sid 水無月しあ 「見過ごせない」
はなたばちゃんからメッセージが送られた少し後はなたばちゃんから動画が届いた数秒の動画だが、はなたばちゃんの緊張が画面の手ぶれで伝わってくる。
そしてカメラが動き扉を通る。そこには長髪の男と服を脱がされた簗型君がいた。
なにか細かいものが簗型君の近くにあるのは分かるがピントが長髪の男の方に合っていて上手く見えない。
そして、カメラがドアから引き抜かれようとする。簗型君を無理やりシアワセにしている瞬間を確実に捉えられなかったことに少し落胆してしまう。
その落胆の最中、カメラのピントが簗型君の方にあたる。その瞬間引こうとした手が止まる。
ピントが合ったそこには簗型君の首に注射器が刺さっていた。中の液体が流れ出す。瞬間簗型君の体はビクンと動いていた。
ガチャン
ドアの閉まる音で動画が終わる。
「はなたばちゃん……」
はなたばちゃんが怖かったのはカメラから伝わってくる。それなのに、私の為、それに、多分彼のために、あと一歩勇気を出した。そのおかげで私は決定的瞬間を目撃できた。
「ご褒美、だけじゃ足りないわね。」
私は呟き、はなたばちゃんへの報酬と、私の、私たちのこれからを考えていた。
「愛萌、みんなを集めてきて。」
「分かりました。」
私はこれからを話すために私が支配したみんなに声をかけた。
「戻りました。」
「戻りやした。」
坂野くんとはなたばちゃんが帰ってくる。
「おかえりなさい。それに、ありがとう。お疲れ様。」
私は全ての感謝を込めて彼女たちに声をかける。
そして帰ってきた2人から報告を受け、はなたばちゃんが長髪の男、蜜蜂呱々呂に声をかけられたこと、それを坂野くんに助けて貰ったことを報告された。
「……ありがとう。2人とも。でも一つだけ、自分も大事にして欲しいわ。あなた達が、不幸になるのは私が嫌なの、お願い。」
私は頑張ったふたりに少し我儘なお願いをする。
バツの悪そうな二人を見ながら続ける。
「改めて……本当にありがとう」
私は二人を抱きしめる。今できる最大の敬意として、無事に帰ってきてくれたという安心感を込めて抱擁する。
「コホン」
恥ずかしい雰囲気を仕切るために咳払いをする。そしてこれからについて真剣な話をする。
「別に、人の交友関係にまで口をだすほど傲慢でもないの、それに、彼がシアワセならそれで良かった。でも、彼は薬を使っていた。
私はクスリが許せない。私があげられるはずだったシアワセを無理やり奪い取るクスリが大嫌い。
それを使ってシアワセにさせるなんてのたまっている連中も大嫌い。」
揃った子達はみんな私の方を見ている。真剣な目で、私の指示を待っている。
「彼の行為は見過ごせない。だから、簗型君と、愛萌のお友達、花乃君を蜜蜂呱々呂から、解放して、彼を捕まえる。みんなにはその証拠集めを手伝って欲しいの。お願い。」
「もちろぉん、やりますよぉ。」
はなたばちゃんが声をあげる。それに続き、みんなも声を上げてくれる。
続々とあげられる声、ついにみんなが私に声をかけてくれた。
その頼もしさに、私は少し弱気になっていたことを恥じる。
「簗型君と花乃君を私達で。シアワセにしましょう!」
決意を固め私たちはカフェを後にする。
そうして、私たちは、簗型君と花乃君に違法な行為をする呱々呂の証拠を集め始めた。




