99話『王太子とお茶を』
私の前には最近王太子になったアルティアス・ティアドラこと、アルが座っている。
『仕事がひと段落ついたら、お茶でも飲まないか?』
と提案されたので私はその提案に乗って、一緒にお茶を飲むことにしたのだ。
「今年でアルは初等部を卒業か...」
私は綺麗に整えられた王城の園庭を見ながらそう言った。
「そうだな、俺も最終学年になったのか...早いな」
私は口の端を上げながら言う。
「今年はどんなことが起こるんだろうね?」
「...できれば起こさないで貰いたいな。セレナ、お前は今年は生徒会長だろう?」
「そういえば、そんな役職になっていた気がするね。アルは生徒会には入らないのかい?」
どうやら学年の推薦で私が一番問票数が多かったため、私が生徒会長をすることになったのだ。
元々去年ベリーお兄様が生徒会長をしていたため、生徒会に強制的に入れられることにはなっていたのだが、まさか生徒会長をすることになるとは思わなかった。
「俺は見ての通り『新しい仕事』で手一杯なんだ。だから入るつもりはないぞ」
「そうなんだね、残念だね」
「...絶対思ってないだろ、監視役が居なくて何かやらかすつもりなんじゃないか?」
「どうだろうね?」
今年は特に騒動を起こすつもりがない。
とりあえず、楽しく生きれればいいと思っているので、何かが起こるとしたら来年なのではないだろうか。
「まあいい、責任は取ってやろう」
「随分と親切なんだね、仕事を手伝って欲しいということかな?」
「...察しが良くて助かる。頼んでも良いか?」
「いいよ、私はアルの婚約者だからね。仕事を手伝っても特にお咎めはされないだろう」
「セレナは仕事が完璧だからな、羨ましいよ」
アルが珍しく人を褒めていることに少し驚きながらも話を続ける。
「君は十分優秀だろう?アーサーよりも王太子の仕事は向いていると思うよ」
「...それは本気で言っているのか?」
「私はいつだって本気だよ」
「そうか」
何となくさっきよりも元気な顔になったアルは持っていたカップに口を付けた。
こんな穏やかなお茶会が開かれるぐらいに平和になったのだと、私は再確認したのだった。
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