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91話『パーティー会場でまさかの...?!』

「セレナリール・ヴァルトキア!今日をもって俺とお前の婚約を破棄する!」



堂々と仁王立ちしながらそう言った第一王子、そしてその横に立つのはアミラだ。

第一王子が声を張り上げた時点で会場内はしんと静まり返った。







とうとうやってきた婚約破棄騒動はやはり定番の卒業式記念パーティーで行われるらしい。





「理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」



できるだけ心から笑わないように表情筋を制しながら私は問いかけた。



「お前、分かっていないのか?!俺は、今俺の隣にいるアミラ・リナデルンを愛しているんだ!!」



会場中に響き渡ったその声でその場が凍り付いたかのように皆が静止した。

誰もが私達のこれからの行動を見て観察している。



「そうなのですか」



私は冷たく突き刺すように普段出さない声でそう言った。

その瞬間会場がざわつく、辺りからひそひそと話す声が聞こえるが聞こえないふりをする。



「...『そうなのですか』だって?お前はアミラに何をしたか分かって言っているのか!!」



私は先程と同様の声を出す。



「何かをした覚えがないので、わかりませんね」



私はにっこりと笑ってアミラを見る。

アミラはビクッと肩を震わせて第一王子の後ろに隠れた。



私はアミラの行動に笑みを深めた。



「数々の悪口雑言、俺の耳にそれが入っていないと思っていたのか!!」



肩をすくめて私は答える。



「...そうですか、それがどうしたのでしょう?」



第一王子は目を見開いて「は?」と割と本当に驚いた声を上げる。



「ですから、それがどうしたのでしょうか?」



固まる第一王子を見飽きたのか、後ろに隠れていたアミラが前に出てきて言う。



「セレナリール様!もう...もう、やめてください!!こ、こんなこと...あんまりです」



はらりと綺麗な涙を流すアミラは見事だと思った。

私は彼女の言ったことに答えるように首を傾げて今度は彼女に聞いた。



「私は先程から『悪口雑言を私が言っていた』と間接的に聞いたことでなぜ私が悪く言われなければいけないのか、お聞きしているだけですよ?」



「...っ....もう、やめませんか?全てを終わりにしませんか?」



私が聞いたことには答える気がないアミラは私の話をまるで聞こえていないのかのようにふるまった。



「では、終わりにしていただけませんか?ね?....王太子殿下?」



王太子殿下もとい、第一王子ははっと我に返ったように口を開こうとした。

しかし、その場で声を上げた者がいた。



「そこまでですよ、兄上」



その場にやってきたのは第一王子の弟の第二王子だった。



「なっ...お前、なんでここに居る?!」



まるで今日は第二王子が参加しないことを知っていたかのような口調で第一王子はそう言った。

第二王子、アルティアス・ティアドラは口を開いた。



「私はこのパーティーに招待された内の一人ですからいるのは当たり前でしょう?兄上、私は貴方が全面的に悪いと思いますよ」



一度言葉を切って続きを話し出す。



「婚約者が居ながら不義を働くなど、言語道断ですよ。国王陛下からの申し出で私はセレナリール・ヴァルトキア嬢のことをこの1年ほど見ていましたが、一度も彼女が人の悪口を口から出したことはありませんでした。いくらルールがなかったとしても国のトップとなる貴方がそれをしてはいけない...兄上、貴方はこの意味がわかりますね?」



アルティアス・ティアドラは何の感情も乗らないその目で第一王子を見た。

すると第一王子は床に崩れ落ちて、顔を覆った。



「...なぜ、なぜ私はこんなにも縛られなければいけないんだ!生まれが王家だからか?王太子として生きることを強制させられてきた俺の気持ちはどこにあるんだよ!」



半分ほど本音が混ざっているがきっとこれも演技なのだろう。

見事なことだ、私は想像以上に優秀な彼を見くびっていたらしい。



「兵よ、この者達を捕らえよ」



アルティアスは良く響く声で衛兵にそう言った。

衛兵はさっと出てきて2人を回収していく、そしてアルティアスは私のほうを見て一瞬笑った。



第二王子の登場で静まり返っていた会場が再びざわめき始める。



「この度は私の兄が失礼しました。後日また話を設けますのでそれまでお待ちいただけませんか?」



申し訳なさそうな顔で彼はそう言った。



「ええ、分かりました。国王陛下のご判断にお任せいたします、私は少し疲れてしまったのでここでお暇させていただきますが、皆さまはこの後もお楽しみくださいね。お騒がせしてしまい、申し訳ありませんでした」



私は聴衆に向かって軽く頭を下げる。



「貴方は悪くありません...兄が悪いのですから...よろしければ私がお送りしてもよろしいでしょうか?」



さっと手を取って顔を上げさせたアルティアスはそのまま手を引いて私を会場から出した。

後ろで扉が閉まる前に聞こえたざわめきは扉が閉じたことで完全に聞こえなくなった。



「このまま王城へと向かう、いいな?」



いつもの口調に戻ったアルは他の人には聞こえない声で私にそう耳打ちした。

私は何も言わずにコクリと頷いて、あらかじめ用意されていた王族用の馬車に乗る。










本当に面白いものを見せてもらったよ、ありがとう。

第8章コンプリート率:24/45

総合コンプリート率:133/331

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