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34話 バリア魔法と新しい時代

「メレル様、イリアスに私もお連れ下さい!」

朝型、メレルの脚にしがみつくエレインの姿を見てしまった。

……わからされている!!

メレル様にわからされてしまってる!


あっちは一晩で何かあったようだ。

そして騎士たちも、アザゼルにわからされた後のようで、4人とも国に返して貰えるらしい。


「あれらはもうこちらの手の者です。好きなようにお使いください」

やっぱりこちらもわからされてた!


「あいつらを通して、情報が筒抜けってことか?」

「ええ、白手袋の入手も完了しております。ダイゴに似たものを作らせ、連絡アイテムにします」

抜かりない!

手の込みように驚きだ。敵を手の内に収め、敵の道具まで改良して自陣営のものにしてしまうとは。

魔族の戦略の深さには感服する。


「これでヘレナ国は我が領地の手のうちも同じ」

ベールガが真面目な顔で言うと、冗談じゃなく聞こえるな。いや、冗談ではないけど。


騎士たちを帰らせるのは決定だが、エレインはどうしようか。

イリアスに行きたいと言ってるが、そういう訳にはいかないよな。


「メレル、エレインもヘレナ国に返すが問題ないか?」

「ああ、私は構わない」

メレルは構わないらしいが、当のエレインが帰りたがっていない。

本当に一晩で何があったんだ……。


エレインと騎士は既にこちらの手の内だ。

真相をばらしてもらい、ヘレナ国王に後はまかせるとしよう。


騎士団長カラサリスの処遇がどうなろうと、今更俺があの地に戻ることはない。

ここでの生活は気に入っている。

魔族とフェイとの生活は、実は結構楽しいのだ。

毎日新しい価値観と触れあえるし、イベントに事欠かない。


ここではかつての生活になかった、生きがいを感じている。


「うぃー、ひさびさに戻ったぞ」

ほうら。問題児が返ってきた。

見た目こそか弱い少女だが、お腹を押さえて戻ってきたフェイはどれだけの飯と酒をその腹に収めたのだろうか。


「お前何日出歩いてたんだ?相手の懐事情も考えてやれ」

御用商人の座を狙っていた小太りの男が心配だ。


「大丈夫じゃ。手加減はしておいた。それにあの男、結構頭が切れるぞ。また顔を出すと思うから、その時は我も同席しよう。少しくらい肩を持ってやらにゃ、かわいそうじゃからな」

こいつにも罪悪感ってものがあって俺は安心だよ。


「そんなにたのしかったのか?」

数日も姿を見かけなかった。きっとこいつなりに楽しんでいたんだろうな。

「ああ悪くない数日じゃった。最後に万能な魔法使いとも飲めたし満足じゃ。あれも有能じゃな。また一緒に飲みたいものじゃ」

「ほう」

フェイが認める程の使い手か。

気になる。


この領地には数人、恐ろしい魔法使いがいると見える。たしか、女神とダンジョンの凄腕と、フェイに褒められた万能魔法使いか。いろいろいなるな……。


「それとこれもお主に渡しておかねばな。力尽きたエルフが我に渡してきおったぞ」

「はい?」

エルフだと?

伝説的な存在だと思っていたエルフが、フェイに手紙を渡したのか。


フェイが気軽に渡してきた手紙は、長旅を経て痛んでいたが、必死に守ってきたのだろう。

開いてみると文字をしっかりと読み取ることが出来た。


「おいおい、まじかよ」

気軽に開いていい内容ではなかった。

また大きな事件が起きそうだ。


「何か面白いことでも書かれていたか?」

「ああ、また大仕事になりそうだ。アザゼルたちを集めて、話し合う必要がある。お前も聞くよな?フェイ」

「もちろんだとも。お主が死ぬまでの間、暇つぶしは多い方がいいに決まっている」

大仕事だと言っているのに、こいつにとってはどんな荒波も日常と変わらないのだろうな。

こういうところに、こいつのでかさを感じてしまう。


ドラゴンとしての存在のでかさ、器のでかさを。


「息絶えたエルフは?」

「ああ、それか。息絶えたと思っておったが、一緒に飲んでいた魔法使いから見るとまだ蘇生の余地はあったらしい。宿に連れて行って、ゆっくり治療すると言っておったな」

「それ、結構重要な情報じゃないか?」

エルフの国からやってきた使者だ。

しかも手紙の内容からするに、かなりの大事。


息絶えていたら諦めるしかないが、まだ息があるなら本人から事情を聴いた方が良さそうな話だ。


「宿はどこだ?」

「知らん!」

……だよな。

「どんな女だ?」

「人間の顔など区別がつかんわ!酒も飲んでたし!」

……全く!

「名前は聞いてないのか、名前は!」

「おり……オリーブ?たしかそんな感じじゃ」

「オリーブか。よし、それで捜索を出しておこう。褒美に金でも包んでやれば、情報があつまるだろう」

これでエルフの居所が分かればいいけど、簡単に行くだろうか?

領内は意外と広いからな。


しかし、領主邸がある街に限定するなら、数日で見つかるような気もしている。

「あっ、オリーブではない。オリヴィエじゃ。探し人と会えずに苦労していると嘆いておったな」

「オリヴィエ……?」

消えたばかりの命の灯を再び灯す魔法の使い手……それもフェイが認める程の。名前がオリヴィエって、そんなのこの世に一人しかいないんだが。


まさか、ヘレナ国からの刺客か?それだと、かつてない強敵なるんだが。

思えば、ヘレナ国にいた間、オリヴィエからは無視され続けていた。


「間違いなく刺客だよな……」

強敵を前に、気持ちが重くなった。



――。



ヘレナ国王の前に膝間づいて、騎士団長カラサリスは断罪のときを待っていた。

国に戻ってきたエレインが突如として罪を認めたのだ。


シールド・レイアレスを追放したこと、カラサリスと二人で企てたこと、その後に刺客を放ったことまで、彼女の知ること全てを話した。

自身がどうなるかを考えていないその自暴自棄な行動に、カラサリスは頭を抱えた。


(ミライエで何があった!?)


同じくシールドに敵対していたはずの彼女が、帰って来てから人が変わったように素直だ。何もかも罪を白状し、王の前にて断罪を待っていた。


「エレインの申したことは誠か?まさか、全権を任せていたお前に騙されるとはな」

カラサリスの後ろに近衛兵が控え、王の命令一つで拘束される空気感だった。

王の顔は疲弊してやせ細っている。

聖なるバリアが消えて以降、心労が祟って体調を崩していることは城では有名な話だった。

カラサリスも当然知っている。


「……追放したのは、本当です。しかし、シールドが国に害を及ぼそうとしていたのも事実。実際、聖なるバリアは壊れたではありませんか。あれは、シールドの当初の計画通りです」

三年で壊れることなど、国王も知らない情報だった。

なんとか逃げきろうと、カラサリスは藁にもすがる思いでシールドのバリアの唯一の欠陥にすがる。


「追放されたから壊したのではないか?」

「そんなことは……。しかし、シールドの裁量で壊せるのも事実。いずれこのような事態になる日は来ていたかと」

「事実がわからぬ以上、これ以上は推測の域を出んな。……エレインと騎士団長カラサリスを牢屋に閉じ込めておけ。二人の全ての権力を取り上げ、刑期も無期限とする。……わしはもう疲れた。誰を信じればいいかもわからぬ。しばし休む」

近衛兵に連れられて、エレインとカラサリスが連れていかれる。


騎士団長の任も同時に解かれた。

シールドが追放されて、宮廷魔法師を4人失い、騎士団長まで牢屋の中。

聖なるバリアは消え失せ、国王も政治を碌に行えず、国民の流出も止まる様子がない。


ヘレナ国は今、深刻な機能不全に陥っていた。

全ては、シールドを失ったあの日から始まる。


ことの顛末を見届けた間者が、文をしたため、完成した空間魔法の魔道具で手紙を送った。

送り先はミライエのアザゼルへ。


麻痺したヘレナ国の現状は、全てアザゼルへと、そしてシールドへと伝わることなる。

1章ここまでです。なんとかざまぁまで完遂しました^^。明日から2章頑張って更新していきます。星の評価とか、ブクマ入れてくれるととても助かります!元気になります!誤字脱字は、気力があるときにやる……はず。


2月7日。誤字脱字とかいろいろ変更しました。続きも楽しんでください!

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― 新着の感想 ―
[一言] 王様と騎士団長の会話は不自然な気がしました。 エレインがどこまでゲロしたのかは不明ですが、それは騎士団長も知らないことなので口裏は合わせられない それでいて追放の事実を隠した罪やら国家転覆の…
[気になる点] 昨晩は一体ナニがあったんでしょうね
[良い点] 誤字脱字が劇的に減っている! 素晴らしいですありがとうございます
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