十二話
カロリーヌに会う日がやってきた。
マリーとルイは彼女に会うのは半年ぶりである。
カロリーヌはマリー達に王都の路地裏にある寂れた酒場を合う場所に指定してきた。
時刻は午後十時。
マリー達はカロリーヌの性格をよく知っている為、指定された場所へ来た。
酒場はの入り口は狭く人一人が入れるほど、店の雰囲気からみるにあまり客が入っていないだろう。
ルイが酒場の扉を開ける。
キィと扉が軋む音とカロンコロンという客が来た合図を送る音がした。
ルイが開けた扉をマリーが入る。
靴音が響く。
マリーの後にルイが入って扉を閉める。
客が二人いた。
一人は女性で座っているが、背は高いだろう。
立てば、ルイより大きいに違いない。
髪は金髪で腰まで伸びている。
もう片方は女性とは対照的な少年だ。
立っているが、マリーとほとんど変わらない身長、髪は銀色で、目は青い。
「子供を連れ回す趣味があったなんて知らなかったわ」
マリーが金髪の女性に向けて話しかける。
「弟子になりたいってしつこくてな」
女性はコップにある酒を飲み干す。
「で、私にようってなんだ? 」
マリーへ睨みつけるような視線を送る女性こそ、カロリーヌであった。
「私、今婚活してるんだけど手伝って」
マリーの言葉に目を見開いたカロリーヌ。
「なんだ? コンカツってのは? まさか私の知る婚活じゃねぇよな」
「あんたが何を想像してるかは知らないけど、結婚する相手を見つける活動のことよ」
その言葉を発した後数秒ほど酒場が静かになった。
沈黙を破ったのはカロリーヌの笑い声だった。
酒場を軋ませるほど大きい声で笑った。
「ハハハ、はぁはぁ。冗談も大概にしろよ。私を笑い死にさせる気か」
笑った影響で出た涙を手で拭ぐうカロリーヌ。
「冗談なんて言わないわ」
「あのお前が殊勝にも婚約者探しねぇ。丸くなったもんだ」
「昔のことはどうでもいいでしょ」
「で? 私に何してほしいんだよ? 」
「合コンを開きたいからメンバーを集めて。条件は恋人や婚約者、妻がいないこと。いいわね? 」
またも酒場にカロリーヌの笑い声が響き渡る。
「ハハハ……合コンって、そんなんで相手決めていいのかよ。仮にも令嬢だろ? 」
「出会いにはこだわないわ。私の理想の男性が現れればいいのよ」
「理想の男性ってあれか? 必ずピンチに来てくれて自分を助けてくれる男だっけか? いつまで夢見てんだよ。これだから拗らせ女は」
その言葉を境目にマリーの表情が動かなくなった。
「……そういうあなたは恋人の一人や二人できたんでしょうねぇ?」
「あ? できたことなんてねぇ。第一必要としてねぇ」
「それもそうね。あなたには小説の男がいるものね。ちなみに完結したのかしら? 私の恋心っていう小説は? 」
カロリーヌの動きが止まる。
「……てめぇ、なんでそれを知ってる」
カロリーヌはゆっくりとマリーを見る。
「私達、友達でしょ? なんでも知っているわよ。男の名前はアレクサンドル。主人公はカトリーヌ。書き出しは、私の心は貴方に……」
「うあああああああああああああ」
カロリーヌの大声でマリーの言葉が遮られる。
カロリーヌの顔は真っ赤に染まっている。
「あら? カロリーヌ、あなたお顔が真っ赤よ。お酒に酔っちゃったのかしら? 」
マリーはとぼけた顔でカロリーヌを心配する素振りを見せる。
「Sランク冒険者が書いた小説って意外性があってかなり売れると思うのだけれど」
マリーは小声でカロリーヌに話す。
「どうかしら? 」
「分かった! 協力する! 」
カロリーヌが慌ててマリーの申し出を承諾する。
「ありがとう。やっぱり持つべきものは友達ね」
嬉しそうに舞い上がるマリー。
「あっ。それとあなたにも出てもらうから」
「あ? 何に? 」
「合コンに決まってるじゃない。これもいい機会じゃない? 妄想ばっかじゃなくちゃんと恋人作ったら? 」
「嫌だよ。私の理想の男はもうここにいんの」
自分の頭を指でトントンとつつくカロリーヌ。
「何言ってるの? 主催者なんだし来るの当然でしょ? それに拒否権あると思ってるの? 」
マリーの圧に何も言えなくなるカロリーヌ。