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45.5話『今日も姉は人を助ける』

※アーベイル視点→ノースアルト視点です。

休憩室に入っていったお姉様を見て僕はさすがだと思った。

お姉様の行動はいつも予想外だが周りの視線がこれほどまであると下がったほうがよさそうだ。



「ねえ、ノース。ここにいる人達ちょっとおかしくない?」



僕は隣にいるノースに他の人には聞こえないようにそう問いかける。



「...そのようですね。イル、何かを感じますか?」



僕はさっきから感じていた予想以上の嫉妬と軽蔑、侮蔑の目でお姉様を見ていた人達のことをもう一度よく観察するようにゆっくりと視線をずらして見ていく。



「さっきから、あの中央のあたりだけやたらと黒い魔素が見えるんだ。何かあるかもしれないね」



「ええ、でもどうしましょうか。誰かに相談...と言ってもお兄様達は...」



ノースがその続きを話そうとしたところで後ろから声がした。



「僕のこと、呼んだ?」



そう言って現れたのはルスお兄様だった。

ルスお兄様はいつもどこからともなくやってくることが多い気がするがいったいどうやって気配を消しているのだろうか。



「それが...」



僕はルスお兄様に僕が今感じている違和感を伝える。

するとまた後ろから声がした。



「それは『憎悪の水』を誰かが会場にバラまいたんだろうね。私も中央に黒い魔素が見えるよ、床付近に多いようだから床にぶちまけたんだろうね」



「エル、それはどんなものなの?」



「『憎悪の水』というものはな、簡単に言うと水のような見た目をした透明な液体が鼻から入るか触れるかすると思考が全てマイナスの憎悪や嫉妬などに向く、いわゆる洗脳に近いものだね」



「なるほどね...どうすれば、いいと思う?」



「まあ一番は『浄化のミスト』をばらまくことだね。聖魔法が使えればすぐにできるけれど、私は持っていないのだよ」



「困ったな...」



ルスお兄様が腕を組んで打開策を考えているとお姉様の執事がやってきて一つの瓶をエルと言われた人に渡した。



「お嬢様からお預かりいたしました『浄化の水』です。お嬢様によるとこれを風魔法で分散させれば会場にいきわたるほどの量に調節したとおっしゃっておりました」



お姉様は退席する前にしっかりと解決策を考えて実行していたようだ。

今頃休憩室で友人と楽しそうに喋っていることを考えるといつの間に執事に渡したのだろうか。



「ふぅん...準備がいいね、セレナはこうなることを予想していたのかな?」



「それもありますが私がその情報を仕入れたので...」



お姉様の執事は感情を一切感じさせない無表情でそう言った。

やはり僕は未だにお姉様のように上手くことを運べないようだ。





もっと精進しなくては、と僕は思った。
























毎年お姉様の誕生日パーティーでは問題がなぜか起こる。

何故なのだろうか、僕たち他の兄弟の時はそこまでのことは起こらないのにお姉様の時だけは必ずと言っていいほど毎年何かが起こるのだ。



「ねえ、犯人はなんで『憎悪の水』なんてまいたんだろうね?」



「...なぜでしょうか、僕には分かりません。...不思議ですね」



イルも同じことを考えているのか僕たちの部屋に沈黙が訪れた。

そしてまたイルが口を開いた。



「僕ね、たまにお姉様には未来が見える能力があるんじゃないかって思うんだよね。お姉様はいつも先回りして問題を解決するでしょ?」



「そうですね、到底僕にはできないことです。もっと見極める力を付ければ僕にもできるようになるのでしょうか?」



「そうだね、できるかもしれないし、できないかもしれないよね。うーん、難しいな...」



そう言ったきりイルは口を閉ざして考えるように窓の外を見た。




僕も同じように窓の外を見る。

窓の外には月が4つ見えた。





お姉様はいったい何者なのだろうか、いつか教えてくれるのだろうか。

たまに、お姉様がすぐにいなくなってしまいそうで怖くなることがある。



実際、お姉様はここにいるのになぜかすぐに離れて行ってしまうような気がするのだ。






僕達は自分のベッドの中に入って「おやすみなさい」とお互い言って目を閉じた。

第4章コンプリート率:25/32

総合コンプリート率:70/331

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