106話『王子は卒業する』
大分忙しくなくなったので、今日からは毎日投稿ができそうです!
白い床の上には綺麗にエメラルドグリーン色のカーペットが敷かれ、壁は宝石が使われた綺麗な装飾が飾られている。
この国の色は青に近い薄い緑色で、だいたいの卒業式や入学式にはエメラルドグリーン色のカーペットが敷かれることが多い。
壇上には学園の校章とティアドラ王国の国旗が飾られている。
天井は魔法によって透明なガラス張りになっていて、いつもは見えない空が映っている。
ティアドラ王国は自然を基調とした五大王国の一つなのでもちろん所々に植物が植えてあり、どの植物にも綺麗な花が満開に咲いている。
「ーこれより、卒業証書授与式を始めます。卒業生の皆さんはご起立ください」
司会者から声がかかると卒業生は全員立ち上がって成績が良かった順で壇上へと上がっていく。
元居た世界よりも証書をもらう時間は長くなく、渡されたら次の人へ変わることになっている。
それだとしても学年全員で1200人もいるのでそこまで一人に時間をかけている時間がそこまでないのだ。
卒業生はどんどん卒業証書をもらっていく、そして10分ぐらいしたらそれも終わり、生徒会代表の私が送辞を述べに壇上へと上がる。
壇上まで上がるまでは少しざわついていたが私が壇上に立つと辺りはしんと静まり返った。
私は真っ白な紙を取り出してさも見ている風に装う。
「冬の寒さがありながらも、あともう少しで春を迎えるという季節になった今日の良き日、晴れて卒業を迎える1200名の卒業生の皆様、ご卒業おめでとうございます。在校生を代表し心よりお祝い申し上げます。
春の花々が咲き誇る中、真新しい制服を見に包み、これから始まる学園瀬克に期待で胸を膨らませると同時に、不安を抱きながらこの学園の門をくぐられてから早5年の歳月が経とうとしています。今先輩方はスーディエン学園で過ごした大切でかけがえのない日々を昨日のことのように思い出しているのではないでしょうか」
前世でも送辞も答辞もしたことがあるのでそのことを真似て喋ることにしたのだ。
恐らくいつもとは違う送辞の言葉なのだろう、会場内が少しどよめいている。
「4年前、入学したばかりで緊張していた私達に先輩方が優しく声をかけてくださり、すぐに学園生活に馴染むことができました」
学校行事はかなり学年によってバラバラなので省略することにした。
私は一回言葉を切ってからもう一度大きく深呼吸してから言葉を続けた。
「最後になりましたが、来年から新たな生活を送る方も、来年も校舎は異なりますが、同じ学園で過ごされる方も、ご健康と一層のご活躍をお祈り申し上げ、送辞を結ばせていただきます」
私は広げていた白紙の紙を折りたたんで一礼する。
するとどこからともなく拍手が巻き起こる。
私が壇上を降りるとこれから答辞を述べるアルとすれ違った。
一瞬だけ「良くやってくれたな?」という顔をされた気がする。
私が席についたことを確認するとアルは口を開いて話し出した。
そうしてあっという間に卒業式は終わりを迎えた。
まあその内容が面白かったことを話すのはまた違う機会にしようと思う。
第8章コンプリート率:44/45
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