81話『黒幕は動き始める』
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※???視点です。
暗い部屋で窓の傍に立って手を組んで外を見ている男がいた。
外はしとしとと雨が降っていて空は灰色の雲が空全体に広がっていた。
「...」
その男は黙りながら何かを考える。
何度も雨空を見上げては、絨毯を見てを繰り返す。
雨の音がだんだんと大きくなり外はかなりの荒れ模様だ。
「ーーすーー、もーーーーでーーはーーされる」
男の声の半分以上は雨の音で消されて、途切れ途切れに言葉が聞こえる。
ポケットからあるものを取り出してソレを男は空中に投げた。
投げたソレは空中からどこかへと消えてなくなる。
その男は満足気に頷いてから部屋の外へと向かっていった。
男のいる場所から遠く離れた白い建物からは一人の女の声が響いている。
『たす、け...て。私を...助けて』
そこは閉ざされた部屋で、ただ女の声だけが部屋に響いた。
...ポタリ....ポタリ
冷たいタイルの床に女の涙が落ちているらしい。
全てが綺麗に磨かれたその部屋には誰もいない。
『...な、んで...』
その女の声の先は聞き取れないほど小さく、今にも消え入りそうだ。
だから、誰も彼女の声に気付くことはない。
そして、女は諦めたように声を上げて笑った。
『...これも『運命』なのかしら、ね.....』
女はそれからなにも喋らず黙った。
まるで、誰もいなくなったかのように部屋は静かだ。
大雨が降るのを窓の内側から見ているある女は窓を開けた。
窓から大粒の雨が風と共に入ってくるのも気にせずに彼女は空を見上げた。
「雨....か」
女はそう呟いて何かを思い出しているようだ。
窓を開けてから数分後にノックしてきたメイドが部屋の状況を見て目を見開く。
「お嬢様、何をなさっているのですか?!ずぶ濡れではありませんか?!早く窓を...!!」
メイドはそう言いながら急いで窓を閉める。
しかし、女はまるでメイドの声が聞こえてないかのようにただそこに立っていた。
「...お嬢様?」
メイドは女の顔を覗き込みながらそう問う。
女はにっこりとメイドに笑い返しながら口を開く。
「な~んてね、驚いた?偶には、いたずらしてみたかったの」
いたずらが成功した子供のように彼女は笑う。
メイドは呆れた顔をしながらさっとタオルを出して女を風呂へと先導した。
「まったく、お嬢様は...何をしていらっしゃるかと思えば、いたずらだったのですか?」
女はクスクス笑いながら答える。
「そうよ、貴方を驚かそうと思って、今か今かと待ってたらかなり濡れちゃったわ」
「それでは、早くお風呂へと入りましょうね。今度からはああいういたずらはお辞めくださいね」
女はメイドを見ながら答える。
「それは...どうしようかしら?」
「お嬢様!」
メイドはそう言いながら口元が笑っている。
男が送ったモノが届いた部屋には誰もいなかった。
ソレは自ら机の上へと音もたてずに落ち、ソレを受け取る人を待っていた。
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