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未練・・・

休日には、部屋の片づけをする。

お気に入りの服や下着類は、タンスやクローゼットへ。

教科書や参考書は勉強机の、漫画や小説や雑誌類は机の隣の本棚へ。

メイク道具やアクセ類は、それぞれポーチと小物入れに纏める。

そして・・・

男だった頃に読んでた雑誌や漫画、着ていた服は・・・押入れの一番奥に。

もう男物の服に袖を通す事は無いかもしれない。

男の頃には好きだった車やバイク、野球やスポーツ、そして・・・グラビアも、女の身となった今では興味はない。それでも、もし男に戻れたなら・・・と未練がましく手元に置き、時々は押入れから出して眺めたりもする。

「興味は無くなっても、未練は消えないのな・・・」

ひとりの部屋で、誰に言うでもなく、ぽつりと呟く。

男の頃から使っている、この部屋。

昔から勉強机にベッドはあったけれど、今では姿見の鏡やメイク用の鏡や小さい机、ヘアアイロン、ぬいぐるみ・・・もう女性の部屋になっている。

まるで昔からそうであったかのように、違和感なく過ごしている。

・・・最初は違ったのにな・・・。

机の隅やベッド周りの埃を落とし、床に掃除機を掛けながら、ぼんやりと思い出す。

男だった頃のことを・・・。

小さい頃から活発でよく走り回ってた事も、野球が好きで部活に熱中してた事も、親友や友達とこの部屋で馬鹿な話を飽きもせずしてた事も、今となっては全部夢だったのではないかと思えてしまう。

「俺は男なんだ・・・」

そう言い続けて来たけれど、今の自分は・・・。

男の頃よりも、小さくなった背。細くなった手足。筋肉も減り、代わりに胸や腰回りは丸みを帯びている。

昔なら出来た男同士での馬鹿な話も、今はもう恥ずかしくて出来なくなってしまった。

仕草だってそうだ。

男のように大口を開けて笑うなんてはしたないって思うようになったし、男同士で背中を叩き合うような事も出来ない。

ちょっとした仕草一つでも、女の子として見られたいって気持ちが先に出てしまう。

長く伸びた髪が頬に触れた時、今ではもう、自然に耳に掛けるようになったしまった。

少し小首を傾げて手櫛で髪を撫でれば、親友や友達もつい顔を赤らめてしまう。

新しく買ったピアスも、襟元を飾るネックレスも、「良いね」「可愛いね」「似合ってるね」って言って貰いたくて仕方ない。

ただ馴染みのある場所に遊びに行くだけなのに、ついついオシャレをしたくなってしまう。

何を着ようかな?

スカートも少し短く見せたいと思えば、ウェストで折り返してみたりと、いろいろ気にしてしまう。

俺は・・・

俺はもう、心の中では女である事を受け入れてるのだろうか・・・。

男に戻る方法なんて見つかっていないし、この先一生女のままである事を受け入れてるのかな・・・。

気が付けば、掃除機を持ったまま、茫然と立ち尽くす自分が居た。

ぽろぽろと涙を零しながら、もう男には戻れない事を認めるしかない自分が居た。

突然身に降りかかった理不尽に対して、何も出来ずただ泣くだけの自分が居た。

抗う事も出来ず・・・。


ティロンティロンティロン・・・


スマホが時間を知らせてくれる。

そろそろ出掛ける準備をする時間だ。

両の手で涙を拭い、大きく息を吐く。

掃除機を片付けて、手を洗ってからメイクに取り掛かる。

アイシャドウは強くなり過ぎないように・・・。

チークも濃すぎないように。

リップは・・・あいつはピンクが好きだったな。ちょっと濃いめにしようかな?

髪は癖が目立たないよう、ちょっと強めに巻こう。

・・・今度、ストレートパーマあててみようかな・・・。

服は、新しく買ったパフスリーブのトップスと、ちょっと長めのフレアキュロット。

ピアスと右手首のブレスは、赤い石があしらわれてるものにしよう。

あぁ、もう時間だ。

そろそろ出掛けなきゃ・・・。

パタパタと階段を駆け下り、玄関のドアを開けると・・・そこには・・・。


「お待たせっ!親友君」

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