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126話 バリア魔法抜きの交渉材料

醬油のかかった海鮮丼を食べて以来、俺の腸内が凄く調子がいい。腸が調子良い!? てへっ。

躍動している! 腸が超躍動しています。腸が超!? てへっ。


腸内の兆を超える腸内細菌が超喜んでいる! 腸が兆!? てへっ。


むしろなぜ今までこんなにも上手いものを届けなかったのかと怒っている気さえする。今後もこんな旨いものばかり求められても困るが、たまにはお届けしますので期待していてください。

こちら腸内環境報告部でした。


「アザゼル! おもしろい情報はないか!」

「あります」

!?

腹の満たされたうざいやつの、こんな突然な無茶振りにも、アザゼルは平然な顔をして対応してくれる。

最高だ。アザゼル大好き。


アザゼルは未だに調べ物の最中だったが、既に報告できるくらいの情報量は得ているらしい。

まとめて報告してくる予定だったのだろうが、現状分かっていることを知れるだけでもありがたい。だって、暇だから!


「ここはベンカー大陸のハルア国、ガンザズ伯爵領。ここまではすぐに判明しました。問題は……」

「なんだ?」

アザゼルが顔曇らせる程のことか。

「ガンザズという男、さぞ恨みを買っていたらしい。この屋敷からも黒い情報がまだまだ出てくる」

「それは一体なんだ?」

「シールド様の眼に入れる必要のない下種なものばかりです。こちらで処理いたします。問題は、我らがガンザズを排除したことが想像以上に影響を及ぼしそうです」

そりゃな。

俺たちは言ってみれば、侵略者である。

突如ガンザズの領内に現れ、その領地を支配したのだ。


国側からしたら突如占拠された侵略者以外の何者でもなく、蛮族扱いされても何も驚かない。

だからアザゼルの心配していることは、俺はあんまり心配していない。

というか、当然だよな! って感じだ。


「安心しろ。俺がいる。全部うまく行く」

「……私は少し考えすぎていたようですね。その通りでした。シールド様がいれば何も心配いりませんね」

ちょっと今の俺、国王っぽいかもしれない。

じゃあ国王っぽいことはしたので、しばらく自由に動き回って良いですか!


「ちょっとミライエに戻っていい? ブルックスと話したいことが沢山あるんだ」

「ええ、大丈夫ですよ」

こちらは全部アザゼルに任せればいいか!


「シールド様!」

そんな俺にストップをかける存在、ベルーガが駆け込んできた。

「使節団が街の外に来ております。軍を率いており、ただならぬ気配です」

ですよねー。

簡単に国王の責務からは逃れられない!

やりたいことをたくさんやらせて貰える分、仕事も多いのだ。


「んだこら。使節団? 叩き潰すぞ」

「い、いえ。向こうは話し合いを求めています」

ちょっと猛ってしまった。遊べると思ったのに! 急に来るから!


ガンザズの屋敷を我が物顔で使い、よく来たなみたいな顔で堂々と迎え入れる。

謁見に使用する部屋の一番奥でソファーにどっぷりと座り込み、脚はテーブルの上に乗せる。


「よう、よく来たな。自分の家だと思ってくつろいでくれ」

俺も自分の家じゃないのに、そのくらいくつろいでいるので、みんなそうすると良いよ。

わらわらと入ってきた使節団は、文官と思われる男意外は鎧を見に纏った護衛だった。


全員通したということは、ベルーガの悪意センサーを突破したのだろう。もしくは脅威になり得ない程度の相手。どちらでも構わないか。

話を進めてくれ給え。こちとら暇ではないのだよ! 暇では!


「ハルア国の使節団長クレスト・フォルム子爵と申します。貴君のお名前をお聞きしてもよろしいか」

「シールド・レイアレス」

ふてぶてしい態度だったからだろう、クレストは少し気圧されている。

ごめんな。遊びに行こうとしたら仕事が入ったので、イライラしてんだ!

ちょっとくらいの八つ当たりは許してくれ。


「シールド様、まずは領内の民に危害を加えなかったことに対する感謝を述べる」

「おう」

侵略者ではあるが、土地をゲットするつもりなのでそんなことは考えたことすらない。我が軍は強すぎるので、そんな卑屈なことをしなくても自尊心を保てる。


「しかし、ハルア国はそなたの侵略を批判する。武力による支配は到底認められるものではなく、即刻領地の返還を求める」

「はい」

了承したわけではない。話の続きを促したのだ。


「本音は? 忙しいんだ。本音で語り合おう」

建前を聞いてるほど暇じゃないんだ。こっちはな、ミライエに帰りたいんだよ! 交易所に行きたいんだ!


「……ガンザス伯爵を葬ってくれたこと、国中が感謝していることでしょう。私も弱みを握られていたので、感謝しております」

「あいつゴミだな」

「しかし、今度は国中があなたを恐れています」

なるほど。それもそうだな。当然の感情かもしれない。

しかも、テーブルの上に足を乗せるこのふてぶてしさ! 第二のガンザズが生まれたと思われても仕方ない。

やっちまったな……。

一時の怒りをつい態度に出してしまった。ごめんね。


「アザゼル、弱みを握っていたらしいが、文書に残ってたりするか?」

「ばっちり。全て手元にあります」

……わろた。

俺は第二のガンザズになる! ドン!


手を差し出すと、無言でもアザゼルは意味を理解してくれた。

クレスト・フォルム子爵の資料が全て俺の手元に。

軽く目を通すと、あれやこれやと書き連ねられている。

うおっ、えぐいな! 妾が15人!? それは流石に慎んだ方がよくないか?


しかし、こんなものに興味なんてない。

証拠となる書類一式を全て子爵に投げつけてやった。

「くれてやる。全員に伝えろ、ガンザズに弱みを握られている自覚のある者は全員自分で受け取りに来い。手土産を持ってな!」

サービスだ。

これで侵略の件がチャラになるとは思っていないが、懐の深さを見せるには十分だろう。

そもそもこちらは恐れてもいない。批判だろうが、武力に出ようが受けてたつ腹積もりだ。


「感謝いたします。しっかりと皆に伝えておきます」

大事そうに書類を部下に渡して保管する。そんなもの、すぐにでも焼けばいいと思うのだが、まあ俺が気にすることではない。


「しかし、懸念事項はまだあります。この国はあなたの武力をも恐れているのです。ガンザズ伯爵の軍勢を消し去るほどのその圧倒的な力に」

「で、どうしろと?」

こればかりは放棄できないぞ。


「何か手段があるわけではないのです。ただ無力な国の中枢は言葉でなにか影響を与えようとしているだけです」

「それでは何も変わらないが」

「もちろんです。シールド様の逆鱗に触れるかもしれないと懸念していたのですが、一応圧力はかけるようにと」

「甘いな」

甘すぎる。

なんだこのプレッシャーのかけ方は。

どう出てくるのかと期待していたが、ただ脅すだけとは。


「無能だな」

「……そういわれても仕方ないかと」

「無能な国の中枢に俺から伝言だ。ガンザズ伯爵の領土は全て俺が貰う。名をゲートと改め、一領主として俺が君臨する。国には変わらず税金を納めるし、秘密文書も返す。武力侵攻もしないことを約束しよう。こちらの要求は以上だ。帰れ」

「はい、しっかりと国王へと伝えます」

「帰れ」

大事なことなので再度繰り返した。暇じゃねーんだよ! 帰れ!


子爵は慌てて帰って行った。

俺のことを恐れていたようだし、何より一刻も早く証拠となる書類を消し去りたいのだろう。

去れ、去れ。

お前みたいな客は待ってないんだ。


さて、使節団のせいでだいぶ時間を浪費した。

今から戻っても交易所は閉まる頃だ。明日だな。ブルックスと儲け話をするのは。ぐふふふっ、楽しみは明日に取っておくか。


そう考えていたら、次の日、朝からベルーガがやってきた。

「ハルア国の王太子がやって来ております」

「ふぁっ!?」

聞いてみれば、秘密文書を受け取りに来たらしい。

マジかよ。昨日の今日で来たのかよ。

誰が一覧にいるかなんて知らなかったが、王太子まで弱みを握られていたか。


面倒くさいが、王太子ほど身分ある方を無下にはできない。交易所は今日もあきらめるか。

「さて、手土産は持ってきたんだろうな」

「なかったら斬りましょうか?」

いや、そこまでは……。


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