまだ早いわよ。そこのあなた名前は? 」
マリーがカロリーヌの後ろに控えている少年に話しかける。
急に話しかけられた少年はアタフタしながら答える。
「ポールです」
「カロリーヌ、ちょっとポールを借りてもいいかしら? 夕方には返すわ」
「一体何すんだよ? 」
カロリーヌがマリーを睨みつける。
「安心なさい。危険なんかないわ。友達を信じなさい」
カロリーヌの目に飄々とした態度で答えるマリー。
「お前が友達と口にした時はゲスな考えをしてる時だ。そんなお前を信用できるか」
カロリーヌの目つきがさらに鋭くなる。
「ひどいわ。ちょっと借りるだけよ。なんなら着いてくる? 」
「……そうさせてもらう」
「案外過保護なのね」
マリーが微笑みを浮かべてカロリーヌを揶揄う。
「お前の好きなようにさせたくねぇだけだ」
カロリーヌはジョッキの酒を一気に飲んだ。
マリーは、カロリーヌ達を屋敷に連れてきた。
マリーの屋敷は王都の中心部にあり、広さでいうなら先程の冒険者ギルドよりも圧倒的に広く、王城を除けば王都で一番大きい建物だ。
「私はこういう場所は好きじゃねぇんだけどな」
「じゃあここで待ってる? 」
マリーは意地悪な笑みを浮かべてカロリーヌに問う。
「……待たねぇよ」
屋敷の中へ入ってたマリー達は、そのまま二階へ進んでいった。
二階はマリーのために作られたと言っていいほどマリー色に染まっている。
二階にあるものは全てマリーのものである。
一行は、マリーの衣服がある部屋までやってきた。
マリーは、道中掃除をしていたメイドを何人か捕まえて、連れてきていた。
「……ここで何しようってんだ」
「二つあるわ。一つは私とカロリーヌのメイクアップ。もう一つはルイとポールに女装をさせる」
カロリーヌ、ルイ、ポールの目がギョッと開いた。
「おいおい、冗談よせよ。私はこのままでいい。こいつらの女装は止めやしないが、ルイの体格じゃ厳しいだろ」
カロリーヌはマリーを止めに入る。
ポールは自分の女装を止めなかった、カロリーヌをこれまた目を見開いた状態で見る。
ルイは、自身の動揺がバレないよう必死だった。
「ルイより体格のいいあなたが何言ってのよ。それにあんたのその格好じゃ逃げられるに決まってるじゃない。それにメイドを連れてくる手もあるけれど、メイドに出し抜かれるのは癪だわ」
「……冗談じゃねぇ 」
「冗談なんて言ってないわ」
カロリーヌはマリーの目を見て確信した。
この目は本気だと。
「……私は合コンには行ってやる。だがメイクなんてゴメンだ」
カロリーヌはマリーに食ってかかる。
「今日、合コンに来るはずだったA級冒険者達が怪我したのは確か三日前よね」
マリーの言葉に黙り込むカロリーヌ。
「A級冒険者が回復代をケチるとは思えないわ」
カロリーヌの目が泳いでいる。
「きっと、彼女達は簡単には回復できないような傷を負ったのよね。そういえば、タイミングよくあなたが助けてくれたって聞いたけど」
カロリーヌの体から汗が出る。
「まさか合コンに行きたくないから、彼女達に怪我させたなんてことはないわよね? 」
「……いやぁ私、メイクしてみたかったんだ! 嬉しいなぁ! 」
「最初からそういえばいいのよ素直じゃないわね」
ポールはこの人には逆らえないと女装を受け入れることにした。