21.5話『最近の彼女について』
※ジュリウス視点です。
最近学園に通い始めたが何かと妹の話をよく聞く。
両親によると彼女は書斎で本を読んだ後にこっそりと屋敷を抜け出してどこかに行っているらしいのだ。
彼女の行方を確かめようと何人もの影を使ったらしいが、まったくもってそれは意味をなさなかったらしい。
彼ら曰く突然セレナが消えるんだとか、でも彼女の従者と執事はついていけているのでまだ影の教育が足りていないようだ。
私の妹のセレナは定期的に大人を驚かせる行動に出ることは、計算のうちか、それとも何も考えてないのだろうか。
たぶん彼女は両親に外出がバレているを知っているはずだ。
私の妹なんだからそれぐらい察してくれないと困るので今度聞いてみようかとも思っている。
そんなことを考えながら学園の庭をボーっと見ているとウィルが顔を覗き込んできた。
「なにしてるの?...考え事かしら?」
私はウィルの目を見ながら答える。
「まあ、そんなところかな?」
「あら、珍しいわね。もしかして、セレナちゃんのこと?」
「...お前の耳にも入っていたのか」
「当り前じゃない~。私、こう見えても情報通なのよ?」
「ああ、知ってるよ。君が情報通なのは...」
「まあ貴方の弟ちゃんには負けるけどね...」
私は自分の弟を思い浮かべてすぐにルスのことだと思い当たった。
「ルスはかなり裏社会で有名だからね、名が通ってるだけあってかなりいろんな情報が入ってくるみたいだよ」
「なるほどね~」
ウィルは一回言葉を切って本題を聞いてきた。
「...ねえ、セレナちゃんの従者と執事が元暗殺者って本当?」
聞かれると思っていたので躊躇わずに頷いた。
「そうらしいね。いつの間に暗殺者まで仲間に引き入れたんだか...我が妹ながら怖いよ」
「貴方も怖いなんて思うことがあるのね」
「まあ、半分以上は楽しみかな?怖いのはセレナが暴走することかな?」
「確かに、セレナちゃんが暴走しちゃったら大変な騒ぎになりそうだものね」
私はその言葉を聞いて、半目でウィルを見る。
こいつが言えることじゃないでしょ
という意見は心の中でおさめて平常を装って言う。
「まあ、力の限り暴走させないようにすればいいことだよ」
「...貴方ってたまに賢才なのか脳筋なのかわからない発言をするわね」
「え?なんでそう思ったの?」
「...気づいてないならいいわ。きっとセレナちゃんがいつか指摘してくれるわよ」
「セレナが?...まあいいや、ウィルのことだからどうでもいい話なんでしょ」
そう言うとウィルは口をとがらせて言う。
「まあ!失礼ね!私が話すことは大体はどうでもいい話なんかじゃないわよ!」
「それは失礼したね、ごめんごめん。すごく反省したよ」
「絶対反省してないわよね?!」
私達は2人でそんな話をしていると遠くからご令嬢の声が聞こえてきた。
「こちらのほうからウィルジュ―ネ様とジュリウス様のお声が聞こえた気がするわ!」
「きっとこちらのほうにお二人がいるのね!」
「ねえ、少し覗いてみましょうよ」
「そうね、別に減るものはないですしね!」
「どこにいらっしゃるのかしら...?」
「もう少しこちらのほうではなくて?」
彼女たちにとって小声なのかもしれないが、思いっきり高い声が響いていたので私とウィルは話を辞めて顔を見合わせて頷き合った。
今まで話していた砕けた口調に分厚い笑顔の仮面をつけて私たちは彼女達の前に出ていく。
そして私から口を開いた。
「おや?貴方たちは...先日、授業が一緒でしたよね?」
「え?....え?!まさか、本当に....ええ!覚えていてくださったのですね!嬉しいです!」
「もちろん覚えていますよ、こんなに美しいご令嬢方を忘れるはずもない...そうでしょう?」
相変わらず仮面を被るのがうまいウィルは女たらしな言葉で彼女達を褒める。
ウィルが彼女達にお世辞を言ったとたんに彼女たちは頬を赤く染めて「急用ができてしまいまして...今回はここまでに...」「すいません!そう言えば今日家の用事があるので...それでは!」とそれぞれ三者三葉に逃げるようにその場を去っていった。
学園の園庭に残された私とウィルはため息をつく。
「はぁ...セレナちゃんに会いたいわ~、あ、そうだ!週末に会いに行けばいいのよ!」
「...何を言っているのかな?この前来たばかりだろう?」
「セレナちゃんパワーが足りないわ...定期的に補充しないとね」
「君はそんなに疲れているようには見えないんだけど?」
「...私だって積極的に攻めてくる子はあまり好まないのよ?ただ、それをかわす方法が見つからなくて困っているのにいつもあの子達は寄ってくるじゃない...もう嫌になっちゃうわね」
「あからさまに顔しか見てない人は私も嫌いだよ....私達のようにその人の性格が大体わかってしまうのもどうなんだろうね」
「そうね~、大体は第一印象でわかっちゃうから...なんか、つまらないのよね~」
その時ちょうどお昼休憩が終わる10分前の鐘が鳴ったので私達は校舎へと足を進めた。
また次に来る週末に妹に会いに行こう、とジュリウスは思うのであった。
第2章コンプリート率:12/12 コンプリート!第2章は終了です。
総合コンプリート率:33/331
追記:4月20日の投稿はお休みします、ご了承ください。




