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夢の中の思い出

作者: 公賀 想


「次の授業何だっけ?」


「数学だよ。」


「そうだったかも!一緒に行こう。」






「今日も部活だよね?」


「うん。はるの迎えが来るまでまた駐輪場で話そ〜。」


「ありがと(笑)暑いから大変だね。熱中症にならないようにね。」


「ありがと(^^)」


空気が重くどんよりしている。私と彼だけが存在しているかのような世界。


───────────


そこで目が覚めた。

夢だと気づいた私は深くため息を付いて、夢の内容を忘れないようにメモをした。


もう二度と感じられないあの時を、夢だとしてもすがりつく。

自分が情けないと思う。



ここの所、この夢を見る頻度が増えている。

雰囲気はいつも大体一緒。大して面白いことがあるわけでもない。会話の内容が違うくらいだ。


週に一回は必ず見るこの夢に対して嬉しさや虚しさ、自分に対しての不信感や不安と様々な感情が湧き出てくる。


どうしたものか…。1人では抱えきれないような気がした。








「えー、普通に怖くね?」


彼女は中学からの友達のさよちゃん。

久々に2人で遊んだのだが、不意に相談してしまった。



「やっぱり怖いかな。」


「うーん、何回も見るのはちょっと怖いかなぁ。手招きとかされなかった?」

さよちゃんが、心配そうな顔で聞いてくる。


「いや!そういうのはない!!高校の時と同じような感じで…。普通に話して。ただ雰囲気がどんよりしてて、起きた時少し怖いかなくらい…。」


「そっか…。でもなんで今になってたくさん見るようになったんだろうね。絶対なんか暗示あるよね。」


「うん…。何だろう。恨みがあったのかな…。」


「それはないでしょ!夢占いとかでないかな?調べてみようよ( ´▽`)」



さよちゃんがスマホを取り出し、検索を始めた。



「亡くなった人、恋人…夢………。あ、あるっぽい!」


「なんて書いてある??」


「んーとねー、」



・亡くなった恋人が夢に現れる

自分の世界が狭くなっていて、自分の殻に閉じこもりがち。大切な人を亡くしたことで、色彩をなくしもう楽しいことなんて何も無いと思っている。亡くなった人がそれを心配して、元気に生きて欲しいと伝えようとしてることの現れ。


・亡くなった人が繰り返しでる夢

普段の状態で出てきた場合。自分が故人の死を受け入れて、前を向こうとしていることの現れ。

精神が安定してきているということ。



さよちゃんはスマホのサイトに書いてあったことを読み上げてくれた。



「結構詳しく書いてあったね。他にもいろいろあるよ。亡くなった人と車に乗る夢、食事する夢、電話する夢…。でも、今読んだ2つは結構いい事現してたね!」



「へぇ、夢占いってすごいね。なんか…安心したかも。自分も前に進んでる証拠なんだ。」


繰り返し現れるので不安になっていたが、意味を知って気分が楽になった。



「どんよりしてたのは、前に進もうとする中で少しだけ未練もあったからじゃないかな。でもそれってしょうがないと思うよ?完全に前向くなんて無理だよ。」


さよちゃんはそう言って笑ってくれた。


「そうかもね。良かった。気分が楽になったよ。ありがとう!」


「いーえ。がんばれ!はるっち!」






その日、家に帰った私は机の引き出しを開けて

過去の思い出に浸っていた。

少ない写真、一回だけもらった手書きの手紙。

夢を書き留めたメモ。


さよちゃんが言う通り、完全に吹っ切ることは多分無理だ。

思い出は大切にしなくてはいけない。

でも、私の心の幻までも思い出と認識するのはもうやめよう。

メモだけをゴミ箱に捨てて、引き出しを閉じた。



自分が思っていた以上に彼が大切だったこと。

それに気付いた上で、自分はこれからゆっくり前に進んでいく事にした。

辛いことあるかもしれないけど、

乗り越えるまで終わらない。


がんばろ(適当)

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