いるよ!
こちらは百物語五十五話になります。
山ン本怪談百物語↓
https://ncode.syosetu.com/s8993f/
感想やご意見もお待ちしております!
私がまだ幼稚園に通っていたころの話です。
私は夜1人でトイレに行くことができませんでした。
「お兄ちゃん、一緒について来て…」
夜中にトイレへ行きたくなると、小学生の兄を無理矢理起こしてトイレに付き合ってもらっていました。
「お兄ちゃんいる?」
「いるよ!」
このやり取りがうちの家の深夜名物みたいなものになっていました。
ある日の夜、私はいつもと同じように兄を起こすと、眠そうな兄の手を引っ張りながらトイレへ向かいました。
「お兄ちゃんいる?」
「………」
兄から返事がありません。
さらに数秒後…
「お兄ちゃんいる?」
「いるよ!」
兄がそう答えました。いつものように元気な声で…
そして数分後…
「ごめんね、お兄ちゃん」
私はトイレを済ませると、すぐに外で待機している兄を探しました。
しかし、兄の姿はどこにもありません。
慌てて部屋へ戻ってみると、兄がベッドの上でいびきをかきながら眠っていました。
「先に戻ってたんだ…」
私はそう考えると、すぐに自分のベッドへ戻りました。
翌朝…
私は兄に昨日のことを問い詰めました。
「なんで最後まで待っててくれなかったの?」
兄はこう言いました。
「だって眠かったんだもん。お前がトイレに入った瞬間、すぐベッドに戻ってそのまま寝てたんだ」
私は驚きました。
私がトイレに入った瞬間、兄は部屋のベッドへ戻っていたのです。
それじゃあ、一体誰が私の声に返事をしたのでしょうか。
あなたはわかりますか?