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深淵を知る者  作者: Gary
遼遠のサンクチュアリ
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ゼタとの死闘

「俺はザンブルグ族の長ゼタ!俺にほふられた事、あの世で誇るが良い。」


 自分の背丈程もある巨大な戦斧を握る山賊の首領ゼタの腕の筋肉がミシミシと盛り上がり、青筋が雷鳴の如く浮き上がる。

互いの熱い吐息が、白い霧となって流れて行く。

ゼタの手下達は野次を飛ばし、叫んでいるようだが、目の前の強敵に集中している自分には届かない。

この強敵と戦うには、ジーク様から教わった魔力のコントロールを使い、初めから全力で挑まねばならないのだ。


 恐らく、あの巨躯から繰り出される一撃を真面まともに受ければ、立ち上がる事も出来なくなるだろう。

それは、あのネイザンすらも凌駕りょうがする程の威を放つ。

それ程に、様相から伝わるゼタの強さは常軌を逸している。


「どうした小僧…来ないのなら、俺から行くぞ!」


 自分から攻めないのではない。

ただ戦斧を構えているだけのゼタに、攻める隙が見当たらないのだ。

頭の中で描く攻撃のイメージは、ゼタの一撃で全て潰されてしまう。

だがそれは、自分の戦闘スタイルではない。

自分が持つ最大の武器は、ベルガー様より受け継いだ剣技である。

ベルガー様の剣技は、護る剣。

即ち、守勢の中に活路がある。


 ゼタの振り下ろしの斬撃が風を切り、遥か上段から襲い掛かる。

予想以上に速い…!

だが、直線的な攻撃ならば、いくらでも対処出来る。

流れに逆らわず、斬撃の軌道に長剣を合わせ、刀身に這わせる様に敵の攻撃を受け流す。

もしこの角度が少しでも狂っていれば、敵の攻撃の威力で剣が折れるか、受け流す事が出来ずに吹き飛ばされてしまうだろう。

この剣技は、憧れだったベルガー様に教えを請い、自警団の先輩達や他の誰よりも努力を続けて手に入れた、誇るべき宝なのだ。


 刀身を滑り落ちたゼタの攻撃の反動を利用し、長剣を一気に振り抜く。

しかし、鈍い衝撃と共にゼタの小手によって弾き返されてしまった。

やはり、かなりの猛者であろうゼタには死角がない。

大振りの攻撃後の隙は、利き手ではない方の左腕でカバーし、反撃を寄せ付けない。


 戦斧を引き戻し、態勢を立て直したゼタは、再び薙ぎ払いの斬撃を放つ。

姿勢を低くし、斬撃を長剣に這わせ、左真横からの攻撃の軌道を右斜め上へと跳ね上げる。

案の定ゼタの上体が浮き、胴がガラ空きになった。

こじ開けたこの隙を逃す事無く、長剣を振るう。

しかし、自分の攻撃がゼタに届く寸前で大きく吹き飛ばされてしまった。

恐らくゼタは、わざと隙を作ったに違いない。

戦斧の攻撃と、胴に出来た隙に気を取られ、自分に迫っていた回し蹴りに気が付かなかったのだ。


 かなりの衝撃を受け、地面を転がった自分は起き上がる事が出来ない。

身体中の骨がきしみ、意識が朦朧もうろうとしている。

恐らく、魔力のコントロールを使っていなければ終わっていただろう。

まだだ…生きていれば戦える…諦めない…。

ファクトの言葉が自分の身体を動かし、立ち上がる力が湧いて来る。


「あれでくたばらねぇとは…小僧、なかなかやるな。」


「ぐっ…自分は負けません…ファクトと約束しましたから…」


「あん?」


「次は必ず、ファクトを助けると…だから、こんなところで…負ける訳にはいかないんです!!」


「根性だけは一人前らしいな…。だが小僧、そんな体たらくで何が出来る?」


 確かに自分には余裕がない…。

かなりのダメージを受け、身体が自由に動かせないばかりか、魔力のコントロールも不安定になって来ている。

ベルガー様…こんな時、自分はどうしたら良いのでしょうか…。

その時ふと、ベルガー様の言葉が頭をよぎる。


「剣は力にあらず、武器を扱う者の力量こそ強さなのだ…。」


 剣は…力にあらず…。

自分が持ち得る武器とは何か?

ベルガー様から受け継いだ剣技、ジーク様から教えて頂いた魔力のコントロール、そして共に戦った仲間達…。

それは剣よりも強く、決して折れる事は無い。


 自分は再び剣に力を込め、高くそびえるゼタに向かって突撃するのだった――

ご意見、ご感想、評価など頂けたら私の魔力も滾りますので、どうぞよろしくお願い致します!

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