79.5話『兄は思う』
※ルステラン視点です。
つまらない試合をただ一人で見ていた僕はだんだんと飽きてきていた。
ステージに次から次へと出てくる開発された『もの』たちを見てもあまり面白くない。
どうやら観客は違うらしく、勝敗が決まるごとに盛り上がっている。
「なんか、面白味に欠けるんだよな~」
一人僕はそう呟いた。
すると下のほうから声が聞こえた。
「ルス、お前そんなところにいたのか」
後ろから声が聞こえたので声が聞こえたほうへ顔を向けるとそこには兄のディオがいた。
どうやら、することがなくて外で散歩していたようだ。
「なんだ、ディオか」
「何が『なんだ、ディオか』だよ...というか、暇そうだな」
僕は足をふらふらと動かしながら言う。
「セレナの試合を見終わったら仕事だよ~」
「仕事あるのかよ」
ディオは呆れたように目を細めてこっちを見ながら言う。
そして近くにあった木に登って僕の隣にやってきて座った。
視線を会場へと戻すと先程と同じ光景がそこにはあった。
しかし、ホイッスルの音とに選手が退場していく。
どうやら、セレナの番が来たらしい。
初等部3年生の出場者が一気にステージへとやってくる。
それぞれの発明品を持つなり置くなりして持ってきた選手たちの中にセレナもいた。
しかし、珍しい者を連れていたので会場がざわめいた。
彼女の隣には銀髪に虹色の目をした少女が立っていたのだ。
今回、セレナは『人形』を作ったらしい。
「あれは...『魔法の髪』と『魔法石の目』か...ふ~ん、なるほど、勝敗はもう決まったね」
「は?『魔法石の目』って....魔法石事態貴重なものだろ...セレナならどこかで取ってこれる...か」
隣でディオが何か言っている気がしたが気にせず『人形』の観察を続けた。
一通り、彼女の機能が分かると後ろで待機していたヒートに指示を出した。
最初はセレナ対どこかの貴族の対決らしい。
審判の合図と共に人間では出せない速さでその『人形』は走り出した。
手際の良さと技術力を見ただけでももう勝敗は決まっていたが、やはり、セレナは優勝した。
「これは凄いね...ぜひとも僕のファミリーに加わってほしいぐらいだね」
「それはやめとけ、大陸ごと潰す気か?」
「そんなことするわけがないでしょ~...冗談だよ」
僕はそう言ってディオのほうを見て笑って見せた。
ディオは一瞬息を呑んでそれを見ていたが一瞬で表情を消して言う。
「とりあえず、アレ...どうするんだ?」
「分かってるよ....もう手は回しておいたから、安心しなよ」
「...そっち方面は得意分野だったな...言う必要はなかったか...」
ディオはそう言いながら頭の後ろに手を回して体をそり返した。
まあ、ディオの身体能力ならそれぐらいじゃ落ちないだろうけど、普通だったら上から落ちてるね。
そんなことを考えながら僕は塀の上に立ってディオのほうを向く。
「それじゃ、僕はもう行くよ」
ディオは一回溜息をついてから口を開いた。
「ああ......気を付けろよ」
「ふふっ....心配してるの?」
思わず零れた笑い声を聞いてディオはむすっとした顔になる。
そして何も言わずに元来たように木の上に乗ってから地面へと降りて観客席へと戻っていった。
「さて、僕は仕事に行かないとね」
僕も気を取り直して塀の上から飛び降りて今日のターゲットの元へと足を進めた。
第8章コンプリート率:9/45
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