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105話 バリア魔法でエネルギーの供給

「お主、旅が下手なのが丸見えじゃな」

でかいバッグを背負った俺を見て、フェイが馬鹿にしてくる。

旅通は荷物が少ないらしい。その言葉の通り、フェイは少しの荷物しか持っていなかった。


そりゃ俺だって大きな不安がなければ大きな荷物を背負ったりなんかしない。

俺の不安は、フェイの食欲だ!

また路銀で困る生活はいやだ。


今や大陸に直轟かせる国王の一人だぞ。なぜ路銀に困る生活をせねばならないのか。

旅が下手とか言われても、俺はこのでかい荷物を持っていく!いやだ、いやだ!苦しい旅をするくらいなら、大きな荷物を持っていくんだい!


大量の金貨を持っていても、やはり保存食がなければ不安になる。

フェイの膨大な食欲は、もはや俺のトラウマである。


大鏡の最終調整をしている間に、ダイゴが城まで来てくれた。

港で軍船の改良を行って貰っているのだが、今は大鏡の件で呼び寄せた。


この措置にひとしきり目を通した後、ダイゴは目を輝かせていた。

側面をパシパシ叩いて、装置の頑丈さを確かめていた。

今叩いた!?天才ダイゴも叩いてるけど!!


俺も先日叩いたのだが、やはりこれ叩きたくなるよな。わかります。


詳しい仕組みを俺に聞いてくるが、自らの観察だけでダイゴは装置について既に俺の理解を上回っていた。悔しいが、この世には天才ってやつがいるんだな。

老害のジュークの話し相手はキッズのダイゴに任せるべきだったか。癖強同士で話が合っていたに違いない。

ジュークは城の書庫で今日も本を読んでいるハズなので、ダイゴにその旨を教えてやり、二人で未知の装置について話を咲かせて欲しい。


「エネルギー供給元はここですね。ふむふむ、これを真似た装置なら作れるかもしれません」

「本当か!?」

「ええ、時間はかかりますが、できそうです。一から作るとなると今の僕の知識では無理ですが、こうも完ぺきな指標があるといろいろとアイデアが湧いてきます」

天才の創り上げたものは、天才の細胞を刺激してしまうようだ。


ふーん、天才じゃん。

俺たち凡人にはわからない感覚だ。


「シールド様、いろいろと変なものを造る予定なので、少し広い土地をお借りしたいのですが」

俺は少し勘違いをしていた。

てっきりこの大鏡よりも完璧な異世界ゲートを造るのかと思っていたが、この仕組みを活用して、異世界ゲートだけでなく、他にもいろいろと便利なものを造ってくれるらしい。


流石天才。発想も少し上を行っている。


「そうだな。よし、決めた」

サマルトリアの北東部を工業区として、そこを広くダイゴに与えてやった。

価値の高騰している土地で、できれば貴族たちに売り渡したかったが、ダイゴの発明はできるだけ城の近くで行って欲しい。

技術の漏洩防止にもなるし、これだけ近いと何より俺がすぐに見られる。

新しい発明を見るのはワクワクするから好きだ。


「開発費は足りてるか?」

「ご配慮いただきありがとうございます。十分に足りています」

そうか、それは良かった。


ならば開発は大丈夫そうだ。

それに、アルザス地方の土地も手に入れた。

なにかしたくなったら、あっちの土地を活用してもいい。

移住者が増えて、あちらの地価も高まり始めているらしい。


大鏡の先に続く異世界から戻ってきたら、あの土地もどでかく開発してやろうと思う。

また楽しみが増えて、俺は今日もハッピーだ。


「とりあえず、安定した高エネルギー源の製作だな。それを最優先で頼む」

大鏡や、それと似た装置を作り上げたところで、動かせなければ意味がない。

しかし、ダイゴから貰った返答は意外なものだった。


「それですが、おそらくすぐに解決します」

「え?」

意外過ぎる答えに、俺は戸惑う。

安定した高エネルギーの供給ですよ?無理無理、これ以上ない無茶な要求です。余裕でパワハラ案件ですけど!


ダイゴの話は先のヘレナ国との戦争に遡る。

アカネやダイゴ、ルミエスも後方部隊にて俺とひじりの戦いを見ていたらしい。

その時、目にした聖剣魔法とバリア魔法の戦いが克明に記憶に残っているのだとか。


「あれは僕の中で大きな意味をもつ戦いでした」

うん、俺もだけどね。ていうか、大陸中がそうだけど。


「僕の短い人生でもっとも偉大なエネルギーを観測しました。神々の戦争も目にしましたし、300年の封印の間もあれほどのエネルギーを感じたことはありません」

「まさか、お前……。あれを活用しようと?」

そういう話なのか?


「はい!」

滅茶苦茶元気な返事を貰えました。

天才ってやつは、ちょっとどこか頭のネジが外れているよな。

危なすぎるけど。あんなの、人が扱っていいエネルギーではないのだが。

下手したら、サマルトリアの街が更地になるほどの魔力爆発だったぞ。


「任せてください。自信がありますので」

ったく、キラキラした目で言いやがって。そんな目をされたら、パワハラ上司としても許可せざるを得ない。

「よし、とりあえずはひじりのやつに頼んで聖剣魔法を作って貰わないとな。あれって持ち運びできるんだろうか?」

「恐らく可能です」

なんか知らんけど、ダイゴは聖剣魔法についても少し詳しいらしい。


あれは魔法であり、ひじりの使うクラフト魔法に近いものでもあるらしい。

無から、この世に有を作りあげるのだ。あいつ、もはや神に近い存在じゃないか?


大鏡も、ひじりに任せれば量産できそうだ。

しかし、そこはダイゴとは違う側面がある。


ひじりのクラフト魔法では大鏡と同じものしか作れない。しかし、ダイゴは大鏡のアイデアをもとに、新しいもの、更に改良したものを作れる。

我々地に足の着いた人類はこうして神に対抗していく力があるのだ。

まっ、もちろん一部の天才たちのお仕事なんだけどね。


「ダイゴ、お前は偉大だな。お前みたいなやつが、素晴らしい世界を創りあげてくれるんだろうな」

「いいえ、違います」

ほう。というと?


「シールド様みたいな方がいるから、新しい素晴らしき世界が創られるのです。僕はその手足でしかありません。手足は優れた頭脳によって制御されるものです」

くぅー、こいつめ。

可愛いやつめ。


こんな少年っぽい見た目なのに、立派な処世術を身に着けている。

肩を組んで抱き寄せ、頭をよしよししておいた。かわいいダイゴめ。フェイとか生意気なドラゴンたちとは大違いだ。


早速ダイゴの言う通り、ひじりに聖剣魔法を用意して貰った。

これがまた少し扱いが難しく、ひじり以外は碌に聖剣魔法に触れることすらできない。


熱い、のだ。耐えがたいほどに熱い。

単純に込められている魔力量が桁違いすぎて、常人では触ることすら敵わない。


体にバリア魔法を展開している俺と、あの高魔力に耐えられるドラゴンくらいしか握ることが敵わない。

アザゼルでさえ、焼かれるような気がして1分も持っていられないとのことだ。


やはり扱いが危ない気がしてきたが、ダイゴはこの展開を想像していた。

謎の機械を取り出し、それを手にはめた。


腕を覆うような機械は、ダイゴの肩から始まり、手も全て機械で覆っていた。ロボットの片腕のようになったダイゴの右腕は、彼の意志通りにちゃんと動くみたいだ。いつの間にこんなものを。

筋力を上げてくれ、重たく、危険なものを持つ際に役に立つ機械。

鉱山で活用する予定の装置だったらしいが、聖剣を掴むにはちょうどいいものだ。


機械の腕で聖剣を掴むと、装置が発熱しだし、機械の手が赤くなっていくが、ダイゴの検証によって10分ほどは握っていられることが分かった。


「これだけ掴んでいられるなら、問題ないです。エネルギー供給装置の開発に入れそうです」

ダイゴが問題ないというのならそれでいい。


エネルギー源を創り出すその部屋はバリア魔法で囲うことになった。これはダイゴの要望であり、彼は自分の力を過信してはいなかった。

失敗したときにサマルトリアの街が吹き飛ぶ可能性があるので、バリア魔法で囲っていれば問題ないという考えだ。

そこまで思考が及んでいるなら、もうすべてを任せても良さそうだ。


リスクを理解している者は、たいてい事故を起こさないものだ。知らんけど。


ダイゴに要求されて、追加であらゆる形、サイズのバリア魔法を作った。

なるほど、やりたいことが見えてきた。


どうやら、俺たちの戦闘で見せた偉大な魔力爆発を人為的に再現するつもりらしい。

どのバリア魔法の形が一番安定したエネルギー爆発を起こしてくれるかこれから検証するんだと。


いろいろと大変そうな作業だ。

怪我人が出ないようにだけ伝えておいた。


聖剣の魔法を全力でバリア魔法にぶつけると、いずれ聖剣魔法の耐久値が減っていくので、そこを加減しつつ、壊れない範囲で最大効率の魔力爆発を起こす。ごめんな聖剣。俺のバリア魔法の方が硬いんだわ!


そで生まれた偉大なエネルギーを大鏡の動力源とするダイゴの偉大なる発明となる。

実用化まで時間がかかりそうだが、俺でも理解できる仕組みで助かる。


「同じ時代に二人の天才が現れたからこそできる装置ですね。未来では失われそうな技術です。この大鏡のように」

大鏡をパシパシと叩いて、ダイゴが感慨深い表情で見つめる。


なるほどね。

大鏡が作られた時代にも、変なやつがいたのかもな。

その変人たちが死んでしまい、技術が失われたと。歴史ってのは、そうやって作られるのかもな。


ならば、俺たちが生きているこの時代に色んなものを残してやろう。

いずれ、この時代が黄金の時代だったと言われるように、いろいろやってやろうじゃないか。


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