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130話 side バリア魔法は新しい時代へ

「これは、本当に……。なんてことだ」

想像していた通り、いや、それを遥かに超える成果が出ている。

本当に僕は幸運だ。こんなに素晴らしい光景を見られるとは。これも全ては……あの時から始まるんだよな。



魔族の中でも若輩者で、魔法の使えなかった僕は、魔族の集落で辛い人生を歩んでいました。

人と渡り合えない魔族に価値などない。ダイゴは魔族の面汚し。

そんなことを言われてきた人生だった。


あの頃は時代も悪かった。

時代が荒んでいて、人も魔族も皆気が立っていた。生存をかけて、人と魔族が戦っていた時代だ。


そんな暗闇の時代に、アザゼル様と出会った。

集落で物を修理していた僕の才能の特異さに気づき、役割を与えてくださった。

あの日から僕の人生は変わった。

生きる意味を持ち、役割を得た。

アザゼル様のためならいつだって死ぬ覚悟ができていた。


しかし、人との戦いに敗れ、魔族は全員異世界勇者の封印魔法によって封じられた。

屈辱だった。

アザゼル様が生きることも死ぬことも叶わず、ただただ永い眠りについてると考えただけで悔しく、自分の無力を呪った。


そして半覚醒状態で300年が経った。

夢にも願った日が来る。アザゼル様が僕たち魔族を解放しにきたのだ。

300年という月日で封印魔法は力が弱まり、皆無事に解放された。

アザゼル様がまた戦えというなら、いつでもそうするつもりでいた。争いは怖いけれど、闘志は消えていない。


ベルーガ様や、カプレーゼ様、他にも歴戦の魔族が揃っていた。僕たちは皆あの日と同じようにまだまだ熱い炎を体の中に秘めていた。

けれど、アザゼル様から告げられたのは、シールド・レイアレスという人間に付き従うことであった。


驚きだった。

ベルーガ様も強い殺気を放っていて、他の魔族たちも同じように強い怒りを抑えていた。僕なんかが意見できる空気じゃなかった。

みんな不満はあったと思う。300年の間にアザゼル様に何かあったのではないかと心配した魔族もいた。


けれど、シールド・レイアレスという人間の傍にはあのフェイ様もいた。

皆、異常な事態だと思いながらも、やはりアザゼル様が決めたことに素直に従ったのだ。


結局みんなアザゼル様には従順だ。それだけ大きな恩がある。あのとき、もしも魔族で分裂していたらどうなっていただろうか。やはり僕はアザゼル様の味方についただろうけど、あまり想像したくない未来だ。


そして、ミライエでの充実生活はあっという間に月日が経つ。アザゼル様の判断が正しかったことを皆すぐ知ることとなる。

シールド様の治める土地は、僕たちに新しい時代の訪れを感じさせた。


この地には平和があり、人が暮らしやすいように工夫がなされている。

これも全て、シールド様の理想が成し遂げた偉業だった。長きに渡り、魔族が求めた安息の地がこうも簡単に手に入ってしまうとは……。シールド様はどこまでも規格外だ。

あの方が一人いるだけで、全てが丸く収まってしまう。


初めは殺気で羊とか殺せそうな程大量に殺気を放っていたベルーガ様が、今じゃシールド様に違う類の強い視線を浴びせている。とても面白いです。


僕が心から尊敬する方が、アザゼル様とシールド様の二人に増えた。

あのお二方は本当に素晴らしいです。


フェイ様は……うーん。尊敬とはちょっと違うかな。規格外な存在、生まれ持っての上位種。そもそも敬って当たり前のお方です。


シールド様のもとにいれば、毎日新しいものに出会える。

僕が造ったものを誉めてくださり、使えきれない程の予算を割り振ってくれる。


毎回予算を使いきれずに返還しているくらいだ。

公的に作られた機関は、シールド様が授けてくれる予算をどこも使いきれずに返還しているみたいだ。それでもあの方は僕たちに期待して、絶対に困らないくらいの資金を与えてくださる。


「好きに使え。好きなものを造れ。お前が造り上げたものを、俺は見たいんだ。ただそれだけだ」


シールド様が以前言ってくださったお言葉です。

僕は一生忘れることができないでしょう。


少しプレッシャーになるところもありますが、そのプレッシャーがまた僕の創作意欲を駆り立ててくれます。


僕には才能が有り、シールド様が環境を与えてくださり、ミライエにその技術が求められている。

こんなに幸せなことはありません。


そして、この素晴らしい循環と、時代の奇跡によっていよいよとんでもないものを生み出してしまったかもしれません。


「エネルギーが無尽蔵に生み出されている……!」

以前から、永久機関を夢見たことはある。

それに近いものができたかもしれない。


聖剣とバリア魔法を接触させ、エネルギーを生み出す装置が今も尚順調に稼働している。

あまり強く接触させ続けると、生み出されるエネルギーの膨大さで制御不可能となってしまうのだが、調整を繰り返してちょうどいい塩梅に落ち着いている。


アカネの土魔法で作り上げたアームで聖剣とバリア魔法を接触させ続け、生み出されたエネルギーを大量の魔石の中に封じ込めておく。


魔石はシールド様が造ってくださったバリア魔法のケースにまとめて入れ、エネルギーの通り道として黄金の線を使っている。


この黄金の導線を通って、大鏡を改良した装置にエネルギーが注ぎ込まれる。異大陸ゲート地方へと繋がっている装置の仕組みです。

黄金の導線は非常にエネルギー効率がよく、これはミライエの財力がなせるわざです。

とても凄いことです。流石シールド様です。


ゲートを開くためだけのために用意したこの装置ですが、思った以上の成果を生み出してくれている。

そう、エネルギーの供給が止まらない。

大量に集めた魔石へのエネルギー貯蓄はそろそろ限界値を迎える。


ゲートを開きっぱなしにしており、シールド様の命令でこちらとあちらの物資が行き来しているというのに、このエネルギー量だ。

過剰エネルギーは爆発を起こしかねないので、接触具合レベルを1まで下げている状態だ。

マックスで10まで上げることができるが、基本的には接触レベル5での運用を想定している。


5ではエネルギーが過剰だ。

1ではこれだけのものをもって余してしまうことになる。


聖剣とバリア魔法の接触は、無限のエネルギーを生み出してくれそうだが、実はそうではない。

聖剣側に少しずつひずみが生じている。

シールド様のバリア魔法の前には、流石の聖剣も耐えられないのだ。

といっても、接触レベル5の運用で10年は持つ想定である。


レベル10の接触だとこの期間が短くなってしまう。一番効率よく長期に運用できそうなのが、接触レベル5というわけだ。

聖剣が折れたときの衝撃に備える装置も作る必要があるし、折れた後の対策も考えなければならない。

シールド様のバリア魔法は3年でなくなってしまうので、定期的に交換すればよい。

聖剣魔法はひじり様にお願いする必要がある。

あれを造り出すのは膨大な魔力が必要だから、簡単に頼めることではないんだよね。


シールド様のバリア魔法なら。

「あ? バリア魔法がいる? 100枚でいいか?」

こんな具合に大量に下さる。

凄いことだ。簡単にポンポンと最強の盾を量産して下さる。あの方は生きる伝説、もはや神に近い存在なのである。


幸運にも手に入れてしまったこの恐ろしく純度が高く、汎用性の高いこのエネルギー。どうにか活用する必要がある。

シールド様が用意して下さったこの環境で生み出されたものだ。なんとしても、お役に立つものを作り上げねば。


何かないか。何か役にやつものは……。


「アカネとルミエスは、ミライエにこんなものがあったらいいなとか、そういうのない?」

「ざっくりと聞くわね。ないわね」

「あっははは。シールドが突如爆発する装置」

二人に聞いた僕がバカでした。

いつも一緒にいるルミエスとアカネは僕に刺激を与える存在ではない。

友達にそんなことを求めてもしかたないので、今一度よく考える。


そして簡単なアイデアが思い浮かんだ。

今、ミライエでは交易路の整備がかなり進んでいる。

街から街への移動も制限がなくなり、道が整備されたことで人の行き来が活発になった。

サマルトリアの交易所へのアクセスが楽になったことで、外国の方を見ない日がない程この地は人の行き来が多い。


更に、他の大陸からロードホースと飛龍を持ち込んできた。ミライエで数を増やし、物流にさらなる活気を与えるつもりだ。


僕はここに革命を起こせるかもしれない。

移動手段の革命を。

カギはやはりゲートだ。


生み出したエネルギーがこれだけ余っている。

ゲートの出口を正確に指定できれば、街から街への移動が……!


凄いことを思いついてしまった。

しかし、ゲートの制御は今のところかなり難しい。

その原理もまだ判明していない部分が多い。失われた技術なので、使うことはできても、一から作り上げるとなるとまた違った苦労がある。

実用化するまでには時間がかかると思われる。


今はまだ僕の内に留めて、実用化のめどが立ったらシールド様に報告しよう。

きっと喜んで下さるに違いない。あの方が「まじでか!?」って言ってくれる顔が今から明瞭に想像できる。

「ふふっ」

楽しみだ。


そうだ。ゲートの解析と同時に、もう一つ同時に進めよう。

この莫大なエネルギーを活用する別の装置を造ればいいんだ。

何もゲートにこだわる必要もない。

馬に引かれて走るのが馬車なら、エネルギーによって引かれる車があってもいいじゃないか。

「これは……」


僕の頭に血が濁流のごとく流れていくのを感じる。

湧いてくる、湧いてくる。アイデアが!


「ちょっと設計書を作ってくる。アカネ、君の魔法の観点から意見が欲しい」

「えーやだー」

「ほらっ、いいから手伝って」

無理やりアカネを引っ張ってくる。


「私は?」

あっ。まっずいです。ルミエスを誘い忘れた。

「ルミエスが設計書を書くんだよ。僕の絵と字は汚いからね。当然だろ。早く、二人とも行くよ」

かけがえのない友人たちを二人引っ張って、僕はまた新しいものを造る。

シールド様に褒めてもらう日が楽しみで仕方ない。


読んでくれてありがとうございます!無事に4章完結です。敵を純粋な悪にしようとテーマを決めた章でした。5章で描きたいテーマもあるので、また更新頑張ります!ブクマ評価等入れてくれると非常に励みになります。では、また続きを楽しんでね~w

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― 新着の感想 ―
[良い点] ダイゴは研究者・開発者としてオレンなんかと比ぶべくもないな。 しかも空気も読める。
[良い点] 聖剣魔法vs.シールド魔法… デーモンコア… 悪魔の実験… うっ体が
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