101話『彼女は動く』
※アミラ視点です。
お待たせいたしました!投稿が遅くなりましたが、気を取り直して今日からまた毎日投稿していくのでよろしくお願いします。
「あれから1ヵ月経ったのか...」
私は窓の外を見ながらそう呟いた。
すると横に座っていたアーサーが口を開いた。
「...1ヵ月でこんなに変わるとは思わなかったな」
新聞を広げながらそう呟く彼の目は前よりも輝いて見える。
私は机の上に置かれた手紙を手に取ってもう一度手紙を読み直した。
『ーーアミラへ
相変わらず元気にしているようだね。一応監視を付けろと言われているから見張ってはいるけれど、平民としての生活を楽しむと良い。
私は今年から初等部4年になって、アルが最終学年になったよ。勉強内容的には高校2年生ぐらいかな。
何か困ったことがあったらいつでも言ってくれ、私は君の友人だからね。
そういえば、私の商会が軌道に乗ってきたところなんだよ。そこでアミラに働いてもらいたいんだけど、いいかな?
いい返事が聞けることを楽しみにして待っているよ。
来週末に一度お茶会を開こうと思っているからぜひ来てくれると嬉しいよ。
ーセレナリール・ヴァルトキアより』
書いてある言葉の数は少ないが、セレナが私達のことを気にしてくれていることが文面から伝わってきた。
私は自然と顔をほころばせながら「まったく...憎めないんだから...」と呟く。
「...セレナからの手紙かい?」
新聞紙を折りたたんだアーサーは私の独り言に口を出した。
私はこくりと頷いて答える。
「...セレナはやっぱりセレナなんだよね...」
私は独り言をつぶやいた。
アーサーは不思議そうな顔をしながらこちらを見た。
「つまり、どういうこと?」
私は窓の外を見ながら答える。
「セレナは前世とまったく変わってないってことだよ」
窓の外は光に溢れていて、多くの人々が道を行きかっている。
今日は王都の街は賑やかで、夜も街は休むことを知らないほど賑わっている。
彼女は...聖麗は前世で一度しか会ったことがないから良くは知らないけど、何となく元の彼女は変わらないままなのだろう。
きっとこれからセレナはまた新しいことをしていくのだろう。
私は彼女が作る未来を見てみたい。
「...変わっていない、か。それはどうだろうね?」
アーサーは意味深にそう言った。
私は振り返りもせずに笑ってみせる。
「根本は変わってないんだよ、セレナも...私もね」
光の溢れる街の空には今日も月が出ている。
月が日中もずっと出ていて、複数個あることに本当に私は異世界に来たのだと感じる。
何も知らない世界だったここはいつの間にかに私の『居場所』になっていた。
誰でも適応と言うものがあるのだと私は常々感じている。
誰もが何も知らないこの世界にやってくる理由は何かあるのだろうか。
前世、今世関係なく私は何か理由があるのかと考えをめぐらす。
しかし、やっぱりなにも分からなかった。
彼女なら、分かったのだろうか。
セレナと同じく、前世でたった1度しか出会ったことのない少女の姿が浮かぶ。
日本人離れしたミルクティーブロンドの髪に藍色と月白色をグラデーションした瞳の色をした不思議な少女だった。
今彼女はどこにいるのだろうか。
私はふと思い出した少女のことを良く思い出そうとしたが、なぜ会ったのかは思い出せなかった。
第8章コンプリート率:35/45
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