第五話:ちいさなコックさん
気がついたら辺りは、街灯の淡い藍色の小さな木漏れ日以外何も見えない。
とても幻想的な夜であった。
先ほど秋真っ只中でたった幸汰の頬は、その色葉を落として元の肌へと戻っていた。
「すぅー……。」
幸汰の横で泣き疲れたみかんは寝息を立てていた。
ただこうして眠っているだけならば可愛らしい女の子なのになぁ。幸汰は惜しむように思った。
さってと。俺も寝ようかな。
今日は、幻獣? 女神?
意味わからないことがたくさんあったしな。
隣では小さく体育座りで寝そべっている少女がいる。
寒そうだし、誤解とはいえ傷つけちゃったもんな。ごめん。
幸汰は自分の羽織っていたダウンを少女に被せ。本当の夢の世界へと旅立った。
ぐらぐら。
こんな効果音でも聞こえてきそうであった。
マグニチュード8.0!
震源、――多分奴であろう。
震央、俺……。
初期微動継続時間、無し。
主要動5秒。そ
の地震はとまった。
ぐヴぉん。
またもや効果音。今度は何か楽器のようだ。
しかし頭が痛い。差し詰め……撥は俺か?
「も〜! 早く起きなさい! 朝よ! 朝!」
はいはい。わかりました。わかりましたとも女神様っ!
てか! 俺はどうしてこうもまともに目覚めることが出来ないのであろうか……。
座ったまま俺は考えた。
――そんなことより。頭がぁ。頭がぁ!
「いっ、たぁ〜!」
「あたしの存在をまだ信じてないの? 呆れた。
眠って、夢から覚めればお別れだ。なんて思ってたの?
あんた、トコトンばかねぇ。」
純白の前掛けを、その美しい体にまとわせ、ちょっと低く小さめなコックさんの帽子を頭に乗せている。
そして大くて、鉄製であろうピカピカのフライパンを、ちぃーっこい手を二つも使って持っている。
これだけなら、なんともまぁ可愛らしい姿である。や、ヤバい。鼻血が……。
普通に考えたら新婚さんの理想? ではないだろうか。
しかし、次に目に入ってきたものが幸汰を困惑させる。
フライパンの底である。
購入したばかりであろうそれには、明らかに便利のため。とかに見えない“仕様”があった。
まん丸の面の隅っこのほうに、僅かながら凹みが見える。
これって……
いやな予感がした。最近いやな予感が外れていないことが、更にその予感を増幅させた。
頭に手をやる。生暖かい。
生の肌の感触とは違っていた。
え液体ぃ? 最も想像したくないことだった。
手を目の見える範囲へやる。
想像は空想を超え現実へとなった。
その光景を見た幸汰の頭の中では、ビッグバンが突如発生! 辺りが真っ白い光りに包まれる。
と同時にブラックホールが発生! 辺りは事態を翻し、暗黒の闇へと変わった。
記憶がおぼつか無い。フラフラしている。俺死んだかも……。
「えへへぇッ♪ 引っかかったぁ〜。」
にたにた笑いながらこちらを見ている。
引っかかった? こいつ最初から俺を殺すつもりで……
やっぱり変なオカルト宗教。さすがっ!
しかしそんな嫌味を言っても、心なしか、心の声も小さくなる。やっぱり死ぬって怖いなぁ。
「あーんたは、ホンっト気が小さいわね! 嘘よ! 嘘! 今日はここの星のエイプリールデイなのよ。結構凝ってたでしょう。」
え? 嘘? またしても嘘ですか? 昨日も試験だとか何とか……。
それによく見るとこれ血じゃなくて……トマトスープ?
ぺろっ。
あ、なかなか!
って鑑賞してる場合か? あのフライパン何? 大きさは胴くらいである。なんに使うの?
それに俺、頭痛かったし。変な鈍い音も鳴ってたし。
「あ! その顔はまだ疑ってるなぁ〜。私これでも女神! 簡単な、といってもお遊び程度だけど、魔術が使えるのよ!」
自慢げに語った。鼻が高くていいねぇ。女神様。
「ふ、ふざけ……」
「さぁ、食べるわよ! も、もちろんあんたの分もあるからね!」
出てきたのは先ほどの大きいフライパン。それにその中のトマトスープ。
あ、そうか! さっきはおれ、座ってたからただの凶器にしか見えなかったんだ。
ちょっと立ち悪いけど、可愛いとこあるじゃねぇか。
エイプリールデイかぁ。どっちかって言うとドッキリだったけどな。
まぁとにかく良かった。死ななくて本当に良かった。
かくして幸汰は願い事を叶えるべく| (というより無理やり契約させられたせいなのだが)、みかんと名乗る少女(自称女神様)と、この星の全ての国を統一する破目になってしまったのである。
わざわざ長い文章を読んでいただき大変恐縮です。ありがとうございます。
さて、この話には女神様が登場してきますが実際にそんなことは起こりません。しかし出会えたらいいな! こんな体験してみたいなということで描いてみました。
実は小説を描くのもほぼ初めてなため、みなさんのお目を汚していなければ何よりです。
また、読んだ本も少なくボキャブラリー不足名ため某小説からパクってしまっているところも多々ありますが、それは勘弁してください。
こうしたほうがいい。もっとここはこうしろ。などビシバシ指摘してください。
あと、もしもこんなところが良かったなどとあったらそれも教えていただけるとありがたいです。
最後に、ここまで読んでくださったみなさん。本当にありがとうございました。