引き籠る親友くん 前編
TS娘ちゃんと親友君は一緒に暮らして居ます。
それはもう、毎日が幸せ・・・とはいきません。
今、ふたりは些か困った状態にいるのです。
深夜になり、TS娘ちゃんが大学とバイトを終えて帰ってきました。
TS娘ちゃん「ただいまー」
親友君「お帰りなさい・・・」
親友君は、部屋の隅で布団を頭から被って座っています。
どうやら今日も終日、その恰好のままだったようです。
親友君に、以前のような快活さはありません。
ただ俯き、己の無力さに打ちひしがれているのです。
気が付けば涙を流し、膝を抱えているのです。
TS娘ちゃん「遅くなってごめんね?ご飯作るから、ちょっとだけ待ってね?」
親友君「・・・うん」
そう言って台所に立つTS娘ちゃん。
手早く料理に取り掛かります。
ご飯は朝炊いた残り、お味噌汁も具の豆腐とわかめ。あとは野菜炒めで、ふたり晩御飯を頂きます。
お腹がペコペコだったTS娘ちゃんは、あっという間に平らげてしまいますが、親友君の箸は進みません。
親友君「ごめんね・・・。俺、役立たずで」
親友君は、現状が辛くて仕方ないのでしょう。涙を浮かべながら、ご飯を食べています。
TS娘ちゃん「そんなことないよ。俺もバイト増やすから心配しないで。それよりも、今はゆっくりしよ?」
親友君「うん」
大学進学を期に、一人暮らしを始めたTS娘ちゃん。
親友君は、TS娘ちゃんの近くで就職をしたのですが、困ったことにそこはブラック企業だったのです。
日々追及されるノルマ。
碌に行われないOJT、研修。
先輩からのフォローも助言もなく、責任だけは負わされる。
成果があっても褒められず、失敗だけは大事として取り上げられてノルマが加算。
毎日毎日、叱責だけ。
仕事は深夜まで続き、休みの日もただ疲れを取るだけの生活。
そんな中で、親友君は壊れてしまったのです。
仕事を辞め、行き場のない彼はTS娘ちゃんを頼るしかなかったのです。
TS娘ちゃんにしてみれば、久々に会った親友が変わり果てた姿になっていたのです。
・・・そこに、嘗ての自分を見たのかもしれません。
急に女の子になり、何が何だかわからないまま適応を迫られ、心身を疲弊させた自分を。
TS娘ちゃんは、親友君を放って置けませんでした。
自分の部屋で一緒に居ようと、親友君を迎えたのです。




