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123話 バリア魔法でも防げない衝突

ガンザズ伯爵に当然の報いを受けさせるだけで十分だったのだが、俺の優秀すぎる部下たちは瞬く間に街を占拠してしまった。


この世界の情勢はわからないが、とりあえず街をゲットしてしまった。

今後政治が必要になりそうだが、一旦の目標は達成できた。


街は突如現れた魔族と、壊滅したガンザズ伯爵の軍を前に不安に包まれている。

彼らに危害を加えるつもりはないと伝えたが、言葉では解決しないだろう。


しかし、この問題はすぐに解決した。

占領したガンザズ伯爵の屋敷には、これでもかと蓄えられた金銀財宝があった。

これをばらまいた。

これでもかと盛大に。


効果覿面、たった一日でこの街の人の心を掴んでしまった。

あとは政治面だけだな。

なんとかこの街をゲットできれば、まさかまさか、違う大陸にも土地を所持できる。

これは大きいぞとウキウキしてたところに、アザゼルから衝撃の報告を受ける。


この街、そして地方名はガンザズというらしい。

……最低の名前なので、すぐに改名することにした。


ここはミライエとこちらの大陸を繋ぐゲートがある土地だ。

思い切って土地名も街名もゲートにしてみた。わかりやすさが最高だよね!とか思っていたが、決定した名前をベルーガに伝えたら顔を背けられてしまった。

え、なに?ダサかった?何かあるなら言って!


誰も異論を伝えて来なかったので暫定的にここはゲートと名付けられた。

こちらの大陸へと渡ってきたダイゴによって、自由に行き来できるように入り口を調整して貰っている。

それが完成するまでは、まだこちらにいるつもりだ。

戦いが終わってからの処理はまだまだある。


とりあえずは、あいつからだな。

魔族に命じて例の男を捉えさせ、屋敷まで連れて来させた。

押さえつけられながら、項垂れながら膝をつく。


「ごくろう」

早速見つけてくれた部下に感謝を伝える。

何事かと青ざめている男は、顔を上げてはっとした。


どうやら俺のことを覚えていたらしい。


「金貨、返せ」

「はえっ?」

戸惑っている場合じゃないぞ。

周りは戦いの後で、まだ殺気立っている俺の部下たちがわらわらと集まってきている。


「金貨、返せ」

二度目の言葉でようやく理解したみたいだった。

そう、彼は以前門番で俺たちから金貨を掠め取った門番だ。

もう一人いるが、こいつだけで十分だろう。


「はっはい!金貨は家にあります。す、すぐに取ってきます」

「よし。話してやれ。相棒のも持って来いよ」

「はっはいぃ!」

拘束をといてやり、金貨を取りに戻らせた。


あの時、街に入るときに下種な門番に奪われた俺の金貨2枚。

この街を掌握し、ミライエにも戻れるようになった俺にとって金貨2枚なんて川辺石の代わりに投げて遊ぶほど無価値なものだが、それでも返して貰わないとね!


ずっとこうなる未来を予期していたので、あのときも平然と支払えたんだ。


「全く、この街は腐敗していますね。改革にしばらく時間を要することをお許し下さい」

「助かる。頼んだぞ、アザゼル」

ミライエのように不正を働く者に厳しい土地にするつもりだ。容赦はしないという姿勢を示すためにも、最初は特に厳しく取り締まる。


街の人々には飴を与えたが、役人どもには鞭が待っている。

とはいっても、真面目で有能な人間はいつだって好待遇で迎え入れるのでそれほど恐れる理由もない。


全有能な者どもよ!バリア魔法のもとに集え!


街を占拠した後に、竜人族も迎え入れた。

俺が本当にミライエの国王で、多くの部下を従える身分だとわかるや否や、なんか頭を下げて来た。

ずっと俺のことをちょっとやばい人みたいに思っていたらしい。

あくまで彼らは俺をかなり強い魔法使い(フェイの子分)程度に考えていたらしい。


なにそれ!

納得いかないよね!

子分はあいつだから!


「シールド様、ご苦労様でした。まさかここが異世界ではなく、霧の海を越えた先の大陸だったとは」

「霧の海?」

「はい、エルフ島より更に東に進んだところにある、越えられないと言われる海です」


こちらに来てさっそく文献を漁って、正確な知識を習得するアザゼルさん。有能すぎです。

屋敷のテラスでミュートにトウモロコシを焼かせて、ハナホジで焼きあがるのを楽しみにしていた俺とは段違いである。

ほへー、そんな書物どこにあったの?

屋敷に入って一番いいトウモロコシを探していた俺は書庫がどこにあるかも知らない。


「……お前天才かよ」

「それが仕事ですので。シールド様はトウモロコシをゆっくり食べるのがお仕事です」

とアザゼルから許可を貰ってしまった。

焼きとうもろこしを食べるのが俺の仕事らしい。こんなに甘やかされていいの!?

ありがとう!


アザゼルの説明によると、船による航海で、自力でこの大陸に到着するのはかなり非現実的らしい。

だから大鏡を潜った先が異世界ではなく、この大陸だったことは損失ではないとのこと。


エルフ島から更に東に行ったところにあるのが霧の海。

古くからエルフ島の存在も、その東の霧の海の存在も知られていた。

その先にも何かあるのだろうという当然の疑問もあったが、その疑問は解消されることなく歴史だけが進む。


エルフ島に行くまでも特殊な海流に乗る必要があるように、そこら一体の海は全てがおかしいのだ。

一度迷い込んだら二度と戻れなくなると言われている程である。


隣にいる人が見えない程の濃い霧と、特殊すぎる海流、おまけに気象まで荒れ放題というてんこ盛り要素な海だ。

命が惜しくないものは挑んだかもしれないが、情報がないということは生きて帰れなかったのだろう。


そう考えると、こうして大陸を渡れたのは大きな功績である。

異文化コミュニケーションが始まっちゃう。


ミライエから何を持ってきちゃおうか。それとゲートからミライエに何をもって帰ろうかしら。

交易所にいるブルックスと話し合わねば。

高値で売れそうなものを一緒に探し回ろう。


楽しい妄想がはかどってきた頃、ミュートの焼きとうもろこしが完成した。

完璧なきつね色に焼かれたとうもろこしは、極上の薫りを漂わせてくる。


「アザゼル、一本行っとく?」

「いえ、私はもう少しこの大陸の情勢を調べたいので」

食べながらでもできる気がするが、俺は調べる気がないのでそこんとこはっきりさせてくれるなら全部任せます!

全部任せて焼きとうもろこし食べます!

アザゼル最高です。


「全く、お前たちがいると全部が楽だな」

「そういえば、フェイ様とは上手にやれましたか?」

……上手に?

危うく殺されかけたよ。

あいつと上手にやれる人なんていないけど!


「街の外、地面が結構抉れてなかったか?」

「はい、ありましたね」

「あれフェイがやったんだよ。ったく、暴れ馬だよ。ブチギレてもうやりたい放題。死ぬかと思ったぜ」

「……フェイ様がブチギレ?」

首を傾げて、アザゼルが怪訝な表情を見せる。


「世界が滅んでしまいますよ」

「……やっぱり?」

何があったのか詳しく聞きたいとのことだったので、起きたことを全て話した。

ガンザズ伯爵が竜人族オレンにした非道を話すと、アザゼルの顔にも怒りが浮かび上がってくる。


「クズですね。一撃で葬ったのを後悔し始めました」

「まあ、まあ。俺たちが怒りに染まることはない。フェイが代わりに怒ってくれたんだ。それで十分だ」

「……それもそうですね。流石です、シールド様」

そ、そう?

褒められて嬉しい。


「なによりシールド様が無事でよかったです。フェイ様もいるし、シールド様にもしもなんてあるはずないと考えていましたが、まさかフェイ様の逆鱗に触れるとは……。やはり今後はシールド様には城にいて貰ったほうが?」

ぶつぶつと呟きながらアザゼルが調べ物に戻っていく。

とりあえずの報告を受けた俺は、引き続きその成果を楽しみに待つのだ。


ドラゴンたちはいつもトラブルを持ち込むが、魔族と人間の部下たちは非常に優秀だ。

トラブルなんて滅多になく、あっても小さなことだ。

手のかからない部下たちで非常に助かっている。


アザゼルがここを去り、代わりにベルーガがやってきた。

なんだかまだ殺気立っており、水魔法で作り上げた剣を片手に持っていた。


「シールド様、その女はだれですか……こっちに来てから思っていたんですけど距離感近く無いですか?殺していいですか?」

べ、ベルーガさん!?

「シールド様、この女馴れ馴れしくないですか?殺したら私をずっと傍に置いてくださいますか?」

みゅ、ミュートさん!?

やめて!私の為に争わないで!

俺の部下はトラブルを発生させず、優秀な連中ばかりのはずだったのでは!?


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[気になる点] おっ ハーレム突入か [一言] まさかの豚さんナレ死
[気になる点] 描写なく退場とは見たかった反面あっさりとやった感もあってそれはそれでいいんじゃねと思ったりでちょっと複雑
[一言] 絶望する暇どころかおっ死ぬ描写すらなかったでござる
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