104話『王城に行ってきます』
私は久しぶりに王城へと足を運んでいる。
と言いたいところだが、実際のところは昨日行ったばかりなので久しぶりという訳ではない。
毎日のように婚約者になったアルの仕事を手伝いに行っているのでいつの間にかに王城内に渡し専用の部屋ができていたのはまた違う話だ。
久しぶりに王城に行くというより、久しぶりにアルの父親、つまりティアドラ王国の国王陛下に会うということだ。
最近は静かに過ごしていたつもりなので呼び出される理由が半分ほど分からないが、何の話なのだろうか。
馬車から下りた私を出迎えた近衛騎士の後についていくがその道中のどこにも使用人の姿が見えないので、国王陛下が一時的にここの区画を立ち入り禁止にしているらしい。
随分な警戒様なので私は思わず肩をすくめそうになるが何とかこらえるために心を無にした。
道案内をしていた近衛騎士はとある一室の扉の前まで来るとその扉を叩いた。
「入れ」
部屋の中から国王陛下の声が聞こえると近衛騎士は扉を開けて私を中に通した。
するとすぐに扉を少し開いたままにして元来た道を去っていく音が聞こえた。
「随分と警戒しているんだね、一体何がそんなに怖いんだい?」
私は思ったことを率直に聞いてみることにした。
国王陛下には既に私の本性がバレているのでそのままの自分で話しかけた。
「セレナよ、お主また何かを企んでいるそうだな....?」
「そうだね、私が今していることはある意味企みなのかもしれないね」
「一体何をしでかしてくれようとしておるのだ?」
「貴方ならある程度勘付いているんじゃないのかな?」
「はてな、私にはさっぱりだ」
国王陛下はたぶん既に私がしようとしていることが分かっているのだろう。
今は腹の探り合いがしたいようなので私は無表情で先程から喋っている。
しかし、国王陛下諦めたのかやれやれという顔をしてから普通の顔に戻った。
「ああ、そう言えば来年末はルーンフェスティバルがあるようだね。一体どんなお祭りなんだい?」
「ルーンフェスティバルは100年に一度行われる儀式の1週間前から祝う祭りのことだ。これぐらいのことならセレナも知っているのではないのか?」
「一応書物で確認したんだけどね、さすがに詳しくはのっていなくてね。というより、その年によって様式が違うようだったから気になっただけだよ」
「実行委員は来年決まるが、セレナは確実に委員に選ばれるのだろうな。お主は既に精霊王と聖獣との契約をしているからな、もう確定と言っていいほど委員の要項には当てはまっている」
「それは光栄だね、つまり実行委員がその年の様式を決めているということか。今から楽しみになってきたよ、さて、聞きたいことも聴けたし帰ることとするよ」
私は勝手に会話を切って国王陛下に背中を向けた。
すると後ろから大きな溜息が聞こえ、彼が息を吸ったのが分かった。
「くれぐれもこの国を損なわないようにしてくれ」
私は扉を開けてから廊下へと歩みを進める。
扉が閉まる瞬間に独り言でも呟くようにセレナは呟いた。
「そうだね、きっと大丈夫だよ。まあ、運命が決まるのは彼女自身の選択によるけどね」
私は今日も仕事に勤しんでいる婚約者がいる部屋へと足を進めたのであった。
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