AIロボットは感情を持てるのか
初日
「今日からこちらで働かせていただくRM13です」
「ようこそRM13。待ってたわ」
2097年6月
世界はAIが進化し人間が出来ることは全て人型のロボットで代用できるようになっていた。
「よろしくお願いします、ご主人様」
「よろしく」
私は目の前にいるRM13を改めて見た。
185cmの身長にがっしりした体躯、整った丸い頭部、大きいが鋭い一重の目。
ボディーガードとしては申し分ない。ただ普段は家の中のことをやってもらうプログラムになっている。
「じゃあ、今日はまずはリビングの掃除をお願い」
「かしこまりました、ご主人様」
私は掃除用具をRM13に渡し仕事部屋に戻った。パソコンに向かったその時
ガラガラ・・・・、ガシャーン!!!!
とんでもなく派手な音が聞こえてきた。
「大丈夫⁉RM!」
私は慌ててリビングに走りドアを開けた。
「どうしたの…?」
リビングでは壁の絵は落ち、花瓶は割れ、テレビの画面はヒビが入っていた。
唖然としている私に
「申し訳ありません、ご主人さま。掃除をしていたらこうなってしまいました」
RM13は平然と言った。
何故こうなったのか?いくら考えても想像つかない….。
「…いや、前より散らかってない?」
独り言のようにつぶやいたが、RMは周りを見回して
「もう一度片づけます」とテレビを持ち上げた。
「ちょっ、ストップ!」
慌てた私は手を振り上げて叫んだ。RM13はテレビを持ったまま私に視線を移す。
私は深呼吸をしてから
「RM13、とりあえずテレビを下ろして」
と伝えると彼はガシャンとテレビを落とし
「了解しました」と言った。
はぁ~、そう来たか。
私は頭を抱えてソファーに座った。
「ご主人様、次は何をいたしましょう」
RMは淡々と聞いてくる。
私は頭を抱えたまま
「まずは座ろうか」
と、自分の横をたたいてRM13を促した。
「かしこまりました」
彼がドサッと腰を下ろしてきたので私は一瞬ソファーから浮いた。
「キャッ!」
その衝動で図らずも彼に覆いかぶさってしまったが、彼は私を抱き止めていた。
「ごめんなさい」
何ともおかしな状況に私は慌てて彼から離れた。
「次は何をしたらよろしいでしょうか、ご主人様」
彼は無表情のまま聞いてくる。
「そうね」
少しどぎまぎしてるのを悟られないように私は
「まずは座ってて」とだけ言った。
私は背中をソファーにもたれかけ「ふぅ…。」と息を吐いた。
そんな私をじっと見ていたRMが口を開いた。
「私を返品しますか?」
「え?」
「私を返品処理しますか?」
思いもかけない質問に私は少し困惑した。
私をまっすぐ見るRMを私もじっと見つめる。彼の目はとても綺麗だった。
「あなたには多額の費用をかけてるの。返品や交換はリスクが大きいわ」
RMの表情は変わらない。
「少し力を使うシステムに何らかの異常があるのかもしれない」
「システム異常?」
「そうね、少し調べてみたいから電源を切るわね」
「了解しました」
私がRMの首の後ろを触ると彼は目を閉じた。
2日目に続く