102話『14歳になりました』
ここの世界に来てから14年の月日が経ったらしい。
つい最近初等部に入っていたかと思いきや、もう来年で最終学年になるのだ。
月日の流れは早く、アーサーたちのように貴族から平民へ、という人の動きも多かった。
私はいつものように朝を迎えて優雅に本を読んでいる。
隣には聖獣のアルトールディが我が家にいるかのように寛いでいて、ガウディはベッドの上で寝転がり、ルーシュは窓枠の上でポーズを決めて寛いでいる。
「それで、なんで君達は朝からここにいるんだい?」
私が3人に問うと3人は視線でアイコンタクトを取ってからアルトールディが口を開いた。
『私は特にすることがないので契約者のそばにいるのは普通でしょう?』
「アルトールディの理由はなんとなくわかっていたよ。では、ルーシュとガウディはなぜいるのかな?仕事放棄かい?」
普通だったらこの時期は春で精霊はいろいろと忙しい時期なはずだ。
つまり、2人は仕事をサボっているか、または何かの理由があるのだろう。
『セレナは薄々気づいてるかもしれないけど、僕たちってもうそろそろ世代交代の時期なのね』
ガウディがそう言った。
続けてルーシュが口を開く。
『ガウディベーン、それは回りくどいからもっと簡潔に話せ。私たちが言いたいことは今は世代交代のための移行期間として新しく精霊王になる者が研修を受けている期間なんだ』
『ルージュヴェル、なんで僕が言ってるのに言っちゃうの?せっかく丁寧に説明しようとしたのに…』
先にルーシュが話を要約してしまったため、ガウディは不満げな声でそう言う。
どうやら現在精霊王の2人は今は仕事をしなくてもいい期間らしい。
精霊王はこの世に命を受けてすぐに自分のするべきことがわかると言われている。
きっとそれは人間の憶測ではなく、完全なる事実なのだろう。
「なるほどね、ついに新しい精霊が今年の春に生まれたんだね」
精霊は自然界の中で突然現れる不思議な生物で、未だにその生態などについてしっかりと書かれた書物はないらしい。
精霊の本を出しているシャンさんでさえも、そこまで精霊のことは知らないのだとか。
『ルージュヴェルもガウディベーンも大変そうですね』
随分と他人事な事言う聖獣はいつの間にかに用意されたティーカップを持って一口紅茶を口に含んでいた。
『アルトールディはいつも通り他人事だね〜』
『まあ、聖獣は結界を張る仕事があるからな。1番大変なんじゃないか?』
『そこまで難しくはありませんよ?ルージュヴェルも今度やってみますか?』
アルトールディはさも簡単かのようにそう言った。
きっと長年結界を張っているからあまり気にしたことがないのかもしれない。
「とりあえず今年はみんな暇みたいだね」
私は自然と口の端を上げた。
『…何か面倒な事を頼もうとしてるのではないか?』
「君たちにとってはそんなに大変じゃないと思うよ」
私がそう言うと精霊二人は怪訝な顔をした。
アルトールディは一人口元をほころばせて楽しそうにしている。
『面白そうな話ではないですか?ガウディベーンもルージュヴェルも面白いことはお好きでしょう?』
『...まあ、確かにそうだけどね』
『...ああ、そうだな』
『なら、協力しましょうか』
『『...』』
アルトールディがそう言うと2人は黙り込んだ。
私は立ち上がって手をパンッと叩いた。
「さあ、今日が始まるのはこれからだ。行こうか」
ちょうど時刻は朝食の時間になっていた。
そうして、セレナ達は部屋を出て行った。
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追記:作者の都合により次回の投稿は10月25日となります。しばらくお待ちください。