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第13話 無力化しました

「ふふ、胸がすいたわ」


 結局泣きを入れた村長と穏便にお話しし、解決となった。ただ、若い衆は納得いっていないようなので、何かしでかす。向こう見ずなバカは向こうで嫌ほど見た。クライアント様の鉄砲玉はそんなものだ。


 急ぎ金目の物だけをキャリーケースに押し込んで、村を後にした。

 死体の処理は行政に頼めば良い。衛生問題になるので、そのくらいはしてくれる。


 村を救ったので饗応をなんて村長が言っていたが、丁重にお断りした。村長的には心証を良くしたいのだろうが、地に落ちるどころかもう既にマリアナ海溝の底を掘っている最中だ。


「追ってくると思う?」


 続けてミリシアが静かに聞いてくるので、大きく頷く。


「追わない訳が無いと思いますよ。このまま私達が町に着いたら身の破滅ですから」


 私達が言わないと約束しても、担保が無い。信頼関係なんて無い。やったもの負けだ。





 負けが嫌な人間は……。






 遠くから大勢の足音が迫ってきた。


「待てよ、お前ら」


 振り返ると、村の若い男女が十数人ほどで追いかけてくる。その手には、鎌や鍬を持っていた。





 こういう馬鹿をする。





「で、ご用件は何ですか?」


 ミリシアを押さえて、営業スマイル全開の私は尋ねる。


「金目の物、置いてけ。武器もだ」


 先程同行していた若いのが命令してくる。まぁ、武装解除した後は、殺す気満々なのは後ろの興奮した皆様を見ていたら、良く分かる。


「さて、どういう事でしょう。こちらに利益が無いですが……」


「ふざけんな!! 黙れ!! うちの村のもん持っていって偉そうな口っ」


 ドスッという音が辺りに響く。天使が通りそうな沈黙の中、わなわなと手を震わした若いのが胸に手を当てようとしながら、膝を突き、そのままばたりと崩れる。

 その背中からは矢が生えており、服には鮮やかな紅が徐々に広がっている。


「レード!?」


 まぁ、面と向かってもクロスボウが何かなんて分からなかっただろうなと。知らない武器に警戒なんて抱けない。

 男達の叫びと、女達の悲鳴が交差する中、私は射出済みのクロスボウをそっと地面に置いて、ぱんと手を叩く。

 虚を突かれた皆が、一斉にぴたりと止まり、黙り込む。


「皆さん、構え」


 その隙にと私が告げると、既に覚悟を完了しているミリシア達が得物を構える。


「さて、良く分かりません。大多数が武装して、金目の物を要求する。一般的な法律では、強盗です」


 私がにこにこと告げると、名状しがたい何かを見てしまった人間のような表情を浮かべて、男女はじりっと下がる。

 はぁ、取り敢えず意気地を折っちゃえば、人間なんてこんなものだ。勢い、大事。


「強盗は、幾ら殺しても罪になりません。では、皆さん」


 私は大仰な素振りで、腰を曲げる。


「さようなら」


 前かがみに隠しながらそっと胸元からスプレー缶を取り出した私は、眼前の男達の顔に向かって、噴射する。


「ぎぃぃえぇぇぇ……」


 トウガラシスプレーを浴びた男達が地面に転がり回りながら魂消るような声で叫ぶ。

 その地獄のような光景を唖然と見つめていた女達にも容赦無く噴射する。


「無力化しました。さっさと殺しましょう」


 のた打ち回る人の群れを睥睨し私が告げると、驚愕の表情でバードンが聞いてくる。


「殺すのか?」


「殺します。間違いなく村ぐるみで偽証する気満々です。でなければ追ってきません。これ以上、(かかずら)う気もありません。無駄です」


 私の言葉に、ミリシアもこくりと頷く。


「そうね。もう無理でしょう」


 ミリシアが毅然と歩む。転がる女の頭を無造作に掴むとざりっと止めを刺した。

 それを皮切りに、全員の処理を終える。





「はぁ……。胸糞悪かったな……」


 町への道中、バードンが苦りきった表情でぼそりと呟く。ミリシアを除く二人も似たようなものだ。


「まぁ、人間欲を出したら駄目だと言う事です」


 私の言葉に、疲れたような表情で皆がこくりと頷いた。

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