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不思議なミオラちゃん  作者: ファントム
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急に死んで転生したこと

「あなたは死にました」

「え?」


 僕の名前は宮田タケル。十四歳。中学二年生、だった。

 でも今は死んでしまったらしい。

 だからここからの僕はファントムを名乗る。

 ファントムっていうのは悲しい亡霊って意味だ。


「驚きましたか?」

「まあ」


 僕に語りかける声は女のようでもあるし若い男のようでもある。

 目を開けるとそこは真っ白な空間だった。僕は白い服を着て、何もない空間に立っていた。本当に死んだっていうならここは死後の世界ってこと?


「死後というより、狭間の世界ですかね」

「ふーん」

「さて本題ですが、あなたには転生する機会が与えられました」

「ああ、そういうこと」

「そういうことです。あなたは生前、良い行いをしました。だから転生できることになったのです」

「良い行いって?」

「虫の命を助けましたね」

「そんなの覚えてないよ」

「ふふふ。謙虚ですね。いいですよ」

「はぁ……それで神様? 僕はどんな世界に転生するの?」

「同じ世界ですよ」

「同じ世界? あのクソみたいな?」

「他の世界なんてありません。それは人間の空想が作り出したものです」

「そうなのか」


 僕はそこまで話して心底ガッカリした。異世界に転生してチートスキルで無双できるわけではなかった。


「ガッカリさせてしまってすみません」

「それなら転生なんてしなくていいよ」


 どうせ生まれ変わってもクソみたいな人生になるに決まっている。もしもあの世界がまともで僕にまともな人生が用意されていたなら、僕は死んでいないのだ。


「なるほど。そうですね。では新しい人生は素晴らしいものになると約束しましょう。そうだ、今度は女の子なんてどうです?」

「女の子?」


 確かに女子は人生楽で良いよなって思っていた。それならできるだけ可愛い女の子の方がいい。周りからチヤホヤされて、みんなから愛されるような人生を送ってみたい。


「決まりましたね。あとチートスキルも用意できますけど、どうしますか?」


 は? チート? 元の世界にもそんなのあったのか?


「実はあったんです。あなたは何も持っていませんでしたけど」

「そんなのずるいだろ」

「なら今度は持ってみてはいかがです?」

「そりゃ、あるならあった方がいい。でも、どんなスキルがあるんだ?」

「あなたの望むスキルを与えましょう」

「なんだよそれ」


 美少女に転生して更にチートスキルなんてマシどころじゃない。あの世界で無双できるじゃないか。でもどんなスキルがいいんだ?


「じっくり考えてもらってかまいませんよ」

「……そうだな」


 考えてみたら美少女になっても幸せになれるとは限らない。不慮の事故とか、事件に巻き込まれて死んでしまうかもしれない。悪意のある人間に捕まったり、目をつけられてしまったりしたら、僕は自分を守れないだろう。あの世界は理不尽なことばっかりだ。幸せは簡単に奪われる。……それではまた同じことになってしまう。

 力だ。やっぱりスキルは力でなければ。


「決まりましたか?」

「僕自身を社会の理不尽から守れる力を」

「……いいですね」


 僕が望んだ力。それは僕のボディガード。透明で見えない僕のボディガードは僕の代わりに敵を排除してくれる。僕の言う通りに動くし、僕の代わりに動くこともできる。その場合は視界も共有する。とても強い。たとえば暴漢に襲われたら一発で殴り殺せる。透明で見えないから僕がやったなんて誰にもわからない。完璧に安全なところから僕は一方的に力を振るえるということだ。まあ、これはあくまで僕の生活の平穏を守るためのものだ。


「それでは転生が始まります。あなたが転生する女の子は吉川ミオラ。十歳。今ちょうど死んだばかり。あなたには彼女と入れ替わってもらいます」

「え? 赤ん坊からじゃないの?」

「はい」

「ちょっと待って、神様!?」

「ふふふ、頑張ってください」


 僕の意識は薄れていった……。


     ◇


「ミオラ! ミオラ! 目を開けて!」

「……あ」

「ミオラ!!」


 僕は急に女性に抱きしめられて苦しかった。

 泥の匂いがして、鼻の穴に入り込んだ水がつーんと鼻の奥を刺激して咳き込む。水が鼻の穴から口から吹き出す。涙も出る。咳が止まらない。

 僕の身体は濡れている。身体が冷えて寒い。溺れたんだ。


「ミオラ、よかった! ああ、ミオラ!」


 僕に抱きついた女性は僕を離そうとはしない。ミオラって……、そうか、この身体の女の子……。この子は死んで、代わりに僕が生き返ったということか……。

 ごめんなさい、この子のお母さん。生き返ったのはあなたの娘じゃない。

 僕もまさかこんなことになるなんて思わなかったんだよ。

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