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57話 バリア魔法でクラフト

さあクラフトの時間だ!


ダンジョンボスは抑えた。後は漁師たちが安全にショッギョを始めとする、ここの海の幸を確保できるように俺が補助してやらなくてはならない。


まずは陸路の整備。

怪しげな穴は全てバリア魔法で閉じておく。

魔物は見えていない。フェイがいるから雑魚魔物が近づいていない可能性があるが、念には念を入れて封じておく。


しかし、この懸念は作業中に目覚めたリヴァイアサンによって安全を担保された。


「あなたの心配していることは起きないでしょう。ここはイメージ通り、海が広がるだけのダンジョンです。先ほど閉じ込めた魔物くらいでしょうね、危険があるとすれば。他は、海とさほどリスクは変わらないかと」

なるほどね。

当然溺れたり、水特有のリスクはあるものの、普通のダンジョンとして扱う必要はないと。


ならば、魔物対策は一旦置いておき、道の整備に入る。


足元が悪いからな。

地上からここへいたる道は、緩やかに下る。岩場がごつごつと目立ち、滑りやすく、非常に歩き辛い。


ここにバリア魔法を張っていき、階段を作成する。

地面のコーティングだ。


バリア魔法は滑りもしないし、いくら踏みしめられても壊れもしない。

一段一段クラフトしていく。


結構な長さがあるが、魔力量の消費が少ないので何とかなっている。

地上までのバリア階段が出来上がるまで数時間を要した。

しかし、一度作ってしまえば3年も持つので、苦労して作る甲斐はあるだろう。


「このバリア魔法は……はぁ」

出来上がったバリアの階段を手で触れながら、リヴァイアサンが感嘆のため息を漏らした。

うっとりとした表情は、彼女の姿形と合わさって美しい。

海の中ではゆらゆらと漂っていた長い髪は、今は魔力で空中を漂っていた。


ちなみに、裸だったので俺のジャケットを着せている。

「逆にエロイのう!」

というフェイ様のツッコミがあったが、仕方ない。

決して俺の趣味とかじゃないことは言っておく!


「けれど、あなたは美しくない」

呆れられた表情で、急にリヴァイアサンに罵倒される。

なんだ、顔がいい少女だからといって、なんでも言っていいと思ってるのか!


「けれど、あなたのバリア魔法は美しい」

「お、おう……」

なんだよ。ずるいぞ。

俺はバリア魔法を誉めて貰えると無性に嬉しいんだ。

こう、一番大事なものが他人に認められているようで、心の奥底がムズムズしてくる。


「醜い……、美しい……、醜い……、美しい……、醜いっ、美しいっ」

俺とバリア魔法を交互に見比べるリヴァイアサンが非常に失礼なことを言っています。

人はな、体も心もドラゴン程強くはないんだ。それをいつかこいつには教えてやらねばならない。


「フェイ様もいるし、バリア魔法も美しいから久々に人の世界に行ってあげましょう。まったく、美しくないものを作ったら……全て壊しますよ?」

「こやつは本当にやるから、せいぜい気をつけるんじゃな」

怖い、怖い、怖い。

フェイのお墨付きが付くと、本当にやりそうだな。


別についてきて欲しいなんて願っていないのに、我が領地にまたも一匹ドラゴンが追加されてしまった。

こいつもどうせあれだろ?

働かない口だ、絶対にそうだ。わかんねん!


「美しくない人間の町並みは嫌いですし、はあ。どこに住もうかしら」

「おっ、それならちょうどいいぞ。新しい街を作ろうと思ってるんだ。そこに新居を建てたらどうだ?」

美しいのがいいなら、自分で働いて作れという遠回しな言葉だ。

せいぜい働いてくれ、俺のために。


「うーん、保留で」

だよなぁ。

ドラゴンにはそもそも働くっていう概念がないのかもしれない。

どこでも生きていけどうだし、常に捕食する立場だろうから我々のような建設的な思考が生じないのだろう。


「まあいいか」

面倒なのが一人増えたところで、領内がどうにかなることもないだろう。

最強のドラゴンフェイでさえ上手にやれているんだ。

リヴァイアサンもうまくやってくれるだろう。


「なあ、リヴァイアサン。お前もフェイみたいに違う呼び名はないのか?」

「300年前は、フェイ様にコンブと呼ばれていましてよ?」

昆布?

「お前はそれでいいのか?」

「ええ、世界一美しいフェイ様につけていただいた名前ですもの。私、気に入ってます」

なら、ええか!


俺もリヴァイアサンのことをコンブちゃんと呼ぶことにした。


意外とおしゃべりなコンブちゃんとの会話を楽しみながら、階段の仕上げに入っていく。

一応壁沿いに手すりもつける、新設設計。


台車が通りやすいように、段差のない道もバリア魔法で作り上げた。

きっと捕獲したショッギョたちは氷魔法で凍らされて地上まで運ばれるだろうから、なるべく鮮度を落とさないように、素早く移動できるようにしたい。


うーん、まだ改良の余地がありそうながらも、一旦は階段と台車用の通路を整備し終えた。


「やはり美しい」

台車用の通路に頬を摺り寄せて、コンブちゃんがバリア魔法を堪能していた。

こいつにバリア魔法でもくれてやれば、長いこと楽しんでおとなしくしてくれそうだ。

猫に毛糸の塊を渡すような感覚だ。


試しに、先ほどのバリアブロックを作ってみた。

魚群を閉じ込め、ダンジョンボスをも封じ込めた俺の四角いバリアだ。サイズは少女が持てるように、小ぶりなものにする。器用に作り上げてみせた。


「ほら、これをやる。地面に顔をこすり付けるよりも、こっちで楽しんだらどうだ?」

「きゃーーー、美しい!」

手に取れるように、守り側を外側にしておいた。


バリア魔法を初めて守り以外で使うが、こうして立方体のブロックを作ると、いろいろな活用方法が浮かんできそうだ。

今まで考えてこなかったけど、やはりバリア魔法は無限の可能性に満ち溢れた最強魔法ってこと!?


バリア魔法最高かよ。


「醜い人間さん」

「俺?」

「はい、それ以外に誰が?」

「シールド・レイアレスって名前があるから、名前で呼んでくれると助かるのだが」

「人間なんてどれも醜いから、区別する必要なんてあるんですの?」

ある!

なに可愛らしい顔で、それもおっとりとした雰囲気でとんでも発言をしてんだ。


「うーん、そうですね。シールド? 仕方ありませんね。フェイ様の金魚の糞みたいな存在ですし、覚えてあげましょう」

悲報、俺氏フェイの糞だった件について。

いやいや、100年後には食べられるだろうし、間違っていないかもな。

何より名前を憶えて貰えることをポジティブに受け取ろうじゃないか。


「それでですね、糞のシールドさん」

「バリア魔法のシールドね」

「このバリアのブロックの上を開けられますか?」

当然可能。

バリア魔法は全て俺の自由自在に動く。


上の蓋を開けるのも、完全になくすのも可能だ。

今回の要望は上を完全に開けることなので、バリア魔法を一枚消しておいた。


「ここにですね、私の魔法をっと」

『海魔法――永遠の水』


チャポンと音を立てて、そこに輝きだしそうなほど澄みきった水が満たされた。

「うふふっ、やはり美しいですねー。美しいバリア魔法が私の魔法で、永遠の美へと昇華されました」

バリア魔法は3年で壊れてしまうから、永遠ではない。しかし、確かにそこにある綺麗な器と満たされた水は、そう誤解させるだけの綺麗さを持っていた。


『バリア魔法』


上を閉じて、水を封じ込めておいた。

これでこぼれる心配もない。俺の配慮にコンブちゃんが感謝してきた。

「ありがとうございます、シールド」

名前で呼んでくれた。糞もついていない!


宝物を抱きしめるように、コンブちゃんがブロックを大事にする。


「今後も似たものを作ってやるから、少し協力してくれ」

「……んー」

「悩むな、悩むな。いいものが手に入るんだ、少しくらい助力してくれ」

悩んで断られる前に、コンブちゃんの背中を押した。多少は強引さも大事だろう。

気分のいいうちに。

ついでに、フェイも動員する。

「なんで我が!」

という不満は聞かない。この後旨いものを食わせるから、勘弁してくれ。


大きめのバリアブロックを作っていき、フェイに長持ちする炎魔法を使って貰い、中に炎を閉じ込める。

これで暗さ対策になる。

等間隔に照明の役割になる炎の入ったバリアブロックを置いていき、台車通路傍にはバリアブロック内に氷を閉じ込めたものを置いていく。こちらも等間隔にいくつか配置する。

鮮度が大事だからな。

台車通路側は冷やさないと。ちなみに氷魔法はコンブちゃんに頼んでおいた。


二人からしたらどちらの魔法も使えるらしいが、やはり得意不得意はあるみたいで、炎系はフェイに、水系はコンブちゃんに任せる。

適当に褒めてればなんだかんだ動いてくれるので、ちょろい、ちょろい!


俺もドラゴンを使うのがうまくなったなと自覚しながら、ショッギョの輸送ルートを完成させた。


大きな満足感とともに戻った俺たちは、さっそく人を集め、市場を作り上げ、漁船も、ダンジョン内の港の建設も始めさせた。


ショッギョは見た目こそあれだが、うまさは間違いない。

すぐに領内の名物食材となるはず。


しかし、ブルックスに売り出させたとき、そのキモイ見た目から最初はなかなか売れなかった。

領主の俺の名を使ってもいいと許可を出した。『領主のお墨付き、ショッギョ』。これで盛大に売り出す。しかし、これでも売れなかった。『フェイ様のお墨付き、ショッギョ』これでようやく売れ始めて、ブームとなった。


納得いかない!! うん、納得いかないよね!!


けれど、魚価格の高騰は収まったし、新しい食材の確保もできて、我が領地はまた一歩発展したのだった。ちなみに、ショッギョというネーミングはダサいらしい。


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