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31話『私の居場所』

※レファニー・ミレウドゥーシャ視点です。

私は生まれた時から一人だった。もちろん育ててくれる乳母はいたが彼女は元々口数が少なく、いつもじっとこちらを見ているだけだった。



お母様と話したのはいつが最後だっただろうか、思い出せないほど遠い昔のように思える。

最初はお母様も私にいろいろしてくれようとしていたらしい、私が自我を持つ前にそれは途絶えたので私はまったく覚えていない。



毎日のように本棚にある絵本を手に取ってページを開く。





そこには『幸せな物語』が書かれていた。



静かに微笑み主人公を見守る父親がいて、いつもニコニコと笑いかけてくれる母親がいて、優しい兄妹もいて、主人公はいつも幸せだ。そして最後には白馬に乗った王子様が主人公を見つけて結婚する、そんなありきたりなストーリーだ。




私はそんな幸せを絵にかいたような主人公に憧れた、そして私の今の現状に絶望して、幸せに生きる家族を切望した。心にぽっかりと穴が開いてその穴がだんだん広がっていく、それを感じながらも私は何もできない。





私がいつも見ているものは家に帰ってこないお父様に、そんなお父様を見て心を閉ざしてしまったお母様、いつも私のことを静かに見る乳母、心配そうな顔をしながらも話しかけてこない使用人たち。

私の世界はこの侯爵家の『城』で、それが私にとっての『全て』だった。






「レファニー、お前に婚約者ができた」



それを伝えるためだけに家に帰ってきたお父様はそう言ってからまた家を出ていった。

私は久しぶりにお父様の顔を見て数秒間固まったあとに今言われて事を復唱した。



「こんやくしゃ...私に、こんやくしゃ?」



婚約者は確か貴族同士の繋がりなどを深めるためにあるもの、だった気がする。





その一週間後に婚約者となったヨルディード・スティード様の屋敷に顔合わせをしにいくことになった。

私についてきたのは口数が少ない乳母とメイドのリリーだけだった。



馬車が屋敷に止まったので私は馬車から下りた。



目の前には姿見で見た婚約者のヨルディード・スティード様とそのお母様とお父様が笑って出迎えてくれた。初めて会った婚約者は綺麗な水色の双方をこちらにむけて人好きしそうな笑顔をしていた。



「初めまして、レファニー嬢。私はヨルディード・スティードです、これからよろしくお願いします」



「え、えと...レファニー・ミレウドゥーシャです。よろしくおねがいします」



私はそう言ってペコリとお辞儀をした。

顔を上げるとなぜか彼は口元を抑えてこちらを見ていた。



すぐに私の視線に気付くと口元から手を外してこちらに差し出してきた。



「さあ、ここで話していると貴方が風に攫われてしまいそうだ。早く中に入りましょう、ね?」



そう言って彼は私の手を引いて屋敷のサロンへと私を連れて行った。



それから無言の時間が数分が経った時に新しい来訪者の知らせが入る。

彼はその報告を聞きながら笑みを深めて、席を立った。



「レファニー嬢、申し訳ありません。少し席を外しますね」



そう言って足早に扉から出て言って数分後に2人の同い年ほどの男女を連れてきた。

私は咄嗟に立ち上がって二人を見た。



「初めまして、セレナリール・ヴァルトキアです。今回はそちらにいるヨルディード・スティードに婚約者ができたとお聞きしまして一目見に来てしまいました。突然押しかけて、申し訳ありません」



「い、いえ、私はヨルディードさまのこんやくしゃになりました、レファニー・ミレウドゥーシャです。よ、よろしくおねがいします」



かなり緊張していたが私は彼女達に挨拶をした。

彼女は私の手を優しく握って言う。



「ぜひ私のことはセレナと呼んでほしいです、私あまり、というかまったく同年代の同性の友人がいなくて...友人になっていただけると嬉しいです!」



「...え?ゆうじん?私のですか?いいのですか?」



「ぜひともお願いします。あ、私はヨルのことは恋愛対象ではないのでご安心くださいね。まったく、ええ、まったく眼中にもありませんから」



「れんあいたいしょう?えっとじゃあ私のことはレファとおよびください、あの、セレナさま?」



「レファ、様はいりませんよ?セレナで大丈夫です」




そして、後ろに立っていたドーラもレファに挨拶をした後、4人でお茶をすることになった。





カップをカチャリと置きながら私はセレナに聞く。



「えっと、ヨルディードさまとセレナはしんゆうなのですか?」



「そうですね、強いて言えば共通して守るモノが一緒だった。盟友というのが正しいかもしれません」



「めいゆう?それはなんですか?」



「盟友というのは固い約束を誓い合った友人のことで、簡単に言うと同士のようなもののことです」



「なるほど...私もセレナのめいゆうになれますか?」



「もちろんですよ、私とレファはもう大親友です」



私はそう彼女に言われた言葉に涙が出そうになった。

今まで同年代の友人もいなくて、一人で部屋にこもっていた私の世界が一気に広がった気がした。





その後のことはよく覚えていない、ただふわふわした感覚を感じながら私はその日眠りについた。

第4章コンプリート率:5/32

総合コンプリート率:50/331


追記:次回の投稿は6月13日です。

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