87話『裏組織に入れたい』
※ルステラン視点です。
さて、どうしようかな。
僕はさっきセレナの『監視』を交代したところであることを考えていた。
『頼みたいことは『情報整理』だ。君はこれだけで何のことかわかるね?』
僕を試すようにこちらのほうを見てきた相手に何も感じなかった僕は『気が向いたらね』と言っておいた。
実際に動かす情報はそこまで大変なものではないので別に動かしてもいいのだが、それが相手のためになるのかを考えていた。
過去の貴族はこう言っていた。
『私は何もしていない、だから...何も悪くない!』
ああ、お前にとっては何もしていないかもしれないね。
でも、他の人にとっては邪魔だったみだいだよ。
『なぜ私が殺されなければいけないんだ!何が悪い、何がだめなんだ!』
感情任せに怒鳴るターゲットは机に置いてあった万年筆を僕の方に投げた。
僕はその万年筆をよけて一気にターゲットに近づいて息の根を止めた。
バタリと倒れたターゲットを見ても何の情もわかなかった、僕には彼がやりたかったことが理解できなかった。
床に見事に刺さった万年筆を抜き取って『炎』魔法で燃やす。
その後は何の形跡も残さずのその屋敷を後にした。
僕は今まで幾人もの人間達を殺してきた。
毎回殺した後は特に何も思わなかったし、普通の人が人を殺した時に動揺することを最近始めて知った。
今までの経験上『情報』は大切なものだ。
ターゲットの情報が分かればどのように対処するかを決めることができる。
的確な指示を出すことができるのも情報のおかげなのだろう。
そんな『情報』は世の中に溢れている。
だからそんな些細な『情報整理』なんてしなくても大丈夫なのではないか、と思うのだ。
僕は一瞬冷たい目で何もない空間を見つめる。
するとその一瞬に気が付いたセレナが声をかけてきた。
「ルスお兄様、何もない空間を睨んでも何も起きませんよ?」
僕はふふっと笑って答える。
「確かに、そうだね。そうだね....何もないところには何もないもんね」
セレナはそれ以上は何も言わずににっこりと微笑んだ。
やっぱりセレナ、うちの組織に入ってくれないかな...。
第8章コンプリート率:20/45
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