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チート生活始まるよー♪  作者: ネ申口鳥
8/16

三話

 かなりの期間が空いてしまいました……。申し訳ございません。

 まぁ、このように期間が空くことがしばしばありそうですね。仕事やらゲームやらなにやらで!




 ──ホーケチクサッ♪


 ──ホーケチクサッ♪



 翌朝、小鳥の何とも言い難い囀りで目が覚めた幼馴染み二人は、知らない部屋にしばし驚くも直ぐに自分達が異世界にやって来ていたことを思いだし、同時に郷愁からのため息を一つ吐く。


「おはよう、ボクの愛しい迅……」


「ああ、おはよう、オレの彼方……」


 二人で一緒に寝るのなんて幾度もあったが、これほど心が籠っていない挨拶は今までに一度たりともなかった。勇者になるとは口にしたものの、心はやはり完全には納得していなかったのだろう。


「……そういや、女王様が今日は適性を調べるとかなんとか言ってたよな?」


「んー……そうだねー。適性ってだけで詳しくは教えられていないけど、多分異世界あるあるの魔法が使えるか使えないか、とかだと思うよー」


 「それも小説家になろうってやつ?」と返してきた迅に、彼方は一つ頷きで肯定する。


「魔法か……やべ、ちょっとワクワクしてきた!」


「RPGみたいに【炎よ燃え上がれ!】って唱えたら、炎がボワーッと手から出たりするのかなー?」


「メ○ゾーマとかファ○ガとか使いたいよなっ」


「喋る武器でフィア○ルフ○アとかもいいねー」


 先程までのテンションの低さはどこに行ったのか、といいたいほどに気分上々で話題に盛り上がる二人は、メイドが呼びに来るまで子供が将来は警察官になりたいと瞳を輝かせて語るみたいに夢を膨らませていた。







 一方その頃、神を信仰しているフリをしている男と、影に新しき世界への扉を将来開かせるほどの衝撃を受けて、完全に監視を忘れさられていた男とも女ともつかない人物を抜けた勇者候補はというと、


「…………強烈で鮮烈な囀りだったわ。まさかア○ゴさんやセ○の声に激似なんて……恐ろしい鳥っ」


 相変わらず表情は変わらないが、その声には驚きや喜び、そして笑声しょうせいが複雑に混ざり合っていた。表情には出ないが感情は豊かなようだ。


「ふう……起きましょうかね。間者はいないようだし、着替えるなら今ね」


 そういうと少女は着ていた寝間着をハラリと脱ぎ、その女神と対等に張り合えるほどの魅惑の肢体を露にする。思春期真っ盛りの少年だと鼻血出すか興奮し過ぎて倒れてしまうのどちらかであろう。


 中年オヤジなどだと盛った畜生ヨロシク、理性と一時的サヨナラして警察沙汰で逮捕、裁判で敗訴確定になる行動に移るだろう。


「さて……」


 昨夜着ていたジャージを着用しようとすると、コンコンとノックする音が扉から聞こえ、すぐに昨夜ガウンを渡してくれたメイドが声を掛けてきた。


「どうぞ」


「失礼しま────襲っていいですか?」


「お前はいったい何を言っている?」



「すいません、つい昨日からの悶々した気持ちに女神のごとき裸体を拝謁させていただいたことから本音が漏れてしまいました」


「お、おう……」


 そばかすがチャーミングなおさげのメイドさんの告白に、まさかの同性に貞操の危機を朝から感じるとは予想だに付かなかった桜華は、気の利いた返事が出来なかったことに項垂れる。


 だがしかし、ここでヘタなことを言えばヤられるとも……。



「私は特殊性癖よ、キリッ」



 でも、桜華は某大型動画サイトで鍛えられたコメをしてしまった。それも無意識下でだ。



「同類ですね? ではどんなプレイをしますか? アナ──」


「言わせねーよっ!?」



 だめだコイツ、早くなんとかしないと……と、項垂れる桜華は自分のことを棚の上に置いている。


 どうやらいろいろとこのメイドとは相性は悪いようだ。いや、ある意味では相性合っているのではあるが……。己の操を無視したら抜群かもしれない。


 経験があるのであればもしかするともしかするとだが、あいにくとそういった男女間で執り行われる行為に励んだことは一度となく、一人で慰めるというのも月一あるかないかだ。


 某大型動画サイトならば、そのような下ネタを普通にコメ(はなす)が、所詮ネットはネット、現実とは違う。


 現実でだと痴女扱い確定であろう。現実は世知辛いからね!


 ……だがまぁ、



「……好きという想いを抱いたなら、はっちゃけてしまいそうだけれど」


「はっちゃけましょう!! さあ! 今すぐベッドイン! 幸いなことにベッドありますから! 某はいつでもウェルカムですから! デュフフ……はぁ……はぁ……じゅるっ……」



 そうだった、駄メイドが居たんだった……と溜め息を付き、タイミングよく開けっ放しのドアから何事かと覗く、変態メイドとは別のメイドさんに「これ、どうにかしてくれるかしら?」と頼む。


 直ぐにそのメイドさんは足早に人を呼びに行く──ではなく、少々お待ちくださいと一礼して、その場に立ち尽くす変態そばかすメイドを一睨みする。



「シャニー……日頃私が言っていますよね?」


「え…………えっと……な、なんだったかにゃぎゃぁあああぁぁぁぁっっ?!」


「貴女の性癖にとやかく口出しはしない。でも仕事中にそれを出すとお仕置きする……と、今までで約二百回近く注意してきていましたよね? ね?」


「ぎぇしぇぇええぇっ!!? われわ~~~われりゅにょーーーっっっ?!!」



 年頃の男性なら見惚れるほど素敵な微笑みを浮かべるメイドさんだが、シャニーと名を呼ばれた変態メイドの頭を掴み、そのまま持ち上げるという暴挙を取っている。


 いや、お仕置きだから暴挙とは言わないか。



「アイアンクロー……生で初めて見たわ……!」



 四肢をジタバタ暴れさせている変態メイドだが、桜華はなかなかに有名だが実際にやろうとしてもそうそう出来ないお仕置き技の一つを目撃し、感動にうち震えている。


 変態メイドがぐったりする頃まで、このような光景がこの部屋には続いていた。 








とある部屋にて若干カオス空間を継続している頃、神に祈りを捧げている(フリをしているだけだが)青年を、一人の騎士が女王の間へと案内するために向かっていた。


「……まったく、何故にこの私が若造一人を迎えにわざわざ脚を運ばねばならんのだ!」


 胸元に様々な金や銀色の勲章を付けている騎士──ゲレン=マクダーンといい、中将という高い位に属している。


 性格は察する通りにプライドがとても高く、貴族階級主義で下々を金を採取する家畜としてしか見ていない。そんな人物が勇者といえどもどこの馬の骨とも知らない若人を直々に迎えに行くというのは癪に障るどころではない。女王からの命でなければその旨を伝えに来た兵を殺している。


 侯爵家の生出でなければラツィオも階級を与えはしないし、勇者(なると口にした者に)に対し一般兵だと失礼に中ると配慮をして呼びに向かわせるためにゲレンをわざわざ向かわせない。ゲレンを使わねばならぬほどに人材がいないのである。


 そんな内心で疎まれているゲレンだが、能力がそこそこあるのもまた頭痛の種だった。


 すれ違う兵やメイドに睨みを利かせながら悪態を吐きつつも、コウマの与えられた部屋へと到着する。憂さを少しでも晴らすためにかノックもコンコンではなくゴンゴンッと荒い。


 「勇者殿、起きているか? 起きているならばさっさと出てこい、女王が御呼びだ」


 ノックしてからすぐに中から「すぐに開けます」と若者――コウマが返事を返してくる。扉近くに居たからか言葉通りにガチャリとドアノブが回されて扉が開かれた。


 「すみません、お待たせしました」


 「ふん、謝るならばもっと直ぐに出てこぬか」


 横暴な態度と見下した眼差しを隠そうともしないゲレンに対して、コウマは申し訳なさそうに頭を下げる。勇者が頭を垂れたことに少しは溜飲が下がったのか、


 「ついて来い」


 と一言、返事を待たずに謁見の間へと踵を返す。これではぐれようが自身は迎えに行ったのは事実であり、迷子になったならばコウマがしっかり着いて来ないのが悪い。そんな考えがゲレンの当たり前だ。寧ろ侯爵であり階級持ちの自分が出向いたことに感謝し、敬うべきだと思ってもいるだろう。


 思うというか道中にそのことをきちんとついて来ているコウマに強い口調で述べているのだが……まあ、それがゲレンという人物だった。


 道を邪魔しないために端に避けて首を垂れる兵たちに、「また始まった」とか「可哀相に……」とか思われてるなど知らずに、そのようなことを謁見の間に着くまで口にし続けた。








 ところ変わって朝からイチャイチャしている(本人たちは普通にしているだけだが)二人の下にはシャーマンであるイレーナが出向いていた。歳が近いであろう二人と少しでも友好を結べたらという親心からの命であった。


 ちょうどメイドが二人への着替えを届けにと、食事が出来たと呼びに訪れていたところに鉢合わせる。


 「これはイレーナ様、どうなさいましたか?」


 「はい、ラツィオ様から勇者様方を御呼びにと命ぜられたので迎えに来ました。すみませんがお食事は後でご案内しますので、貴女はお仕事にお戻りになって下さい」


 「承知しました。では失礼します」


 お辞儀をしてからメイドはこの場から去る。扉は開け放たれていたためにそのやり取りは二人から見れており、メイドのその仕草にとある少女がテンション上げていたのは……まあ、この城にいる限りはお約束になりそうだ。


 隣の幼馴染はひとまず置いておいて、迅はイレーナに声を掛ける。


 「おはようございます。えっと……イレーナ様」


 「はい、おはようございます勇者様。私のことはイレーナと呼び捨てで結構ですよ、ジン様。それと無理に堅い言葉遣いなされなくてもよろしいですよ?」


 「そんじゃお言葉に甘えるよ、イレーナ。オレのことも様付けじゃなくてもいいぜ」


 「それでは公式の場以外ではジンさんとお呼びさせて頂きますね」


 ふわりと微笑むイレーナに迅の心拍数が少し上がる。それを面白くないと感じる幼馴染の少女は迅の臀部をギュッと抓りあげる。突然の痛みにぎゃあっと声を上げた迅を無視して、彼方もイレーナに挨拶を交わす。


 「おはよー、イレーナちゃん。迅には気を付けたほーがいいよ? むっつりスケベだからねー。昨日だっておっぱい触られたし……」


 迅から庇うようにイレーナの前に出て、大げさに胸を隠す彼方に、慌てて迅はあれは事故だと叫ぶも「ボクの胸どうだった?」と返されたのに「あ、え? そりゃ柔らかくて気持ちよかったけど」と返答という墓穴を掘ってしまう。


 彼方に揶揄われるといういつも通りのやり取りをイレーナはくすくすと可愛らしく笑う。落ち着くのを見計らい、イレーナが謁見の間まで案内を始めるまでに十分ほどの時を有した。





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