73話『2人の王子』
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数分ぶりの地面に安心感を覚えるとどうやら誰かが駆け寄ってきているようで、足音が聞こえた。
音のする方を見るとこの国の王子2人がやってきていたようだ。
珍しく焦ったような顔をしていて駆け寄ってきての第一声がこれだった。
「大丈夫か?!」「無事か?!」
二人共仲良く言葉が被り、心配そうに私のほうを見てきた。
この野外合宿は初等部全体で行われるため2人もこの合宿に参加していたのだ。
「ええ、私は無事ですよ?お二人ともどうかされたのですか?」
私がさっきのことはなかったことにしようとしたがどうやらそれは無駄だったようだ。
「いや、君今さっきまで空飛んでたよね?!」「お前さっきまで空にいただろ!」
どうやらまた仲良くキャラ崩壊が起きているらしい。
いつも私に接する口調がだいぶ崩れていて笑いそうになったが表情筋を殺して頑張って耐えた。
「飛んでましたね?」
私はそれがどうしたのかというふうに首を傾げて見せた。
2人ともまた口を開こうとしていたところで後ろからまた人がやってきたようだ。
私は後ろから来た人物を見てから後でお兄様に尋問されることを悟ったことを思い出した。
どうやらベリーお兄様も騒ぎを聞きつけてやってきたらしい。
爽やかな飲料水のCMで走っていそうな感じで笑顔でやってくるが目が笑っていないのでとても怖い。
走ってきたはずのお兄様は全く息切れしたようでもなくそのままの笑顔で私に聞いてきた。
「セレナ、どうしたのでしょうか?」
約:セレナ、今度は何をやらかしてくれたのでしょうか?
なぜかお兄様の声が副音声のように本心が聞こえた気がするが私はいつも通りの笑顔で答える。
「今、森で迷ってしまったところこのアルトールディに助けていただき、空からテントに帰還したところです」
何も嘘はついていないのでそこまで怒られることはないだろう。
ベリーお兄様は微笑みを絶やさないまま、ちらりと王子たちのほうを見る。
「殿下達も来られていたのですね、私の妹がご迷惑をおかけしました」
お兄様の笑顔の圧を一気に受けた2人は一瞬息を呑んでから口を開く。
「...あ、ああ、大丈夫だ」
「...私も大丈夫です」
どうやらキャラ崩壊していたことに今更気づいたらしく、元の口調に戻したようだ。
「あとは私のほうから何があったか聞きますので殿下方はご自分のテントにお戻りください。もうそろそろ昼食のお時間ですから」
ベリーお兄様は暗に早く自分のテントに戻れと王子たちに言ったのだ。
これ以上お兄様の圧に耐えられないと思ったのか2人はそそくさと自分のテントに戻っていった。
改めて私のお兄様は強いと思うのであった。
ベリーお兄様はにっこりとした顔をしながら私に向き直って聞いてくる。
「それで、お隣のペガサスだと思われるお方は何方なのでしょうか?」
私はどう答えようかと思ったところをアルトールディが話始めた。
『私は先程セレナの契約聖獣になった者ですよ。アトルディア・ロア・キュース・レダレフェルトと言います、以後お見知りおきを』
人間の姿になったアルトールディは綺麗なお辞儀をお兄様にして見せた。
お兄様は一瞬目を見開いたが何かを理解したようでそれ以上の追及はなかった。
その日はそれ以上の追及はなかったが後日、私含めヴァルトキア家で緊急家族会議が行われることになることはまた別の話。
第7章コンプリート率:13/14
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