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28話 バリア魔法と魔族の天才少年

領地が日に日に発展していく中、アザゼルが魔族を連れてダンジョンの整備に入っていった。

やはりダンジョンから得られる恩恵は大きいようで、冒険者が死に過ぎている現状を改善するために動き出した。


生存率を上げることと、生産性を高めるための着想を得る目的の視察だ。


アザゼルに連行されるゲーマグの姿が見えた。

まだ生きていたのか……。普段はお洒落ボウズなのに、今は出所後の坊主頭に見えるのが不思議で少し面白い。ダンジョンでその力を活用されるのだろうか。光魔法は薄暗いダンジョンで重宝されそうだ。まあ、あちらは任せるとしよう。


俺は日々訪れる商人の相手で忙しい。

皆、これからミライエで商売を始めようという大手商会のトップたちだ。貢物を持ってきたりしたが全て断っておいた。


賄賂目的で持ってきた者には、次同じことをしたら首を飛ばすとだけ伝えておく。

ミライエは治水工事を行い、領地を包む聖なるバリアも張り終えた。治安も今のところ非常に良く、暮らしやすいが、首がすぐ飛ぶこともお忘れなく。


地価が上がり、安定した土地に見えるが首が飛ぶリスクもしっかりとある。ここはそういう土地です。


中には御用商人を任せて欲しいという連中もいたが、今のところ特に欲しい物も、必要な物もない。

必要な調達は侍女と魔族に任せている程度で事足りているし、軍は軍でオリバーたちがなんとかやってくれている。

何一つ不足がないので、変に誰かに権力を持たせるのは面倒だと思い、却下している。


そもそも有能かどうか知りもしない相手に、権限を与えるのは危険というのもある。

まずは人を知らないと、何も始まらない。有能なら放っておいても、そのうち頭角を現すだろう。急いで決める必要はなさそうだ。


ちなみに、俺への来客は全てベルーガフィルターがかかる。


どういうことかと言うと、悪意があればすぐさま首が吹き飛ぶということだ。

1人、門の前で拘束されていた商人がいたが、目的を洗いざらい吐かされた後に首が飛んで、見せしめにあっていた。


それ以来変なのは来ていない。

死の領主は未だ健在である。


ちなみに、その商人は危ない薬を扱う商人だったので、根絶やしにしておいた。

一味総勢で、首が100は積みあがったらしい。良き、良き。


よく働いてくれる魔族たちが出払ってしまい、少し暇だ。

フェイのやつも挨拶にきた商人の接待を受けるため、今日は外に出ている。

「お主が賄賂を歓迎してないのは知っておる。けれど、これは違う。ただ飯を食わせてくれるから行くだけじゃ」

とか言い残してご機嫌に去って行った。


まあいいだろう。高い酒をたらふく飲んでくるがいい。

「ははっ、少女一人の飲食代などお気になさらないでください」

そう言って満面の笑顔で去って行ったあの丸々とした小太りの商人は、きっと今晩には後悔に頭を抱えることになるだろう。フェイの食事代で路銀を溶かした日々の記憶が蘇りそうだ。


俺は屋敷に残って、使用人たちと親交を深めようとしたが、廊下を歩いているときにガチャガチャと音がする部屋を見つけた。


中を覗いてみると、灰色の髪に、黒いアイラインの目立つ、楽し気に笑いながら作業する少年がいる。

ユラユラとリズムよく動く黒い尻尾は魔族の象徴だ。


「なんだ、1人残っていたか」

ベルーガも俺の護衛兼補佐で残っていたが、他は全員アザゼルとともにダンジョンに行っているものと思っていた。


子供の魔族は、最初の選別の日以来見ていなかった。


「あっわわわ。シールド様!」

手にしていた工具を放り出し、魔族の少年が頭を下げた。限界の床に届くまで下げる。

……床にまでつけなくてもいいのに。

礼儀正しいのもあるが、他の魔族には感じない気の弱さを感じる。


「楽にしていい。俺には仲間が少なく、お前はその数少ない一人だ」

無礼は許さんが、過度な礼儀はお互いに疲れてしまう。

魔族は今や大事な仲間だ。


「名前は?アザゼルとダンジョンに行っているものと思っていた」

「ダイゴです。僕は魔族の中でも最弱なので、アザゼル様には置いて行かれました」

それでも封印されていたのを解除されて、仲間に加えて貰っている魔族だ。

ただ弱いだけではないだろう。


「目を輝かせて、何かをいじくりまわしていたな。何をしていた?」

「魔石を分解していました。魔石って分解すると、その効果を改造できるんです」

「ほう、興味深い」


詳しく聞いてみることにした。


この屋敷で働く者には、月ごとに給料を支払っている。

それは人間も魔族も関係なく支払っていて、何もしないフェイにも払っていたりする。


そのお金が入ったことで、ダイゴは市場で魔石を買い集めたらしい。

それを分析、改造している最中とのことだ。


一般的な魔石の活用方法というのは、その性質と魔力を何か別の道具に付与、もしくは合体させて使うのが一般的だ。

街でも生活に当たり前のように取り入れられている。


主に魔物を倒して手に入る魔石は、ダンジョンからとれる量が多いので、冒険者業は常に盛んだ。

そこを改革しようというアザゼルの施策は流石と言うべきだろう。

結果が楽しみである。


そういった使われ方が一般的な魔石だが、ダイゴは分解して改造までするらしい。

器用な指先と、深い知識がないといけないだろう。


「で、何を作る予定だったんだ?」

「そ、そのっ。後々アザゼル様を通して、領主様にお願いする予定でしたが、バリア魔法を僕なりに改造したいものがありまして……」

バリア魔法を?これまた興味深い。バリア魔法は最高だからね。興味を持つのも分かる。


「いいタイミングで俺たちは出会ってしまったわけだ。欲しいものを言ってみろ。俺が用意できるものなら用意する」

「はいっ!ありがとうございます」

またも床に頭をこすりつけて感謝してくる。礼儀正しいやつってのはわかるが、そこまでされるとこちらまで申し訳なくなる。


そういえば、魔族の中でも、ここまで感情を表に出すのは初めてだな。

子供だからか?それともやはりみんなここが気に入って心を開いてくれているのだろうか。


後者だと良いな。


「前にオリバー様とカプレーゼが戦っていた時に見せてくれたバリア魔法。あれを覚えていますか?」

「あれか」

二人に割って入ったバリア魔法だ。

あの場にもいたのか。存在に気づいてやれなくてすまない。


「あれってバリア魔法をシールド様から切り離して使えるっていうことですよね」

その通り。

バリア魔法は、俺から離れても問題なく使用できる。


もちろん距離に限界はあるが、国単位とかその規模の話になってくるので、実質無制限である。


「よく観察しているな」

「ありがとうございます。あの切り離したバリア魔法が、そのままの効果で使用できるなら、何枚か分けて欲しいです」

もちろんそれも可能だ。

正確な耐久期間を知らないが、聖なるバリアと同じく3年くらいと見ていいだろう。


「任せろ。今すぐに作る」

簡単に物理防御バリアを10枚と、魔法防御バリアを10枚作り上げた。

分ける必要はないが、臨機応変に使いこなす俺と比べて不便だろうから一応分けておいた。


正方形のバリアで、サイズは縦横2メートル。

少し大きいかな?


「形とサイズに要望があれば、言ってくれ」

「円形が良いですね。サイズはちょうどいいです」

「よし、きた」

バリア魔法を変形させて、円にしておいた。簡単、簡単。


「完璧です。ちょっと待ってくださいよ。これをつけて……」

ブツブツと呟いて、何か作業を始めた。

子供だからだろうか、はたまた天才の類か。作業に入り込んでからは、俺の存在を忘れて没頭する。

作業を見ているのはなんだか楽しかったので、近くで見ていた。


切り離したバリアに魔石を固定し終え、ニコッと笑ってこちらを見つめる。

「バリア魔法に僕の改造した魔石を引っ付けてみました」


手を離すと、バリアが浮遊して、惑星のようにダイゴの周りを一定間隔を保って動く。

「領主様、何か魔法をぶつけてみてはくれませんか?」

「……バリア魔法しか使えないんだ」

「ご、ごめんなさい!」

頭をこすりつけて謝罪された。

今のは、謝罪するべきだ。俺のコンプレックスに触れたからな。


「では、領主様の魔力を少し吸わせていただけませんか……」

もちろん良いので、手を魔石にかざした。

それだけ作業は完成みたいだ。


俺の魔力を吸わせた魔石を、同じ容量でバリアにくっつけた。

先ほどダイゴの周りを浮かんでいたように、バリアが俺の周りを旋回する。


「では、魔法をぶつけます。領主様は何もせずいてください」

「お、おう」

ちょっと怖いが、そうしよう。どうせ体を守る最終バリアもあることだ。


「ファイアーボール!」

ダイゴが放った火の玉が、真っ直ぐ俺に飛んできた。

すると、旋回していたバリアが鋭く反応し、火の玉を防ぐ。


「やっぱりうまく行きました!魔石を改造して、魔力に反応するようにしたんです。どんな魔法にも魔力が籠っていますからね、絶対に魔法に反応します」

「ただ反応するだけでは意味がないから、俺のバリアを引っ付けたわけか。面白い防御システムだ」

「そうなんです。領主様のバリアはフェイ様とアザゼル様の魔法でさえも通さないと聞いております。このシステムにより、最強の防御を使える人物が増えます」

「素晴らしい!」

これは本当に凄いシステムだ。


なるほど、アザゼルがこいつをわざわざ連れてくるだけのことはあった訳か。


「特別に予算を組もう。もっと精度を上げてみてくれ。ちなみに、物理防御のバリアはどうする?」

「そちらは人の体温か鉱物に反応させようと思ってます。まだ試行錯誤の段階ですね」

「それ、いいな。では任せた。今後、魔石は予算を組むからそこから買え。好きなだけ買っていいぞ。なにせ、お前たち魔族の働きで我が領地も俺の財布も潤っているからな」

「ありがとうございます!なんて御礼を言えばいいか!」

またも頭をこすりつけて御礼を述べるダイゴだった。


取りあえず、このシステムを完成させるために、追加でバリアを100枚渡しておいた。

簡単な仕事だ。なにせ初級魔法のバリアだからね。量産しても消費魔力は微量。なんてコスパの良い魔法だ。


「楽しみにしてるぞ」

「はい、必ず!」

俺はダイゴの部屋から出て、仕事に戻るのだった。

最強バリアシステムの完成を楽しみに待ちつつ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 作者殿の発想がぶっ飛んでて実に、面白い。 悪意を持つ者には一切の躊躇なく首ちょんぱ。有能な者にはそれ相応の報酬を用意する。 魔族だろうが人間族だろうが関係ないというところも魅力の一つですな。…
[一言] なんか着々と魔族が強化されていくなwがんばれ!100年後の人類w
[一言] 住みやすい土地だが、すぐに首が飛ぶw なんて恐ろしい土地なんだ! (´;ω;`) しかし、それに順応している人々が凄いなー 辺境の女神様の動向も気になる所。
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