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ヲタッキーズ94 妖精は真夜中に死ぬ

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第94話"妖精は真夜中に死ぬ"。さて、今回はタワマンの地下で妖精が惨殺されます。


タワマンにありがちな複雑な不倫関係、さらに"時空トンネル"の秘密を狙う諜報機関の存在も浮上して…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 殺された妖精


真夜中の東秋葉原。無人のコインランドリー。

ブザーが鳴り、洗濯ドラムがゆっくり止まる。


中には…妖精の死体←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ロシャ。調査のために私に同行するのは結構だけど、万一、負傷しても私を訴えるコトは出来ナイの…例え、死んでも」

「そもそも死んだら無理だろ、ララル」

「ねぇ権利放棄の署名をする前に、もう1度、顧問弁護士に相談なさったら?」

「話せば止められるに決まってる。問題が起きた時に助けるのが奴等の仕事さ」


ミユリさん相手に強引に自説を通す嫌な奴。あ、電話w


「はい、ムーンライトセレナーダーです…場所は?了解(ROG)。直ちに急行」

「待てょララル。どこへ?」

「仕事です、マハラジャ」

「ヲレもー」

「私は現場。マハラジャは手続き。では」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「あれ?元カレは?もう喧嘩別れ?」

「書類が整うまで待機してもらってます」

「その手があったか」


殺人現場で僕と合流したミユリさん…じゃなかった、ムーンライトセレナーダーは、気のせいかヨソヨソシゲな態度だ。


ソレもそのハズ、ロシャはミユリさんの池袋時代の元カレ←


彼女は、アキバでスーパーヒロインに覚醒スル遥か前に、池袋でメイドの経験がアル。

当時はメイドカフェとか未だなく、マハラジャ風コスプレカフェでベリーダンサーを…


「あ、ムーンライトセレナーダー。今回は被害者自身が"blood type BLUE"、異次元人なの。よろしくね!」

「コチラこそ。前回の"スーパーヒロイン狩り"の続編かしら?」

「うーん作者次第ね。とりあえず、聞き込み!」


殺人現場を仕切るのは万世橋(アキバポリス)のラギィ警部。ただし、異次元人絡みの事件なので"ヲタッキーズ"との合同捜査となる。

"ヲタッキーズ"は、ミユリさん率いるスーパーヒロイングループで、南秋葉原条約機構(SATO)の傘下にある民間軍事会社(PMC)だ。


「ソレで?」

「先ず、902号室のロゼンさんだけど…」

「あ!ムーンライトセレナーダーだわ!モノホン?」


ロゼンさんは、都会で一人暮らしの元気な老婆w


「今宵は、地下の乾燥機がいっぱいで…30分待っても1つも開かない。だから、実力行使に出たワケ」

「乾燥機のクセに人を殺すとはケシカランとか?」

「違うわ。アンタ、誰?」


僕は、ポリポリ頭をかきつつ、後ろに引っ込むw


「待つのをヤメただけ。乾燥機の扉を開けて、中の服を出そうとした。すると、パリパリに乾いた妖精の死体が出て来たわ。いやぁ他人の洗濯物ナンか、見るモンじゃナイわょアンタ」

「(そっち?)ナルホド。乾燥が済めば、ドラムから出して良いルール?でも、たたむのはヤリ過ぎでは?勝手に下着に触られたら、私なら洗い直すけど」

「おや、ムーンライトセレナーダー。自分の下着を洗濯に出すの?」

「え。ふ、ふ、冬は」

「今は夏ょ」


スーパーヒロインも元気な独り暮らし老婆には敵わないw


「ラギィ警部!後は頼むわ」

「はいはい。あ、死体はドラムから丁寧に出して。鑑識を呼んで漂白剤を分析に回して。念のために指紋も調べてもらって。えっと被害者は…」

「エイン。1204号室で働いてたシッター。彼女は妖精(フェアリィ)で背中に羽根がアル」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「マハラジャ?」

「ララル、遅かったね。シッターが殺されたンだって?万世橋(アキバポリス)の署長さんから報告を聞いたょ」

「なるほど。サスガはスタートアップ界のプリンス。アチコチに手を回すのが得意なのね」


その夜、僕達が"潜り酒場(スピークイージー)"に御帰宅スルとロシャがいる。


「で、マハラジャ。いつまで私を追っかけ回すおつもり?」

「新しいビジネスモデルのイメージがひらめくまでさ。何しろ、俺はスタートアップを107社経営するエグゼクティブ起業家ナンだ」

「私がひらめきの元?元カノと思われるのも迷惑なのに」

「ララルは、俺のひらめきの泉だ」

「ソレ、池袋で推し変スル前におっしゃって」


気まずい空気がハンパなく流れる。

さっさと切り札を切ってしまおう←


「あ、ミユリさん。被害者にシッターさせてたモェラ・マッハは、僕のSF作家仲間だ。逢いに逝く?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「モェラ・マッハさん?ヲタッキーズのムーンライトセレナーダーです。亡くなったシッターのエインさんの件でお話をうかがいたくて」

「え。ムーンライトセレナーダー?あら、新コスプレ?!すみません、写メを撮らせて…あら、テリィたんも?」

「久しぶり、テリィだ。ヲタッキーズCEOの」


第2章 アキバの街を出るな


「入っても?」

「もちろん。どーぞどーぞ。ムーンライトセレナーダーは、特にどーぞ。もう1枚、写メOK?動画は?」

「ママ!お客様?」


中年化が著しい最近の腐女子風情のモェラからは想像不可能な美少女が登場!地下なら即デビュー可能だ!水着はOK?


「ママはダイニングにいるから、貴女は自分の部屋でおやすみなさい。さぁ行って…娘にはエインのコトは未だ言ってナイの」

「ソレが賢明カモな」

「娘は、とてもなついてた。エインは、子供の扱いがとても上手だったから」


そりゃ妖精だからな。


「残念だわ。迎えに来ないと学校から連絡があって、エインのスマホにかけたら留守電。だから、私が迎えに行き、帰宅したら…この騒ぎょ。テリィたん、説明して」

「彼女を最後に見たのは?」

「昨夜、ココで会ったのが最後。朝は、私が娘を送って、その後、11時頃にエインが来るの」

「モェラの旦那は?えっと、確か起業家だっけ?」

「うん…でも、最近、発明が忙しいらしくてほとんど顔を見てない。昼も夜も発明、実験、研究ょ。発明家の女房ナンてなるんじゃなかった。今朝も、私より早く出かけて行ったわ」


確か、発明家というより科学者だったハズだが…


「で、彼女のdutyは?」

「先ず掃除と洗濯。ソレから娘を迎えに行く。帰宅して夕食をつくって娘と食べる」

「おいおいモェラ、君は日中は何処にいるんだ?」

「ホテルに缶詰ょ!テリィたんはSFは何処で描いてるの?」

「え。会社さ…あわわわ!」


マズい。僕は、第3新東京電力のサラリーマンなのだw


「モェラさん。彼女に悩みとかトラブルはありませんでしたか?例えば…恋人とか?」

「エインに恋人?!ムーンライトセレナーダー、万世橋(アキバポリス)は侵入者による犯行の線を考えてると聞きましたが…」

「え。スゴい情報網ねw何処から聞いたの?」

「管理人のおばさんの立ち聞き情報」←


僕は、思わずクスクス笑ってしまう。


「未だ調査中だょ。現段階では何も特定出来ない」

「そーなの?」

「モェラさん、彼女に恋人はいましたか?」

「うーんいなかったと思うわ、ムーンライトセレナーダー。でも、元恋人なら。確か…ブレン」

「いつ頃別れたの?」


突っ込む僕。呆れた顔のモェラ。


「1ヵ月前だったかしら」

「イケメン?」

「さぁ」


ムーンライトセレナーダーがニッコリ微笑み切り上げる。


「ブレンさんですね?では、お邪魔しました。彼女の遺留品があれば、お預かりして行きますが」

「バッグが1つです。スマホが入ってるカモしれません」

「お預かりします。ありがとうございました」


外に出たトコロでムーンライトセレナーダーに尋ねる。


「アレで終わりか?」

「はい。先ずは、自分で調べたいのです。彼女は、逃げません。テリィ様がアキバにいる限り…あぁやっぱりスマホは入ってナイわ」

「地下の洗濯室じゃないの?」

「その代わり、免許がありました。本籍は青森県。津軽娘がアキバに上京して妖精に覚醒?」


少し面食らったようなミユリさんの顔を見て一言。


「現実は、SF小説よりも奇なり」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


南秋葉原条約機構(SATO)は、アキバに開いた"リアルの裂け目"の脅威からヲタクを護る首相官邸直属の防衛組織だ。

その司令部は、パーツ通りのとあるゲーセンの地下深く秘密裏に作られ、日夜"脅威"に敢然と挑戦している。


「朝からメイド2人がPC画面を見つめてる。イケメンゲームでもやってるの?」

「あ、テリィたん。現場裏口の監視画像ょ。表にはドアマンがいるから。エレベーターホールも映ってる」

「返り血を浴びた犯人がピースしてるとか?」


ヲタッキーズの妖精担当エアリとロケットガールのマリレ。

2人ともメイドカフェ勤務なので、普段はメイド服を着用←


「なワケないでしょ。その代わり、被害者が洗濯物を持って登場するわ。ホラ、地下にある洗濯室へ降りて行く。数分後、再びエレベーターに乗り込んで部屋に戻り、さらに40分後、再び地下へ向かう」

「洗濯が終わった衣類を乾燥機に移し換えるためだね。動画に映った彼女はコレが最後?」

「YES。きっと犯人は階段を使ったのね」

「当日いたエレベーターの保守係3人の犯罪歴から調べてみようかしら」


早くも席を立つヲタッキーズ。今回は警察モノになりそうw


「待てょ。どうして住人の犯罪歴を調べないんだ?」

「住人?どうして?」

「住人が犯人の方が、話としては断然面白い。この街で誰が隣に住んでいるか知ってるか?お隣のヲタクが連続スーパーヒロイン殺しでないと誰が言える?」


メイド達のリアクションは薄いw


「確かにマンションの住人は、誰も知らなかったけど…」

「801号室のヲタクは?」

「誰?」


僕は、鋭い観察眼を披露スル。


「現場で見かけたモノ静かなヲタクだ。影が薄く、目立たない。君達、華やかなメイドにとは、別世界の住人だ。彼にとって、若く美しい妖精は、死ぬまで手の届かない存在。キラキラ輝くアキバの妖精。ふと軽い気持ちから、彼女の出待ちを始める。彼女は、いつなら1人になる?次第に気持ちはエスカレートして、自分を抑えられなくなる。ある日、彼は監視カメラを避け、階段を使って地下の洗濯室に降り、物陰に身を潜め、エインを待つ。エインが洗濯室に入って来るや襲いかかり…フト気がつくと、彼女はうつろな目をして、横たわっている。こんなつもりじゃなかった。ただ、自分に気がついて欲しかっただけだ。その時、頬に乾燥機の熱を感じる。うつろな目をした彼女を乾燥機に入れた時、幸運にもポケットにコインを見つけるんだ。500円玉。それを投入し、乾燥機のスイッチを入れて時間を稼ぐ。その後、彼はどうしたか…姿を消したのさ」


フト気づくと…誰もいないwおーい!


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したらヤタラと居心地良くなり、僕を含む常連が沈殿して困っているw


しかも…今宵はカレーの匂いがスル。


「このカレーの匂いは…まさかロシャ?」

「YES」

「で、御当人は?」

御屋敷(オモテ)で飲んでます」


僕の推しミユリさんは変身しない時はココのメイド長だが、今はウラの"潜り酒場"のカウンターで…僕に絡まれてる←


「お片付けはミユリさん任せ?」

「私は構わないのです。メイドですから」

「でも、ココのオーナーは僕だぞ。この刺激が強いだけの悪趣味な加齢(カレー)臭は…」

「テリィ様、お腹は空いてませんか?まだいっぱい残っていますけど」

「運良くマチガイダのヒートアップライスを食べて来た」

「しかし、今回は海外ドラマの警察モノみたいな展開ですね」


その時…


「おかえりなさいませ、今カレ様。まさか、ララルのTO(トップヲタク)がpoorなサラリーマンとはな」

「社長さんのカレー、食べてみたけど美味しかったょ」

「ココは社員食堂か?あっはっは」


ロシャだ。No.2のつぼみんの肩を抱きオモテから御帰宅。


「マハラジャ。今ね、私が池袋でメイドをしてた頃のお話をしてたの」

「池袋でメイド?アレはメイドとは言えない。ソレにララルは最下層カーストのベリーダンサー。ヲレは太客でマハラジャ待遇。しょせん2人は…」

「あ、待って。マハラジャ、万世橋(アキバポリス)から電話だわ…えぇ逝くわ。とにかく、すぐ逝くから!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)検視(れいあんしつ)は地下にアル。


「メイドさん達、コレを上に着て。テリィたんも」


解剖された妖精を前に青いスモッグを着る。シュールだw


「ウソだろ?事件の解決までは、食事をとるのも遺体の横だと覚悟してたょ。ほら、サンドイッチとか食べながら、ガンダムネタのジョークとか飛ばしてさ」

「…明らかに、頭部に受けた外傷が死亡の引き金。何度も殴られた結果、大脳に深刻な脳内出血を起こしてるわ」

「ルイナ。ゴーグルが傷だらけでよく見えないんだけど」


僕は、モニターに向かって文句を逝う。実際の執刀は監察医だけど、解剖の指揮はSATO司令部からルイナがリモート。


妖精の解剖は警察の手に余るので。


「テリィたん、仕方ないでしょ。警察はSATOと違って予算の縛りがアル…漂白剤のボトルで頭を殴られ、前に倒れて、こめかみを強打した。そのせいで出血したのが死因だと思うわ」

「なるほど」

「でね。あとテリィたん好みの話題だけど、彼女は死亡する少し前に誰かとセックスしてる」


モニターの中からルイナの探るような視線。


「妖精がセックス?殺される前に?」

「直前カモ。お食事の前とか…時間の特定は無理だけど」

「レイプかしら?」


ムーンライトセレナーダーが割り込む。


「ムーンライトセレナーダー、ソレが膣の裂傷もないし、精液も見当たらナイの」

「じゃどうしてセックスしたとわかるの?」

「殺精子剤の痕跡があった」


モニター画面の中でルイナは肩をスボめる。


「断定は出来ないけど…合意の上だわ、恐らく」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)のギャレー。


煮詰まったパーコレーターのコーヒーの匂い。

紙コップ片手にヲタッキーズのミーティングw


「膣に裂傷がナイとなると性犯罪な線はナイ。犯人は、性犯罪者ではなさそうね」

「DNAが取れなかったンでしょ?犯人は、コンドームをつけてた可能性もあるょな」

「でも、テリィたん。そんな奴が何で洗濯室で妖精を殺すの?ソレも地下の洗濯室ょ?」


エアリのナイスな突っ込みw


「いや。ココは洗濯室だからこそ殺した、と考えるべきだ(何で?)」

「(その場の言い逃れ?)で、エアリ。被害者のスマホは見つかったの?」

万世橋(アキバポリス)からスマホ会社に令状(おふだ)を出してもらいましたが、スマホ自体は未だ見つかりません。通話記録は入手しました」


みんなで覗き込む。ミユリさんの良き香り…


「スマホの電波は、現場と同じ中継局に飛んでます」

「助けが呼べないように犯人が奪って、犯行後に捨てたのカモ。良く現場近くのゴミ箱とか排水溝から見つかるわ。海外ドラマだと」

「スマホが出て来ると色々話が早いンだがな…あれ?この通話は何だろ?何度も同じ番号からの着信がアル」


僕は、リストの中の赤線を指差す。


「スマホ会社の方で調べてくれたけど、プリペイド携帯ナンだって。でも、数週間前から着信が途絶えてる」

「ソレ以前に、エインの方から、その番号に発信スルのを止めてる。相手を避けてたとなると…1ヶ月前に別れた元カレの…あれ?誰だっけ?」

「ブレンです、テリィ様。先ず元カレから探しましょう」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の取調室。


「ブレンさん?ヲタッキーズのムーンライトセレナーダーです。本日、来ていただいた理由はお分かりですか?」

「元カノのエインのコトで聞きたいコトがあると職場に警官の方が見えて」

「やはり、エインさんとはおつきあいされてたんですね?」


ブレンは"しまった"と逝う顔をスルw


「えぇ。まぁ1ヶ月前までは」

「何があったのかしら?」

「別に。秋葉原でメイドと出逢って別れた。ソレだけです」

「別れ話はどちらから?」


焦ったくて横から質問スル僕。


「お、お互い…どちらからともなく。ってかアンタ、誰?」

「テリィ様。私の御主人様」

「え。だから、誰?」


生意気な奴だ。天誅のICレコーダーをon!


"…やあエイン。僕だ。電話をくれ。ピー…頼むょエイン。無視はナイだろ?電話を寄越せょピー…話がしたい!他の男って誰だ?お前は誰とでも寝るアバズレだ!ピー…"


「まだまだアルぞ!」

「ド、ド、ドコモの格安スマホじゃなかった、何処でソレを?」

「携帯電話会社だ。秘めゴトにプリペイド携帯を使う慎重さには好感が持てる。でも、ソレをカードで買うな!簡単に追跡されて、直ぐに身元が割れて、プライバシーもあっという間にデジタル丸裸…」


意外や、ブレンはキョトンとしている。ただ、僕には見切りをつけたようだ。やれやれ。"悪い警官"役も疲れるょ←


「ムーンライトセレナーダー。僕は、別に何かを隠そうとしたワケじゃない」

「わかるわ。でも、なぜウソをついたの?」

「男って…フラれるのに弱いのさ。プライドがアルからな。前にも彼女に浮気されたコトがアル。1週間もヤケ酒を飲み続けた。大して好きでもなかったのに…エインも、もし彼女にホンキなら、今頃何をしでかしたやら」


早くも"全落ち"のブレン。意外に良い奴カモ←


「でもね、ブレン。貴方は、どーしてエインが殺されたコトを知っているの?」

「共通の友人から聞きました。クロエ・リドン。エインにシッターの仕事を紹介したのも彼女です」

「では、なぜクロエは事件を知ったのかしら」

「彼女も、あのマンションでシッターをしてますから。2人は親友。そして…彼女も妖精です」


まとめに入るムーンライトセレナーダー。


「コレで最後にスルけど、事件の日、貴方は何処にいたの?」

「職場ですょ。さっき警察の人が来た段ボール工場で製造、組立をやってる。最近はラベル貼りも始め、時給もUPした。真っ当に働いてる。監視カメラや勤務記録を確認してください。事件とは関係ねぇ。ソレでも、俺は逮捕されますか?」

「いいえ、もう結構ょ。ただし、アキバの街を出ないで。OK?」

「わかりました。ありがとう、ムーンライトセレナーダー!」


なぜだかミユリさんだけ感謝されて、取調べは終了←


「でも、ミユリさん。アキバを出るなナンて逝う法的な根拠はアルの?」

「ありません。私達、警察じゃないし」

「スゲぇ。ソンなウソ、平気で逝っちゃうんだ?」

「えぇ。まぁ」←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


東秋葉原。夕暮れの和泉パーク。


「そろそろシングルマザーのメイド達が、子供達のピックアップに集まる時間だ。クロエも来るカモしれない…ちょっち懐かしいな」

「テリィ様、シングルマザーの生態にお詳しいのね」←

「ずいぶん昔の思い出さ。元推しにはシングルマザーもいたからね。僕は、良い主夫だった…」

「テリィ様がイクメン?とても信じられません」

「だろーな。でも、意外に楽しんでたょ。大勢の寂しいシングルマザーのメイド達に囲まれて…あわわっ!」

「…素敵なお話ですね。テリィ様、御結婚は?」

「沈黙をもって答えょう。ミユリさんは?」

「メイドは、結婚には慎重にならざるを得ません。特に、スーパーヒロインに覚醒してからは…あ。赤いベスト!」


ミユリさんの視線の先に子供をピックアップに来たメイド。


「ベッカ、戻って!そっち行っちゃダメでしょ!」

「クロエさん?ヲタッキーズのムーンライトセレナーダーです。コチラは、私のTO(トップヲタク)のテリィ様。エインのコトでお話しを」

「今ですか?」

「お時間は取らせません」

「それじゃ…マニー、ちょっとベッカを見ててもらっても良いかしら?」


シングルマザー同士なのか、気安く娘を預ける。


「貴女がエインにシッターの仕事を紹介したそうですね」

「ブレンに聞いたのね?エインは、秋葉原で仕事がなくて困っていました。シッター募集の話を聞いて、紹介したの」

「エインと最後に会ったのは?」

「え。」


ナゼが絶句して考え込むクロエ。


「ねぇ辛いとは思うけど、必要な情報なの」

「…私達、シッターの仕事前に待ち合わせをして、良くお茶していました」

「じゃ事件の日も?」

「YES」


ミユリさんの得意な"誘導尋問"。


「その時、何か変わった様子は?…例えば怒ってたとか」

「何のコトかしら?」

「エインは、恐らく最近新しい恋人が出来たょね?誰?」


傍らの僕は驚き、思わずミユリさん凝視←


「…実は、彼女は時々お仕事を延長してた」

「モェラの家でか?!」

「YES…ってかアンタ誰?」


面白くなったトコロで摘み出される僕w


「ムーンライトセレナーダー。私とエインは、前は良く一緒に帰ってたの。でも、ココ数ヶ月、彼女はシッターの延長が増えた」

「シッターの延長?」

「ダメ。やっぱり、私からこんなコト、言えないわ。あの人は既婚者だし」

「ソレ、エイン本人から聞いたの?」


ココでクロエも"全落ち"だw


「直接は聞いてナイわ。ただ、エインは奥さんが戻らない夜に限って、遅くまでマンションに残ってた」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


東秋葉原。タワマン1Fのホワイエ。


「ミユリさん。だから、あの時モェラを締め上げるべきだったンだょ」

「テリィ様。先ず自分で調べたいと申し上げたでしょ?」

「つまり、ミユリさんも彼を疑ってるワケだ」


やっぱり僕とミユリさんは以心伝心←


「今度モェラも呼んで僕達と一緒にポーカーやらないか?」

「いいえ。売れっ子SF作家と対戦するには、メイドは安月給に過ぎます。掛け金がお高いから」

「女子ならストリップポーカーと逝う手もアルけど」

「ランジェリーまでなら」←


エレベーターが開き、電話しつつ旦那が登場。


「…違う!"時空トンネル"の英訳は"space time tunnel"だ。ただの"time tunnel"じゃない。だから"失われた聖櫃"は、超古代の"リアルの裂け目"だったんだ。そもそも、超エネルギーの異次元インピーダンスのデータを見ると…わかった。改めて電話スル」


僕のSF作家仲間のモェラの旦那は、スタートアップCEO。

人工的に"リアルの裂け目"を作る会社を起業しているw


「どうも先日は。ヲタッキーズです」

「わ!ムーンライトセレナーダー?しかも、新コスプレだ!写メOK?動画は?」

「最後にエインに会ったのはいつですか?」


ホワイエを横切りながらの事情聴取。


「事件の日です。あぁしかし何で、みなさん同じ質問を?」

「エインさんに新恋人がいたとの情報を得まして」

「ブレン君ですね?」

「いいえ。他に誰か思い当たる方は?」


モェラの旦那は動揺スルw


「ま、まさか私を疑っているのですか?」

「御名答だっ!」

「あり得ない!…ってかアンタ誰?」←


愚問だ。僕は真実を希求←


「じゃ何で彼女にいつも延長を頼んだんだ?」

「え。娘に美味しい夕食の準備をしてもらおうと」

「エインが準備を手伝ったのは、奥さんのモェラがいない夜に限ってじゃないか!」

「そりゃそーですょ。メシが無いんだから」


あれ?もっともだwところが…


「うーんギブアップ!私は、確かに浮気をしていた!」

「え。思いがけないモノローグ」

「浮気したのは事実だ!私は、妻のモェラを裏切った!」


やった!全落ちだ!僕にも出来た全落ち?


「で、洗濯室では何が?」

「はい?」

「妖精を殺したろ?」

「確かに不倫はしたが、相手は妖精じゃないし、殺してもいない。そもそも、イク時にはベッドから浮くとか、羽根が七色に光るとか、そーゆー趣味は私には無いンだ」


え。妖精ってそーなの?すげぇ!


「じゃ不倫相手は…」

「スタートアップの共同経営者だ。彼女は、派遣だけどソルボンヌの学位を持ってる。僕は、頭の悪い女は嫌いじゃナイが、好きじゃナイ」←

「確かに、妖精は昔から地球にいる割に進化がナイのは頭がお花畑だから、という学説がアル」

「僕は、妻のモェラがホテルで夜更かしスル日にはエインに電話してた。でも、ソレはシッターを延長してもらうため。僕のスマホを調べてもらえばわかります。通話記録も提出しますが」


まぁ全落ちと逝えば全落ちだ。僕は、ミユリさんに目配せ。


「取調べは以上だ。ただし、街からは出るな」


第3章 5秒の謎


「で、テリィたん。お友達の旦那さんはどーだった?」

「不倫してた。でも、エインとじゃない。相手の名前は…(メモにしてエアリに渡す)全く永遠の誓いなんてモノは、もうこの世には存在しないんだな」

「世の中、仮面夫婦ばかりね」


SATO司令部で溜め息をつく僕。

ヲタッキーズのミーティング中w


「はい。井戸端会議はそこまで。ブレンのアリバイはどーなったかしら?エアリ?」

「成立です、姉様。構内カメラとタイムカードで確認」

「残るは、不倫夫の相手と見つからないスマホ?」


テキパキ整理するミユリさん。優秀だ。


「姉様、朗報も」

「マリレ?私のマハラジャが池袋に帰ったとか?」

「ひどい八つ当たりだな。行き詰まると当たり散らすのは良くないクセだ」


まぁ奴が秋葉原からいなくなるのは良いコトだが…


「姉様、他にアリバイが崩れた人間がいますょ」

「まぁ誰かしら?」

「誰だと思います?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


現場と同じタワマンにあるモェラ宅を訪問。


「モェラ。事件の日、ホテルにはいなかったンだってな。どうして嘘ナンかつくんだ。よりによって、この僕に」

「お嬢さんの学校に問い合わせました。エインが迎えに来ないので、モェラさんのホテルに電話したトコロ、やはり連絡が取れなかったとか」

「な、何の話ょ!」


追い詰められるモェラ。

目が狂気を帯びて来る。


「あの日の行動について、ウソをつきましたね?貴女は、ホテルで缶詰めだと言っていた」

「モェラ。君はホテルにいなかった。ホテルのフロントの目を盗んでタワマンの洗濯室に逝くコトは可能だ」

「私がエインを殺したとでも?!待って誤解ょ!テリィたん、恥をしのんで言うけど、ウチの旦那は浮気をしてるの!どう?驚いた?」

「全然。もう知ってたょ」


茫然となるモェラ。哀れだが何となく愉快←


「わ、私はずっと知らなかった…」

「逆に知ったのはいつですか?」

「数週間前、エインから聞いたの」

「エインが不倫のコトを?」

「ずっと黙っているのは辛かったみたい。私に話してホッとしていたわ」

「そ、そーだろーな」


何となくシドロモドロになる僕(達w)。

さらなる衝撃の驚きは、この後で…


「旦那は、エインに口止め料まで払っていたわ」

「それは初耳だ(わ)!」

「可哀想にエインは板挟みだったの…」


因みに"初耳"のくだりは僕とミユリさんは異口同音←


「御主人様の不倫を隠すために、自ら不倫の片棒を担がされたワケか!ある意味、メイドの鏡カモ」

「最悪でしょ(女子2名 異口同音w)!」

「でも、何で貴女はホテルにいたとウソをついたの?ホントは何処にいたの?」


冷静なミユリさんの突っ込み。だが、モェラは動じないw


「私は、あの男の不倫を知るや、直ちに腕利きの離婚弁護士を雇い、夫に気づかれないよう、極秘裏に離婚の手続きに着手した」


僕とムーンライトセレナーダーは思わズ顔を見合わせるw


「人生ウソばかりのテリィたんはともかく、止むを得ずムーンライトセレナーダーにまでウソをついたのは、事件当日、私は離婚弁護士の事務所に行っていたから。極秘裏に財産分与の条件を詰め切り、電撃的に離婚訴訟を提訴、法廷で丸裸にしてやるつもりよっ!」


モェラ。君は今、世界中の不倫男を敵に回したぞ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


モェラの赤い気炎に圧倒され、ナゼだかミユリさんとも気まずくなって別れて、SATO司令部のルイナのラボを訪れる。


「ただいまー。ルイナ、何してるの?」

「あ、テリィたん。別に」

「夏コミで買った"薄くて高い本"を読んでたとか?」


ルイナは、史上最年少で首相官邸アドバイザーになった超がつく天才。モニターにも難しい数式がビッシリ並んでいるw


だが、サイドの小さい画面に…


「例の監視映像を観てたの。第一そんなチャットしたコトないわ」

「チャットだなんて誰も言ってナイ。その画像、警察の大事な証拠品だぞ。ハッキングしちゃマズいな」

「テリィたんこそ、ミユリ姉様を"ハッキング"してるのは新しいSF小説のネタを探すためナンでしょ?」

「調査だょリサーチだ」


2人で画像を見る。


「エインって可愛い。モェラは、こんなキレイな子を自分の家に入れちゃダメょ。旦那が浮気するハズだわ」

「でも、旦那の不倫相手は、シッターじゃなくて共同経営者だょ?で、エインのスマホが未だに行方不明だ。指紋がついてるかもしれない。何処にアルのかな。監視カメラに映ってナイか?」

「映ってナイわ。どこかしら」


2人で画像を凝視w


「最初にエレベーターを降りる時はスマホが映ってるのに、最後の画面では見当たらない」

「テリィたんのお友達のモェラさんの部屋に置いてきたんじゃないの?」

万世橋(アキバポリス)の鑑識が徹底的に調べたけど、無かったらしいょ」

「何かヘンね…」


その時、ルイナが小さな声で…叫ぶ。


「あ!」

「え。何?」

「5秒のズレがあるわ」


え。何のズレ?


「どーゆーコト?」

「エインは、洗濯と乾燥のため1日に2回、エレベーターに乗るけど…いつも2回目の方が5秒長く乗ってる。同じ12階と地下の行き来なのに、どうして差が出るのかしら?」

「ふーん」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「テリィ様、離して!痛いわ」


僕に腕を掴まれ声を上げるムーンライトセレナーダー…もちろん、コレはウソ。彼女お得意の"か弱い女子ゴッコ"だ。


「何がなさりたいの、テリィ様?でも、何か乱暴にされると…萌える」←

「そっか32秒だ。地下から12階までエレベーターで昇ると32秒かかる」

「素敵。直ちに全人類に報告しなきゃ」


僕は、ムーンライトセレナーダーとタワマンのエレベーターに乗ってる。ストップウォッチ片手にもう何往復したやらw


「ところが、いつもエインは地下にある洗濯室からの帰り道には37秒かかってる」

「なぜ5秒余計にかかってるのかしら?」

「ソレは…帰り道に降りるのは12階じゃないからだ…はい、37秒。この階でエレベーターを降りてみよう」


ソコは15階。エレベーターホールに面して4つのドア。


「こんにちわ!国営放送の受信料支払い拒否のステッカー、貼らせてもらえませんか?」

「何?国営放送をぶっ潰すの人か…おおっ!」

「はじめまして。ムーンライトセレナーダーです。受信料とは無関係ですが、お話しを…」


1つ目のドアをノックしたらヨボヨボの後期高齢者だw

寝巻きだから寝たきりでは無さそうだが、頑固そう…


「おおっ。その目の醒めるような水着のお姉さんは国営放送の人?余生の分を全額、前払いスル!待っとれ…」


勝手にヨタヨタと奥の方へ受信料?を取りに逝く。いくら払うつもりかな。僕は、ムーンライトセレナーダーに耳打ち。


「彼には無理だょ」

「受信料の支払いが、ですか?」

「セックスだょ。エインは、いつも15階の誰かとセックスを…やぁ。おかえりなさい…5万円?微妙な額だな」


頑固そうな後期高齢者は、僕にピン札を押しつけるw


「アンタ、次もこの子で頼むょ。わしゃ仮装した女(コスプレ)に弱いンでな。じゃチェンジはナシで」

「ゴメン、おじいちゃん。介護デリヘルじゃないんだ。このフロアに…もぉいいや。次、当たるから」

「ワシも当てたい!性欲ならあるぞ。後期高齢者のテクをバカにするな。がっかりさせないぞ!」


ヨロヨロとムーンライトセレナーダーを指差す先でドアを閉める。

チラ見するとミユリさんは傍らで"5万円か"と気落ちした様子w


気を取り直して次、逝こう。


「こんにちは!宗教について考えてみませんか?昨夜、宇宙人と会ったのdeathが…」


次の瞬間、大爆発と共にドアは吹っ飛び、凄まじい爆煙の中で短機関銃の1連射、向かいの壁に"Z"字に弾痕を刻む!


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の取調室。


「ムーンライトセレナーダーの"雷キネシス"を食らったんだって?彼女を怒らせちゃダメょ…ところで、なぜエインのスマホがアンタの部屋にあったの?」

「仕事の合間に昼寝に来て落としたのだろう」

「その昼寝をしてるシッターの横で、アンタはロケットランチャーを磨いてたけど、彼女を見てないと言うのね?」


何処か投げ槍なラギィ警部の取調べ。対する男は…真っ黒焦げだが、アジアンな顔つきで明らかにプロの目をしているw


「あのね。アンタのお部屋からは使い捨てたコンドームも見つかった。ウチの鑑識が分析中だけど、もしも、エインと…」

「俺は、妖精を殺していない」

「…射精しただけだ」


そうウッカリつぶやいた僕を、隣室かつマジックミラー越しなのにラギィ警部がギロリと睨む。あ、傍のミユリさんもw


「思ったより秋葉原の警察は優秀なようだ。OK。確かにセックスはしたが、部屋を出た時、妖精は未だ生きていた」

「だから、後を追って洗濯室で殺した?」

「ソコが違う。コレから仕事スル彼女を私が殺すハズがナイ」


ラギィ警部は、いつになく投げ槍だ。


「アンタ、妖精のハンドラー?じゃエインは、アンタの部屋を何時に出たの?」

「1時前だ。いつも1時には、シッター仲間のクロエが娘と帰って来る。その10分前ぐらいだったと思う」

「アンタ、妖精とは毎日セックスしてるの?」


瞬間、言葉に詰まった男だが、己の主張を貫くw


「犯行時刻、俺は部屋にいた。クロエに聞け」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ラギィ。お取り込み中みたいね。でも、私の依頼人の不利益になるような質問は困るわ」

「あら。誰かと思ったら悪徳弁護士のラルカ・ヴァン。そろそろ来る頃だと思ってた。最近は、半島の北半分からお仕事をもらってルンだって?ならず者国家の顧問弁護士に成り下がった御気分は?」

「お陰でお給料はアンタの10倍。ゆーコト無しょ。じゃ取り調べは、ココまでね」


取調室に女弁護士が乱入して客引きみたいに男の手を引く。


「アンタ、話すなら今の内ょ。生きて誰かと話をスルのは、多分私が最後。も少し何か歌ったら?」

「ヤメて、ラギィ。何の証拠も無いクセに」

「証拠は、その男」

「さよなら、ラギィ。またね」


男の手を引いて、取調室を出て逝く。

その男の姿を再び見る者はいないw


第4章 妖精の罠


「姉様。もしクロエが1時に戻ったとすれば、あの男にはエインを殺せませんね」

「そーね。クロエに確認すべきかしら」

「その必要はナイょムーンライトセレナーダー」


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。僕はモニターを指差す。


「監視映像の時刻表示さ。被害者エインが男の部屋を出たのは12時45分。カメラには48分にエレベーターで地下の洗濯室に降りて逝くエインが写っている」

「エインの死亡は、その10分後ょ。テリィたん、何を調べたい?」

「クロエの動きだ。1時に戻ったかどうかを知りたい」


マリレが画像をサーチしてくれる。


「いたわ、クロエょ。12時59分。エレベーターに乗ってるけど…待って。子供は何処?」

「子供?」

「クロエが子守してたモェラの娘」


あの地下アイドルになれそうな美少女か。


「確かにいないな。誰かに預けたんじゃないか?」

「でも、あの男はクロエと娘が一緒に戻ると言ってたわ」

「そう見せかけて…実は、クロエ自身がエインの行動を監視してたのかw」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


クロエの実家は、総武線の新小岩にアル。老母が応対。


「クロエ?昼間は秋葉原ですが」

「警察(に近い)の者です。お部屋を見せてもらえます?」

「ど、どうぞ」


メイド3人従えた僕に気圧されたか、部屋を見せてくれる。


「テリィ様。この写真、エインの顔が塗り潰されてます」

「まぁ!エインちゃんとは高校時代から大の仲良しだったのに…何てコトを!」

「クロエさんは、今日は?」

「シッターが昼からなので、1時間ほど前に出かけて行きました。あの、クロエは何か事件に巻き込まれてるのでしょうか?」

「いいえ。事件を巻き起こしているのです」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


またしても、ココ1番と逝うトコロで現れては、勝手に話をややこしくスル、ミユリさんの元カレ、ロシャの登場だw


「ララル!現場はココか?」

「マハラジャ!なぜココに?」

「警察無線をモニターしてた。既に市長には話を通してアル。関係書類にはサインもした。さぁ踏み込もう!」


僕とメイド3人が総武線に揺られてアキバに戻ると、モェラのタワマンを万世橋(アキバポリス)のパトカーがビッシリ取り囲んでいるw


「ラギィ!何でこんな大捕物にスルんだ?クロエを刺激スルだけだぞ!」

「ソレが、ミユリの元カレが市長に一声かけたら、こんな大相撲になっちゃって…もう私の手にも負えないのょ!さっきナンか、せっかく捕まえた半島のハンドラーには逃げられるし、このヤマはもうウンザリだわ」

「え。あの妖精とセックスしてた男はスパイの管理官(ハンドラー)だったの?何処の?半島?…喜び組?妖精の?」


何やらスゴい話になって来たょ。


「ララル!ドアマンによれば、既に妖精はモェラの娘を連れて、部屋に戻ってるらしい。従って、ベッカの命が危ない(何で?)。応援を待つ時間はナイ。突入だ」

「でも、相手は妖精だし、突入はヲタッキーズだけですょマハラジャ」

「ヲレもー。何が起きてもララル達を訴える権利は放棄したし、死んでも良いと言う宣誓書にサインもした。コレでもダメなら、も1度、市長から万世橋警察署長に…」

「わかりました!でも、口や手を出さないコト。足も…」

「モチロンだ!」

「あと、テリィ様の了解をとって」


え。最後の最後に嫌な仕事が回って来るw


「テリィたん。ウチは第3新東京電力の宇宙発電プロジェクトに国家予算規模の寄付を行う用意がアル」

「え。要らない、と言いたいトコロだけど、ありがと。ところで、万一不慮の事故で命を落としても?」

「本望だっ!」


僕は、ミユリさんの耳元でささやく。


「ムーンライトセレナーダー。背中からロシャを撃て」


凄まじい顔で睨まれるw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


12Fでエレベーターが開き、ヲタッキーズが飛び出す。


「突入。逝くわょ!」


ムーンライトセレナーダーがドアを蹴破る!


万世橋警察署(アキバP.D.)万世橋警察署(アキバP.D.)!」

「クリア!」「クリア!」「クリア!」

「…コッチょ助けてぇ…」


奥のキッチンから意外に野太い声wやや?モェラも一緒w


「大丈夫か、美少女?!あと余り血のつながりを感じさせないけどモェラも平気?で、クロエは?」

「いないわ!私と娘だけょ。クロエは、ドアマンから奪った合鍵で勝手に入って来た。私達母娘を縛り上げ、自分は地下の洗濯室へ」

「洗濯室?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


急いで地下に降りると、既に野次馬で黒ウマの人ダカリだw


「ヲタッキーズです!道を開けてくださーい!」

「うわ。モノホンのムーンライトセレナーダーだ!しかも、新コスプレだょ!あの…動画OK?」

「モチロンです…で、妖精シッターは?」


タワマンの全住人が野次馬化し地下に押しかけてるw

にこやかに動画に応じるムーンライトセレナーダー。


「妖精シッターは、洗濯室にいるわ!」

「わかりました。後は任せてください。エアリ、マリレ!住民の方々の避難誘導をお願い!」

「ハイ、みなさんココまでょ。部屋に戻ってください!

「え。せっかく寝巻きを着替えて来たのにwせめて自撮りだけでもさせてくれ!」


ゾロゾロ引き上げる住民の中には、902号室のロゼン婆さんや15Fの絶倫?ジイさんの姿も見える。

避難誘導しつつ、気軽にツーショットに応じるエアリとマリレ。フラッシュとザワメキが遠ざかる。


「テリィ様。如何いたしましょう?」

「殺さず保護。全員で生きてココを出る」

了解(ROG)


ミユリさんは、僕の前でクルリと1回転。


「新コスプレ、どーですか?」

「最高さ」

「ホント?良かった」


洗濯室に入って逝くと、フロアにペタンとお尻をつけてM字開脚のクロエ。

悲しげな眼差しを向ける。その右手には、対スーパーヒロイン用の音波銃。


「ムーンライトセレナーダー、来ないで!向こうに行って!」

「ソレは無理だ。おや?ケガをしているね?」

「ソレがどーしたの…ってかアンタ、誰?」


僕は、地下室の天井を仰ぐ。ミユリさんと入れ替わるw


「ねぇクロエ。貴女はケガをしてる。手当てをしなきゃ」

「そう言って人間は、妖精を欺くの!」

「違うわ。ソレは、人間の"男"だけょ」←


納得して、僕を冷たい目で見るクロエ。何でだw


「クロエ、私を見て。私は、貴女を撃ったりしない…」

「エインは、イアムとデキてたの!」

「イアム?貴女とエインのハンドラーだった男?」


クロエは、うなずく。


「私とエインは、イアムにセックスで操られる妖精だった。"時空トンネル"を開発中のスタートアップCEOに近づき、ハニートラップならぬ"フェアリートラップ"を仕掛けて、企業機密を盗み出すのが任務」

「モェラの旦那がターゲット?でも、奴には他に不倫相手が…」

「え。二股だったの?」


三股だw


「ところが、任務中もエインは、イアムと寝てた。イアムは私を愛してると言ってた。私のために、半島にいる奥さんと別れると言ってた」


え。イアムはイアムで既婚なのか?コッチも不倫w


「人間には、そーゆー男が"たくさん"いるわ。ウソをつかれて、さぞ辛いでしょうね。事実を知った時、どんなにショックだったコトか」

「ムーンライトセレナーダー。ベッカはイアムとの間に出来た娘なの」←

「ウソだろ!」


思わズ、僕が口を挟むと…


「テリィ様は黙ってて!」

「…ムーンライトセレナーダー、私は話をしたかっただけ。ソレだけなの。貴方(イアム)の(セックスのw)相手は私だけだと、ソレだけを言いたかったの」

「良くわかる。良くわかるわ。エインのコトは事故だったのね?」


出たょミユリさんの"誘導尋問"だ。僕も何度も…


「あの日、ベッカを和泉パークに残して、確かめに戻った。だって不安だったの。でも、エインが羽根を光らせてイク時のイアムの目を見て確信したわ。だから、イアムがシャワーを浴びに行ったのを見届けてから、私は地下に向かったエインと話をした」

「殺す気はなかったのね」←

「だって、エインは親友ょ。なのに、エインは何もわかってくれなかった。だから、後ろを向いた時に漂白剤で殴った。そしたら、エインは床に倒れて…スゴく怖くなって、どうしていいのか分からなくなって、乾燥機の中に隠した。ホントに腹が立ったの。どーしても、許せなかったの」


ミユリさんは、泣き崩れたクロエに近づき、右手を重ね、自分の胸元に音波銃を向ける。クロエは激しく首を横に振る。


「じゃ音波銃は下に置いて。手当てをしなきゃ。助けてあげるわ」

「私なんてバカなコトを」

「大丈夫。もう大丈夫だから」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕達が、クロエを従えて地上に出ると警官隊や詰め掛けた野次馬からは拍手が湧きそうになったが、僕が必死に抑える。


動画を撮るのはヤメなかったけどねw


「終わってみれば、誰もケガせズ、命も落とさズ、解決出来た。ところで、さっきのミユリさんのお芝居。グッと来たな。見事な"誘導尋問"だったね」

「テリィ様、私は"誘導"ナンかしていません。悪いのは、みんな"男"。中でも、リアルの無責任なクズ野郎は許せません」

「イアムを許さない連中は他にもいる。偵察総局の掟は厳しい。とても、逃げ切れるモンじゃない。今頃は、恐らく消されてるさ…ところで、ミユリさんの元カレは?!」


その瞬間、ギョッとなるムーンライトセレナーダーw


「あ!まさか今も12Fの掃除道具入れに隠れたママ?!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


「"愛に破れた記憶が君を苦しめる"か。ララルの今カレ、割と文学してるな…で、犯人は捕まったのかい?」

「はい、マハラジャ。今頃は万世橋(アキバポリス)の留置所です」

「で、ララルの予想は当たったのかな?」


メイド長は、カウンターの中で小首を傾げる。


「いいえ。大ハズレだったカモ」

「おやおや。ララルが見破れないほどの事件だったとは」

「時に恐怖は人を無力にし、その心を挫きます。マハラジャもお気をつけて。ビジネスチャンスを探す内に、アキバに来た目的を見失わないで」


ロシャは、破顔一笑。


「やれやれ。ララルも秋葉原に来て"説教するメイド"になったのだな」

「タマには、街にビックリさせられるのも良いモノですょ」

「ララルには、いつもびっくりしてるさ」

「マハラジャ、元気出して。今宵はメイドの奢りです」


ロシャはスマホの小さな画面の中で踊り狂う、金髪のベリーダンサーの動画を眩しそうに眺めて…僕にグラスを上げる。



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"妖精殺し"をテーマに、タワマン地下で惨殺される妖精、タワマンに住む陽気な住人達、主人公のSF作家仲間、ヒロインの池袋時代の太客、諜報機関のハンドラーと顧問弁護士、妖精殺しを追う超天才やヲタッキーズ、敏腕警部などが登場しました。


さらに、今回はヒロインの池袋時代の元カレとの絡み、時空トンネルの開発状況などもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、4回目のファイザーワクチン接種後の秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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