80話『練習試合 総合編』
いよいよ最終日の『総合』の日となった。
今日が最終種目の『総合』の日で学年問わずで初等部内でのトップを競い合う日だ。
私は咲雪と一緒に競技に出ることになっている。
今日出場しない人でも観戦に来ているらしく、学園のほぼ全員が集まっているのではないかというぐらい混んでいる。
客席はもちろん満席で、一人で何席も使おうものなら争いごとが起きるのでみんなルールを守って一人一席で観戦しているらしい。
それそれ誰が勝つかで賭け事をしているひともいるらしく、自分が出るわけではないがやる気が凄い。
私は最初から控室で咲雪と待機することにした。
そして私の控室には兄弟全員が勢ぞろいしていた。
どうやら今回ディオお兄様とベリーお兄様は『総合』に出ないらしい。
2曰く、『初等部ではセレナがいますからね、私は辞退しましたよ』『ジュリと勝負することになるんだ、まだ俺は出れないよ』らしい。
「ねえねえ、セレナは今回はその子と出場するの?」
少し目を輝かせながらそう聞いてきたのはルスお兄様だ。
「そうですね、サユと一緒に出ようと思っていますよ」
私はそう言いながら隣に座るサユに同意を求めた。
するとサユは微笑んで答える。
「ええ、私はセレナと一緒に出させてもらいますわ」
サユが笑うとルスお兄様以外は目を見開いた。
今までサユは座っていただけなのでただの『人形』だと思ったらしい。
「喋るんだね、その子」
ジュリお兄様はそう言った。
「いや、喋るって....聴いてないぞ」
「言ってませんからね」
私はディオお兄様の問いに即答する。
「....どうやったら、喋るようになるんだよ....」
「それは...」「企業秘密だよ、ね?セレナ」
私が答えようとするとルスお兄様が被せるように言ってきた。
どうやらルスお兄様がそこらへんは調節してくれたらしく私は頷いておくことにした。
「企業秘密...ね」
ジュリお兄様は咲雪を見ながらそう口にする。
どうやらどうやって喋るようにしたかを見ているようだ。
「セレナお姉様凄いですね!喋るお人形を作るなんて!」
イルは目を輝かせながらそう言った。
「この魔法石はどこから入手したのですか?」
ノースは不思議そうに咲雪の目を観察している。
言っていなかったが、イルとノースも今年で11歳なので学園に入学してきたのだ。
二人共同率一位で学年主席で合格してこの学園に入ってきたようで、既に学園で有名になりつつある。
兄弟達で話をしているとジュリお兄様が呼ばれて帰ってきて、次にルスお兄様が呼ばれて帰ってきて、やっと私が呼ばれた。
私は昨日と同じように咲雪で攻撃を仕掛けて、隙をついて魔法を発動させるのを繰り返して初等部の戦いを勝ち抜いていった。
そして、今決戦となっている。
目の前には最近ベリーお兄様に次いで強いと言われている伯爵家の令息で先程ヨルとの対戦で僅差で勝ちあがってきたのだ。
強い風が結った髪の毛を揺らす。
「始め!」
審判の合図とともに私は右、咲雪は左に駆けだした。
会場のざわめきが聞こえたが私は作戦通りに相手を追い詰めた。
どうやら風魔法で私を吹き飛ばそうとしたらしいが、私がそれをよけたため風は観客席手前で消えた。
私は少し光の魔法と火の魔法を使ってフェニックスのようなものを作って相手に向かわせた。
相手は私の作ったものに驚き一瞬動きを止める。
「辞め!」
どうやら決着はついたようだ。
私と咲雪が挟み撃ちでロングソードを突き付けた。
観客席で座っていた観客は立ち上がって大きな拍手を送ってきた。
私はこうして今年の初等部『総合』部門の優勝を果たしたのであった。
第8章コンプリート率:10/45
総合コンプリート率:119/331




