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チート生活始まるよー♪  作者: ネ申口鳥
6/16

一話



 神殿の地下にて行われていた[勇者召喚]の儀式。


 シャーマンであるイレーナが自身の身体の中を廻る命の滴を使い、画いた魔方陣が眩い光を放った。



 そして――――



「――う……こ、ここ……は…………?」


「な……何か、暗い……ボクの目が悪いのかな……?」


「……い、いえ……実際に光量はあまり無いようね」


「人……がいるようですよ、皆さん」


「…………ひっ…………ど、どどど、どうなって……ひぃぃっ……!」



 光が晴れると、そこには未だ成人していないであろう若き男女、合わせて五人の姿が忽然として顕れていた。


 赤い髪の色をし、ちょっと鼻ペチャな青年と、その男の子に抱き付く糸目で鼻が高い女の子。


 薄暗くとも表情がまったくと言ってもいい程に顔の筋肉が動いておらず、驚いていないように見えてしまうグラマラスな少女。


 司祭服をその身に着衣し、穏やかな雰囲気を纏った、この中ではきっと最年長になるであろう青年。


 そして異様に髪が長く前髪すら膝下にまで達しており顔は判別出来ず、体型も細く男なのか女なのか判別がつけづらい一人の人間。人間というかもう蠢く髪としか見えない。


 その五名は各々必死――一人ほど表情に変化はないが――に状況を理解しようと周囲を見渡し、イレーナやラツィオを筆頭に各国の王達の存在に気付く。


「――ぁ……あんたら、誰だ? オレ達さっきまで学校から帰ってたとこだったのに……。ここ、どこなんだよ……?!」


「落ち着いて下さい、勇者様。ここは惑星エドル。その内に数ある一つの国、アルファード王国です」


 イレーナの後方にいた数人の中の一人が、コツコツと靴音を鳴らしながら前へと進み出、赤髪の少年の問に答えた。


 その歩いた仕草だけで気品を感じさせ、身に纏った雰囲気が身分の高い者だと一学生でしかない少年――赤城迅にさえ感じとられ、日本人らしく姿勢を無意識の内に整えていた。


 いや、迅だけではない。腰を抜かしたように座り込んだ不気味な人物以外、召喚された者皆が姿勢を正していた。


「自己紹介を――と言いたいところではありますが、このような暗い場所では何かと不自由ですので場所を変えることにいたしましょう」


 ラツィオがそう言うと皆も頷き次々と現在いる地下の部屋から出て行く。召喚された若者達も暗い部屋にいつまでもいるよりは、とそれに続く。


 移動する間、今までテレビの中でしか見たこともない石造りの通路に「まるでボクら、RPGのパーティーみたいだね」と糸目の少女が呟き、その意味を知る者達が確かにと頷いていた。





 壁に備え付けられた松明の灯りを頼みに、転けないよう足元に気をつけて歩き、突き当たりの階段を昇り一つの扉を潜ると、そこは教会を思わせる広い部屋に出た。


 均等に列べられた椅子。中に日の光を取り入れるステンドグラス。その下には壇上もあるが、それ以上に目を引く慈愛を感じさせる美しい女性の像。


 教会を思わせると書いたが、まさしくここは教会なのであろう。


「あんたがそこの壇上に上がったら、違和感ないよな。神父服着てるし」


「そうですね、確かにいつもあのような場所にてミサを行わせていただいたりしていますし。先ほどの地下の部屋よりずっと落ち着く場所ですね」


 実際には神父服ではなく司祭服なのだが、いちいち訂正するほどのことでもないと、青年は赤髪の若者にそう答えた。


 冷静さを保つためか、もしくは現実を直視しないためなのか、若者達は観光しているかのような会話を交わしつつ王達の後を追う。


 教会から更に歩いて五分ほどだろうか。高さは軽く五メートルはありそうな大扉が姿を現した。その扉の両脇にはまさに[RPGの兵士!]と叫びそうになるほどの鉄の兜や鎧、手甲や剣を装備した兵士が二人待機している。


 女王達が立ち止まらなくてもいいように、二人の兵は息もピッタリに左右から扉を押して開けた。そんな兵二人を見て赤髪の少年と狐目の少女、グラマラスな女の子はテンションが上がっていたりする。


 何を盛り上がっているのかは当事者達は分からなく怪訝な表情をしたが、それも一瞬のことだった。


 そんな兵士の横を通り過ぎ、扉の先に見えたのは円形の台が中央に据え置かれた円卓の間――会議室とも言う――だ。


 広さは学校の教室二つ分はあろう。数多く椅子が置かれており、上座にラツィオが座ると、イレーナはその後ろに立ち、他の王達も座っていく。


「さあ、勇者様方も遠慮なさらずにお掛けになって下さいませ」


 上座に座る女王に促され、各々が空いた席に座る。赤髪と狐目の若者以外はそれぞれが席一つ分開いている辺りに距離感を感じさせる。


 特に髪が異常に長い不気味な人物については、一番近いグラマラスな娘でも二つ離れた席に着いていた。


 王の中でも、その男かも女かも分からない存在に近い席――と言っても席六つ分は開きがある――の、目付きが鋭く、見た目はいかにも暴力団の頭的な王様は舌打ちを隠しもせずにしたほどだ。


 誰も咎めない辺り、同じようにその異様さから嫌悪感を抱いているのであろう。


「コホン……。では、皆様、改めて自己紹介をしていきましょう」


 「先ずは(わたくし)から」と、ラツィオは胸元に手を当てる。


「私はラツィオ=ド=スイクゥ=サマンサ=アルファード七世。名で分かる通り、この国アルファード王国の王を担う者です」


 やや垂れ目気味の黄金色の瞳、後ろ姿を見た時に腰まで伸びていた金の髪。微笑みを浮かべている唇には赤い紅を塗っている。


 胸元がやや開けた淡い桃色のドレスには、金の刺繍が襟や裾など所々に施されており、金の髪とマッチしていた。


 ティアラに首に掛けられたネックレスには大きな宝石を主とし、中小様々な宝石類がちりばめられている。指輪は薬指に填められたピンクダイヤのみ。


 身長はヒール分を抜くと百六十と少しといったところ。胸の膨らみは巨乳の部類に入る辺りか、ラツィオの白い肌と見えている上乳に視線を向けた後に迅が幼馴染みの胸をチラッと見て足を踏まれたりしていた。


「では、はい、次はわたしが……。え~、わたし、マンチェスター=イーストンと申しまして、イーストン商業都市の代表――王みたいなものですね、はい――を務めさせていただいてます、はい。いやはや、この中では見劣りしてしまいますよね~、はははっ」


 眼鏡を掛けた、どこか狸を彷彿させる小肥りの男性。歳もなかなかに行ってそうで、へらへらと下手に出て人当たりが良さそうに見える。見えるだけで実際はどうかは分からないのだが……。


 着ている服は地球でいうところの十七世紀頃にブームとなった衣服。


 上着は黒地のカントリー・フロックでズボンは白地のピッタリとしたパンタルーン・トラウザーズとブーツだ。


 これで巻き髪のカツラでも着けていたら完璧だったのに、とスタイル抜群の少女は思っていた。表情が動かないから関心を持っていないように見えているであろうが……。


「それじゃ、次は儂かの~」


 そう口にしたのは、この中でも最年長であろう御老人だ。白髪で眉毛や髭も白く、「仙人じゃよ」と言われれば信じてしまうだろう。


 身長も子供と大差ないほど低く、椅子に腰掛けるのも軽くジャンプしてからであった。


「儂はダラス=バラスじゃ。見ての通りにドワーフ族でのう、人と亜人の国――ジスターン共和国の首脳を務めとるわい」


 身の長は低いが、その体躯はガッシリとしており、精気溢れる若人のようだ。だが顔は老人であって、どこかちぐはぐ感を否めない。


「ふむ……。ドワーフが珍しいかね?」


「あ、えっと……はい……」


「ボクら、初めて見るかと……」


「ほほう。じっくり見てくれても構わなんぞ? まあ、老い耄れじゃがな」


「あ、あはははは……」


 日本人ならではの愛想笑いを浮かべばる若者二人。ある意味、日本人の鏡であろう。良いか悪いかは別としてだが。


「んじゃ、最後なのが気に食わねぇが……ま、取りを務めるってことで我慢しといてやる。有難く思っておけよ、ガキどもが」


 とても偉そうにそう言った人物の格好は、「ヒャッハー! 汚物は消毒だぜーっ!」で分かる方は分かるであろう、アレにとても近い。


 違いがあるとすればモヒカンかバーコードの違いだけ。


「……………ピッ」


「百十円ね」


「「「ぶふぅっ!?」」」


 とある二人の呟きに、その意味がわかっている三人が噴く。他は突然笑った三名に怪訝な表情を向け、自分が笑われたと思った――間違いではない――バーコード頭の男が、ギロッと睨み付ける。


「くくっ…………こ、こほん……。す、すみません……。一昔前に流行ったジョークを言われてしまい、笑ってしまいました。申し訳ございません」


 司祭服の男性がそう誤魔化すと、ヒャッハーさんはとりあえず納得し、呟いた二人を睨んで気を紛らわして鎮める。「フン……ハザン独立国家のヤザン=ハザンだ」


 鎮めてはいるが気分は害しており、それだけ言うとヤザンは頬杖をついてそっぽを向く。


 これで王達の紹介は終わり、ラツィオの背後に控えていたイレーナが一歩前に出て、


「イレーナ=ラン=アトリ……です。ここ、アルファード王国のあらゆる祭事を行わせて戴くシャーマンを……務めさせていただいております」


 それだけを告げると、イレーナは元の位置に戻る。控え目な印象を受けはするが、鋭い者は、もしくは目が良い者はイレーナの顔色の悪さに気付いていた。


「ええと、では次はわたし達の番ですね」


 自分からで良いかを視線で尋ねると、他四名は頷いきて返した。


「わたしの名前はコウマ=カムイ。とある国で司祭を務めてはおりますが、わたしの全ては神に使えさせていただいていると自負しています。身の程知らずかも知れませんが……、ははは」


 「神父と司祭って違うのか?」と、隣の幼馴染みに訊いていた赤髪の少年が、コウマの自己紹介が終わったのを見て慌てて立ち上がる。


 何故立ったのか、と内心で首を傾げている王達だが、いかんせん日本人だからと言っても分かりはしないだろう。


「オ、オレは赤城――じゃなくて……ジン=アカシロです。高校二年生です」


「ボクはカナタ=ヒイラギといいます。ジンの幼馴染みってやつですね」


「腐れえ――」


「おやおや~? 迅は何か今言ったかな~? あ、もしかしてボクをオカズに初自家は――」


「大切で大好きな幼馴染みですっ!!」


 上下関係露呈。色々と弱みを握られているようで、迅はそう叫んだ後に机に突っ伏くした。尻に敷かれた夫とは今のこの姿を例えるのであろうか。


「夫婦漫才乙」


 と、表情があまり動かない少女は心の中で呟いていた。


「じゃ、次はわたしね。トウカ=ノノミヤよ」


 それだけ言うと[四ノ宮桜華]は黙り、言外に自己紹介は終えた、と述べていた。


 先の三名に比べると口数が少なく、また動かぬ表情からは感情も何を考えているのかも読み取れず、王達は経験から、このような者ほど要注意だと認識する。


 こちらも表情には臆面も出さず、最後にあまり関わりたくないタイプの不気味な存在に視線を向けた。それだけで渦中の男だか女だかも分からない者は、口から小さく悲鳴を上げる。


「…………タ…………す……」


「あぁ? 聞こえねぇよ。もっとはっきり喋れ、クソガキッ」


「ひぃぃっ?! たた、タダノ=タナカ……です……」


 先ほどの件があってか、ヤザンがタダノ=タナカと名乗った者を力強く――それも射殺さんばかりに――睨み恫喝すると、肩をびくりと跳ねさせ、なんとか聞き取れるぐらいの声量を出す。


 不気味で気持ち悪くはあるが、かなり気が小さいようで、使いやすくはあると判断する。場合によっては他の勇者を逃がすための捨て石などに、と。


「……コホン……自己紹介はこれで終わりましたね。では、質問などはありませんか? 例えば、ここがどこなのか……など」


 ヤザンは幾度も舌打ちをし、若者達の内三人は名前を聞いてからクスクスと笑っており、場の空気があまりよくない。わざとらしく咳を一つして仕切り直すラツィオの発言に、司祭服の若者が小さく手を上げて質問をしていいか許可を取る。


「どうぞ、勇者コウマ」


「ありがとうございます。最初にアルファード様が仰有っていた惑星エドルとはわたしは聞いたことがありません。その、もしかしてなのですが――[この世界]はわたし達のいた世界とは違うのでは……?」


 考えたくない……考えないようにあえてしていたことを光魔が訊いたことに、右側に座る二人の表情が緊張に固まる。


 頭の隅では既に理解していたが、感情がそれを認めたくなかった。


 しかし、次のラツィオの答えに否応なしに認めるしかなくなる。


「はい、この世界はあなた方のいた世界とは異なる世界です」


 沈痛な面持ちになる者がいるが、更に気になることを尋ねる。


「……では次に、その[勇者]というのは?」


 我が意を得たり、と内心で微笑してはいるのだが、その顔には申し訳なさそうな色を表していた。

「その件の問いを答えるために、今この世界で起こっている出来事を説明せねばなりません」


 それからラツィオは魔王により世界が危機に瀕していることを説明していく。各王達も被害などを織り交ぜる。その内容は荒唐無稽にしか聴こえて来ない……が、認めるしかない。


「――ということなのです。もう、私達には抗う力もほぼ残っておらず……誠に勝手なのですが、藁にもすがる思いで異世界から勇者を――あなた方を召喚することとなったのです」


「……なんか、ほんとに勝手だな」


「申し訳ございません……」


 それ以降、沈黙が場を支配する。どれだけ時間が経っただろう。狐目の少女が小さな声で、一つ気になったことを確認する。


「……ボクたち、帰れるの?」


 それにはイレーナが頷き、


「召喚があるように……召還も存在しています。今から五百年ほど昔……勇者を喚び、また還すことにも成功しています」


 以前にも魔族との戦いがあったと追記し、そう返答した。


 それを聞き彼方は一度目を瞑り、数瞬の後にこう答えた。


「…………ボクはやってみようかな、勇者を」


「……マジで言って――るよな、彼方なら……」


 彼方は別に善人ではないのだが、困ってると言われて「あっそうですか、大変ですね、それじゃ」と、冷たい発言が出来ないぐらいの人情はある。だが、最初に述べたように善人ではないので、目の前の人物だけでなく全てを助けようとは思いもしない。


 何故そこまでして人助けをしないといけない? そんなのより遊んだ方が時間を有用に使って過ごせる。あくまでも『目の前』だけだ。可哀想や同情ぐらいは感じても、それだけ。


 幼馴染み歴=年齢という付き合いの迅も、彼方ならばそう言うであろうと半ば予想していて、一つ小さく息を吐く。


「俺も、勇者ってやつをやるか……」


「あ……ボクのこと、気にしないでもいいよ? これはボクが決めただけで……」


「そういうわけにもいかない。女がそう言ってて男が引き下がるってことが出来るかよ。…………それに心配だろうが……」


「迅……え、えへへ……ボク、嬉しいよ……♪」


「フ、フン……」


 突然の甘々な空気に会議室にいる面々はなんとも言い難い表情をし、


「リア充への贈り物は爆弾でいいかしら?」


 無表情の彼女は真剣なのかネタなのか分からない声音で、そんな物騒な発言をした。多分画面の向こう側の皆さまの心の声を代弁したのであろう。


 そんなリア充爆発しろ的な二人は、周囲の視線が集まっていることに気付き、耳まで赤くして俯く。

「あ、あはは、いやー、青春ですね。えっと、勇者の件なのですが、神に使える者としては困った方々を見捨てることなど出来ません。僭越ながら、わたしも志願させていただきます」


 甘い空間の後で気まずい思いをしつつ、光魔はそう告げ志願した。


 五人の内半数以上が請け負ってくれ、流れ的にも残り二名もと、期待したのだが、


「わたしは様子見ね。この人もそうみたいだし、ね?」


 あっさり裏切られた。さらに隣に座る顔が微細も前髪で見えない人物の代弁を続けられた。それを肯定するように小さく何度も頭を縦に振っている。


 やはり、この若者達の中で一番油断ならないか、と内心で思いながらも表情は残念そうにして「仕方がありません。強制するつもりはないですし」と口にする。


「別に断ったわけではないわ。あくまで様子見よ。前向きに考えてはみるけれど、過度な期待はしないでちょうだいってことよ」


「いやはや、そのお言葉をいただけただけで、ありがたいことですな、ははは」


「そうだのぅ。断られたらどうしようかとヒヤヒヤものじゃった」


 空気を変えるかのように殊更明るめに、マンチェスターとダラスがそう言う。そのおかげか、会議室の中の空気が和らぐ。ラツィオはそれで今回の話はここまでか、と見極めて、


「――では、いい時間でもありますし、今日はここまでとしましょう。勇者様方、急拵えではありますがお食事のご用意をしておりますので、お召し上がりになって下さい」


 微笑んでそう口にし、イレーナが案内する旨を伝えると皆が立ち上がり、先導する若きシャーマンの後について往く。


 そして着いた部屋には縁に金の刺繍が入れられた純白のテーブルクロスが敷かれた長大な台が中央に置かれ、銀製の燭台が都合三つ台上に設置されていた。


 そして何よりも目につくのは――


「迅、迅! メイドさんだよ! 本物のメイドさん!!」


「お、おう……」


 黒地の衣服に白のヘッドドレス、テーブルクロスと同じ純白のエプロンを着衣した十名ほどのメイドの姿であった。


 台の上には燭台の他に、旬の食材と脂が滴りそうな肉料理などなどの豪華な食が既に用意されているのだが、日本でいう秋葉原などに点在しているメイド喫茶のメイドではなく――こちらもこちらで良いものがある――、城に仕えた本家本元のメイドである。ザ・メイドである!


 男の子である迅がはしゃぐならまだしも、女の子の彼方がテンション上がっているのは、その衣装が琴線に触れたからか……。


「アレかな? 夜の御ほモガッ?!」


「うん、とりあえず落ち着こう。落ち着いて席に座ってメシを食べよう。な?」


 どうやら思春期の男の子のような思考を働かせていたようだ。幼馴染みの変貌に驚くどころか、慣れた手付きで鎮まらせている辺り、いつものことなのであろう。


 そういえば先ほどの自己紹介の時にも変なこと――尊厳を尊重するために内容は省く――を言いかけていたな、と勇者の一人が心で呟いていた。


 着席するときにメイドが椅子を自然な動作で下げた瞬間に、赤髪の少年が少女の眼がキュピーンと光ったのを見計らい、即座に頭を押さえて無理矢理座らせている姿を横目に、スタイルのよいラツィオよりも女性らしい体つきの少女が慣れた仕草で椅子に腰を下ろす。


 また、その隣では髪が本体ですと言わんばかりに長く髪を伸ばして顔や体躯を隠している人物がおどおどしながら席に着いた。薄気味悪いその存在にメイドは表情を一切変えることがないことに、件の狐目少女が――以下略。


 皆が食膳に付いたことを確認すると、ラツィオが声をかけて会食が始まった。




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