第46話 港町の活気
新しく
左遷先は異世界でしたが、提督は征服活動を始めます
の連載を始めました。
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こちらもお楽しみ下さい。
「あら、あらあらあら。ミリシアちゃん、いらっしゃい。お久しぶりね」
若い頃はさぞ美人だったのだろうと思わせる朗らかな笑顔を浮かべた恰幅の良い女将がカウンターから出てきて、ミリシアを抱きしめる。そのふくよかな胸に埋まったミリシアが腕をタップしてはじめて解放される。
「はぁぁぁ。女将さん、こんにちは。お久しぶりです。長めに取りたいんですけど、良いですか?」
「大丈夫よ。まだ寒さが酷いほどじゃないでしょ? 時期的に空く頃なのよ。いつもの部屋? でも、お二人よね?」
「あ、いつもの部屋で!!」
私が挟まるまでも無く、マシンガンのように交わされるトークの末、ミリシアがいつも泊っている部屋に決まった。女将に先導され一階の廊下、最奥の扉が開かれる。
中はリビングとキッチンが併設され、炊事が出来るようになっている。幾つかの扉も見えるので、この部屋だけで様々な事が完結出来ているのだろう。リゾートホテルのコンドミニアムを彷彿とさせる作りだ。
据え付けのクローゼットに荷物を入れ、二人でベッドに座り込む。新婚旅行みたいだなとらしくない事を考えていると、視線を感じてミリシアの方を向く。
「えと……。大丈夫だった? この部屋で……」
少しだけはらはらとしている様子が見受けられる小声が庇護欲を掻き立てる。外ではきりっと凛々しいのに、懐に入るとこういう感じなのは、ちょっとずるい。可愛すぎる。
「えぇ。とても魅力的です。折角港もあるようですし、新鮮な魚介類でも使ってみますか」
私の言葉に伏し目がちにしていた表情をぱっと明るい物に変えて、にこりと微笑む。
「じゃあ、買い物に行くわよ!!」
やっと持ち直したのか、いつもの口調で立ち上がるミリシア。
私は、その後を追い宿を後にした。
大きな倉庫が幾つか建っていたため見えなかったが、港はかなり立派で大型の船が何隻も係留されている。
朝、漁に出た船の獲物を扱う店では、中々カラフルな魚達が並んでいる。小型のイワシのような魚から、大型のカジキを彷彿とさせるものまで。色も赤、黄、青と中々に色とりどりだ。
脂がのって焼くと美味しい魚でお願いすると、ごま塩柄のサバっぽい魚と薄っぺらいヒラメかカレイのような魚をすすめられたので、買ってみた。
ついでとばかりに、町の概要などを訪ねてみると、話好きの大将だったようで、長々と説明してくれた。
そもそも、この町の来歴はジェクシャード領から隣領への物流のために作られたようだ。収益が莫大であり、隣領が衰退した際にジェクシャードが確保、再建したのが今の姿らしい。当初は小さな港だったのが、再建時に大型化し、付近の領のハブ港として使われるようになって、一層栄えだしたようだ。
歴史の話などを聞くのは好きなので、相槌を打ちながら話し込んでいたが、どうもミリシアはあまり興味が無いのか、ぷくっと不機嫌の証を生産していたので、早々に切り上げる。
魚は宿に配達してもらい、二人で小高い丘に登る。そこからは港町が一望出来る。港に近い一帯が石造りの黒っぽい色に染まっており、その周囲は壁を塗っているのだろう、白っぽい色に染まっており、建築時期が分かるのが面白い。黒い部分が創建当初の範囲なのだろうなと思いながら、伸びて、凝り固まった体を解す。
「どうかしら?」
ミリシアの挑戦的な笑みに、頷きを返す。
「港町なんて、久々に見ました。活気もありますし、ここでの暮らしというのも楽しみですね」
私の言葉が正解だったのか、満面の笑みが返ってくる。
さて、食事を済ませて寝かしつけたら、挨拶に行くべきかな。
海を渡っての商いに関しては、裏の世界にフリーハンドで任せている。水際での防衛が上手くいっているのか。何よりも、荒くれ者が多いであろう港町だ。先手を打っておく方が良いだろう。
そんな事を考えながら、丘を下った。
いつもお世話になっております。
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著:舞
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発売日:2018年12月10日
紹介サイト:
https://books.tugikuru.jp/detail_black_tablet.html
特典SS
とらのあな様:ミリシアと一箱を消費した日の話
WonderGoo様:コロッケを楽しむ話
町ほん同盟様:孤児院に賭博を持ち込む話
よろしくお願い致します!!




