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短編集『オーロラ色の夢語り』

考古学者の夢

作者: 蒼乃モネ

とある熱帯雨林地帯。


古代遺跡を対象とした、某国のアマチュア調査チームにより、大規模な地下遺跡が発見された。


夢のような、世紀の考古学的大発見である。


過酷な環境による度重なる感染症やスコールの被害に見舞われ、発掘は大変な困難を極めた。


多数の犠牲の上に実現した、重大な歴史的発見である。


チームリーダーのSは、世界の注目が集まるなか、某国のテレビ局に依頼され、インタビューを受けた。


この会見の様子は、インターネットで世界に向けて、同時配信される。


「このたびは素晴らしい功績を残されましたね」


―「ありがとうございます。この遺跡は、古代における社会制度の名残をとどめるという点で、貴重なものと考えられます。この国でも、王制時代が存在したという驚くべき事実が、証明されようとしている。我が国はこれまで市民による共和制、つまり完全なる身分平等社会が維持されてきたと広く唱えられてきました。」


「なるほど。それでは具体的に、当時はどのような社会だったのですか。」


―「この遺跡を中心に文明が栄えていた頃、社会の仕組みは王を中心としたコミュニティとして機能していたのではないかと。正確には女王の統べる女系継承の国家であった可能性が高い。まだ断言できませんが、主に奴隷使役制に支えられていたのでははないかと」


静まりかえる会場。


―「しかし、我々の先祖が野蛮で下等であるとは言い切れない。

王と市民の距離は近く、兵や奴隷を含む集団生活とでもいうような社会制度が機能していたのです。生きるために、みなが支えあい、分けあい、働いたとも考えられます。これは、現在のような個人第一主義の社会において、考えさせられるものがあるのではないでしょうか」


会場に響き渡る拍手。複数の局によって、いっせいにカメラのシャッターが切られる。


その後も、出席者の数々の質疑に応じ、一生分のフラッシュの光を浴びた。


ようやく解放され、Sは助手たちとともに帰路についた。


しばらく他愛もない会話を続けると、ラボに到着する。


土砂でできた簡素な山のような。ヒトはこれを「蟻塚」と呼ぶのかもしれない。

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