95話『頭を悩ませる国王』
※ガルヴェギー視点です。
国王陛下は話し合いが終わった後に一人で執務室に帰ってきていた。
「はぁ...」
彼は一人大きなため息をついた。
自分の机に手を置いて困り果てたような顔をしている。
「...知らなかったのは私だけか」
彼は窓の外を見る。
今日は月が綺麗だ。
夜空を見上げた彼は後悔していた。
ずっと押し付けてしまったこと。
ずっと見て見ぬふりをしてきたこと。
ずっと気づけなかったこと。
少しでも自分の息子たちのことを見ていれば分かったことなのに、仕事で忙しいからという理由を付けて見てこなかった。
生まれた時に一瞬見たきり、息子たちと関わらなかった『愚かな親』。
でも、もう遅い。
既に遅かった。
周りは気付いていたのだろうか、それとも誰一人として気付いていなかったのだろうか。
彼らの苦しみを、彼らの痛みを、彼らの喜びさえも、彼らの楽しみさえも、そのすべてを。
その全ての感情を私達大人はを奪っていたのかもしれない。
「今回はセレナのおかげで真実を見ることができたが...これから先は、私自身が見なければな」
彼はそう呟いてから暗い部屋に明かりを付けて今残っている書類を片付け始めた。
夜は長い、彼にとって今日の夜は忘れられないものとなるのかもしれない。
第8章コンプリート率:28/45
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