78.5話『目の前に化け物がいるのですが』
※ヨル視点です。
僕は目の前の光景を見ながら死を悟りそうになっている。
会場は張り詰めたように緊張感が漂っている。
なぜなら、セレナが割と本気で魔力を使っているからだ。
目の前にあるものはたぶん火の柱だろうか?
そしてその柱をぐるぐると回るように回っているのは水だと思われる。
そして何よりもすごくまぶしい、ほとんどなにも見えない。
いや、そんなに本気じゃなくても良くないか?と思うほど光っている。
そんなことを考えているとセレナの後ろからフェニックスだと思われる何かがこちらに突進してくるのが見える。
絶対彼女の契約精霊が面白がって応戦しているに違いない。
彼女自身が使っている魔法はまだ上級魔法なはずだ、さすが転生者と言うべきかチートと言うべきか。
彼女が学園入学前から魔法を使えたのは知っていたが思ってた以上に危ない奴になっていたらしい。
今のセレナなら国も簡単に壊せそうだな...と、そんなこと考えている場合じゃないか。
僕は左手に魔力を貯めて、地面に氷を張らした。
パキパキという音を立てながら彼女のほうに向かうがどうやらもう勝敗は決まっているらしい。
僕が発動した魔法はいとも簡単にただの水と化した。
審判の先生が焦った顔で「辞め!!!!」と言っているのが見えてほっと息をついた。
勝敗が決まった会場内は一気に歓声が溢れて、拍手喝さいが起きた。
「セレナリール様素敵ですわ!」
「勝ちましたわ!!ねえ、貴方も見ましたよね?!セレナリール様は凄いんですよ!」
「すごいな、さすがセレナリール様だ。今年はもしかしたら私達の学年から『総合』の優勝者がでるかもしれないな」
「セレナリール様かっこ良かったな!いつもは落ち着いていてミステリアスな雰囲気があるが、俺はこっちのセレナリール様もいいと思う!」
「わかる!セレナリール様は何をしても良いよな!」
辺りからはセレナを褒め称える言葉が聞こえた。
....また、負けたのか。
僕は両手を握りしめながら俯いた。
すると僕の手を取って声をかけてきた人がいた。
「ヨル様!すごかったですね!私、あんなに凄い魔法使えません!」
そう言って僕のことを褒めてくれたのは婚約者のレファだった。
どうやら彼女は僕のことを見ていてくれたみたいだ。
僕は出てきそうになる涙をこらえて彼女に微笑みかけた。
ありがとう、僕はいつも君のおかげで元気になれるよ...本当に、ありがとう
僕は心の中でそう呟いた。
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