十一話
翌日、事件を解決したマリー達は帰国の支度を済ませて王城の前にいた。
見送りにはソフィアとニコラが来ていた。
王は国内に点在している誘拐犯のアジトを潰す準備のためここへは来ていなかった。
「マリー様、レオン様、ルイ様この度は助けていただき、ありがとうございました」
回復魔法により元気になったニコラがマリー達に深々と頭を下げる。
「本当にありがとうございました」
続いてソフィアも頭を下げた。
「気にしなくていいさ。困っている人がいたら助かるのは当然じゃないか」
レオンが彼等の礼に答える。
「ほら、頭を上げて。王女と次期国王に恩を売れたんだ。私としては大満足の結果さ」
マリー達が乗って来た馬車が王城前に到着した。
「行くわよ」
マリーが最初に乗る。
続けてレオンが乗った。
ルイは馬に乗ろうとしたが、マリーに馬車に乗るよう急かされ、結局行きと同じ形に落ち着いた。
馬車がゆっくりと走り去っていく。
その姿をソフィアとニコラは静かに見ていた。
二人は心の中で愛する人を守れるよう固く誓った。
「しかし、考えてみればそうよね」
マリーは唐突に話し始めた。
「何が? 」
レオンがいきなり話し始めたマリーに疑問を問いかける。
「あんたが言ったでしょ。貴族に婚約者がいるのは当たり前だって」
「ああ、そのことか。なんだ、婚活やめる気になったのか? 」
レオンはやめてくれるなら余計な問題が起きずにすむと思って期待した眼差しでマリーを見る。
「違うわ。貴族相手をやめようと思って。婚約者がいないのなんて問題児か幼児ぐらいだもの。どっちも私の婚約者としては相応しくないわ」
「そうだね。僕も問題児と婚約したくない。特に君のような女性は」
レオンの顔の横を風の弾丸が通った。
レオンの頬に掠り、頬から軽く血が出る。
「………………大歓迎さ」
「相手を見つけても略奪婚になってしまうわ。それもそれでいいのだけれど、面倒になるのは目に見えてるもの」
「そこで、私は決めたのよ。これからは一般人相手に婚活するわ! 」
「待て待て! 身分の差があまりにもありすぎる。公爵家は一代限りだぞ。庶民として君が暮らしていけるとは到底思えない」
「大丈夫よ。仕事を続けていれば。高給なのは知ってるでしょ? 」
「それもそうだが……当てはあるのか? 」
「あるわ。あなたも知っているでしょ、カロリーヌよ」
「彼女か」
カロリーヌのことを聞き、ため息を一つついたレオン。
「だが、彼女はSランク冒険者だ。ランスの王都にいるとは限らないんじゃないか? 」
「大丈夫よ。後進の育成とやらで休業中らしわ」
「……問題だけは起こさないでくれよ」
「私は大丈夫だけど。カロリーヌはどうかしらね」
マリーはあっけらかんと答える。
「俺は君も心配なんだ。……ルイ君、彼女達のことを頼んだよ」
レオンはルイを見る。
その表情は真剣そのものであった。
また、カロリーヌのことを知るルイもレオンの胸中が痛いほど分かった。
「私からもお願いね。まぁ下手なことは起きないわよ。子供じゃないんだし」
「かしこまりました」
ルイはしっかりと頷いた。