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99話 バリア魔法は自分を映す鏡

北の島は南の島以上に豊かな自然が広がっていた。

とりわけ広い草原は見ていて気持ちがよくなる。


地上に落ちたち、遠くに見える地平線をしばらく楽しんだ。

春を感じさせる風が少し吹いてくる。


草原の風はときたま少し強く吹くが、もちろんバリア魔法で防ぐので問題はない。


「いい土地だな。神獣なんていそうにないが」

そう、危険などなさそうな穏やかな土地だった。


「いいじゃんここ!気に入ったよ。こんな広い土地を貰えるの?」

「ああ、環境を怖さいない程度に自由にして貰って構わないが……」

しかし、気になるのはそこじゃない。

使われていない土地だ、盛大に使って貰いたい。


リリアーネたちから聞いた神獣たちがいない。

それがどうしても少し気になった。てっきり降り立った瞬間に襲われるものと思っていた。


「ベルーガ、一応警戒しておいてくれ」

ベルーガは魔獣使いだ。

警戒や探知はこの場の誰よりも得意。


「「はい」」

声がダブった気がした。

ベルーガの方を見てみると、なんとベルーガが二人いて、隣同士に並んでいた。


自分の目を疑う。

一度目をこすって、再度しっかりと見るがやはりベルーガは二人いる。


「べ、ベルーガ!?」

一体、何が起きている。

「あれ、なんかベルーガさんが二人……」

ひじりも間違いなくベルーガが二人見えていた。俺だけ幻覚を見ているわけではないらしい。


「「えっ!?なんですか、これ!?」」

ベルーガが二人、全く同じ声と動作で、全く同じ反応をする。

おいおい、まさかこれが伝説の神獣の仕業ってわけか?


一向に襲ってこないと思ったら、こんな変則的なことをしてくるとは。

試しに二人のベルーガに近づいて肩を触ってみるが、二人とも実態がある。これまた不思議なことが。


「まさかこれって例の魔物の仕業?」

ひじりも気づいたらしい。

詳しいことは聞いていないというか、エルフたちも知らないみたいだった。しかし、北の大地には危ない神獣だけがいると知識で知っているくらい。


「だろうな。どっちが本物だ?」

「「シールド様、私です!」」


……全然わからん!


全く同じ反応だし、声も姿も同じなのだ。

なんだ、この厄介な展開は。


「ベルーガさんって、あんたがミライエの領主になった初期から仕えてくれてるんでしょ?流石に見分け付くんじゃない?」

もっと厄介な展開にしないで!それを言われると苦しい。間違えるはずがないと言いたいのに、本当にわからない。凝視しても、その違いが一切見えてこない。


「「グリフィン、おいで!」」

解決させようとしたのだろう。今度は二人が同時にグリフィンを呼ぶ。

そうだ、魔獣なら俺たち人間にはない感覚が備わっているはず。

匂いやら、独特の電波みたいなのを感じ取り、本人を見分けるはずだ!


「グルゥ……」

困っていた。

グリフィンさん、二人のベルーガを前に困惑して屈みこむんでしまった!

主の判断基準、見た目でした!

全然人間と同じなことにがっかりだよ!


「「なんなんですか、この生物は!こうならったら、斬り捨てます」

水魔法で作り上げた剣を出す。二人とも……。


「「魔法まで!?」」

ならば実力で叩きのめすと言わんばかりにベルーガ同士が戦う。


何度か激しい剣の応酬があったが、実力も拮抗していた。

恐ろしいことだ。あのベルーガとまともにやりあえている事実。なんだ、この生物は。


「どちらが本物か分からない以上、加勢のしようもありません」

ひじりの言う通り。

まずはどちらが本物か見分けない限り、戦いようがない。


それにしてもいい変身先だ。

ひじりに化ければ一瞬で本人に始末されることだろう。

俺に化ければバリア魔法の質でこれまたバレる。


ベルーガに化けたのは最高の選択だと言えるだろう。


「「加勢の必要はありません。シールド様にお仕えする身ですので、このくらい自分で片をつけます」」

一緒!

なんか二人とも尊い!


私のために争わないで!


「シールド・レイアレス、私にいい案があります」

ばちばちと戦っているベルーガたちの傍で、ひじりが妙案を思いついたらしい。

気になったので聞いておいた。


「二人にグリフィンをひっぱり合わせるのです。表向きは引き寄せた方が勝ちにするんですけど、グリフィンを力一杯引っ張ったら痛いでしょう?本当のベルーガさんなら手を放すはず。それで判別できます」

「んな古典的な……」

「絶対に行けるって!」

「無理だって」

「じゃあ他に方法あんの?」

……ない。

二人の決着を待ちたい気持ちもあるが、もしも本物のベルーガが負けたらそれこそ大変だ。


仕方ない。

古典を活用しよう。


戦っている二人の間にバリア魔法を張った。

二人の攻撃がバリア魔法によって相殺される。


「「シールド様、加勢の必要はありません!!」」

……困るからそれやめて。

こっちはどちらが本物かわらかないんだ。


「ちょいちょい。提案があるから戦いを止めて、ちょっと来てくれ」

「「はい、シールド様!」」

もうベルーガ二人で良くない?

なんか素直で健気な部下が一人増えた気分だ。

このままでもありかも!?


「お前たちに試練を与えることにした」

「「試練?」」

「そうだ。魔獣使いベルーガは、誰よりも魔獣に対しての思いが強いはず」

「「当然です!!」」


声が綺麗にはもるので聞いていて心地よい。

本当にこのままでいいのでは?


「「はやく続きを!」」

本人が嫌そうなのでやめておこう。


「お前たちにグリフィン引きをやって貰うとしよう。グリフィンくんには申し訳ないが、思いの丈が強いならきっとグリフィン引きに勝てるはず」

「「もちろんです。絶対に勝ちます!」」

「グルゥ……」

グリフィンが落ち込んだように喉を鳴らす。


ごめんな。一番迷惑がかかるの、お前だよな。今度美味しいものを用意しておくから勘弁してくれ。

無限のようにとれるショッギョはグリフィンの好物でもあるため、俺のポケットマネーで最高級のものを買い与えてお詫びとしよう。それで許しておくれ。


「よし、じゃあ両者しっかりと掴んだな?」

グリフィンのたくましい翼を掴み、用意ができた。

これ本当にやるの?提案しておいてだが、なんだこれ……。


「じゃ、じゃあいくぞ。始め!」

二人が力の限り翼を引っ張る。

羽を掴まずに、翼ごと引っ張っているので羽毛が荒れることはない。

それでも、二人の剛力によって引っ張られて、次第にグリフィンが嫌がりだした。


その時だった。

片方のベルーガが手を離す。


「おっ!?」

効果あった!?

この古典的なやり方、効果がありました!


「や、やった。シールド様、私勝ちました。ほら、グリフィンを見事手元に!」

その姿形、仕草や声色まで完璧にベルーガそのものだ。


しかし、俺は魔法を発動する。


「バリア魔法」

グリフィン引きに勝ったベルーガとこちらを分かつようにバリア魔法を展開する。

これでもうこちらには近づけない。


「お前が偽物だ」

「なっ!?私が勝ったんですよ、シールド様」

「ね?効果あんのよ、このやり方が一番」

誇らしげにひじりが自慢してくる。……まさかこんな古典的なやり方で偽物を暴けようとは。わからないものだな。


「シ、シールドさまああああ!!」

後ろから涙を流したベルーガが抱き着いてきた。

「おっと」

前のめりに倒れそうになるほど強く抱き着かれる。


わんわんと泣く姿は、あどけない少女のようだった。

俺の服で涙を拭くのは許すが、鼻水は許さない。


「……どうしてバレたのでしょう?」

バリア魔法をこつんこつんと叩いて、その硬さを確かめながら偽物のベルーガが尋ねてくる。

「どうやらモノマネは美味いが、人の感情は理解しきれていないみたいだな」

大事な人や魔獣を苦しませたくないから手を離したベルーガの気持ちを理解しきれていない。

その冷徹さが、この古典的なトラップに引っかかったお前の敗因だ。


「まあ、まだ機会はあります。……たっぷりと時間をかけて悪戯してあげましょう」

そう言い終わると、偽物ベルーガの姿が徐々に大きく膨らんでいった。

風船のように弾けて、中から巨大な猫が出てくる。


人を丸呑みできそうなほど巨大な二足歩行の化け猫だ。

神獣の正体はこいつだったか。厄介だな。


「なにこれ……」

化け猫の正体を見て、ひじりが絶句していた。

ショックを受けるのも無理はない。

こんな生物聞いたこともなければ、当然出会ったこともない。

この地に馴染んでいないひじりが大きく衝撃を受けたって、何も不思議ではなかった。


「かわいいいいい!」

……え、そっち?


目をハートにして、ひじりがバリア魔法に駆け寄っていった。

そっち!?

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― 新着の感想 ―
[一言] 化け猫に向かって抱きしめようと突進してバリアにぶつかり涙目になるのですね?わかります(笑)
[一言] かわいい(カワイイ)
[一言] にゃんこだからね、いくら大きくても。 ひじりは猫好き…と。 それにしても、「ひじり」を漢字で書くと『聖』。 神聖魔法が使えそうだよなぁ。
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