親友(ともだち)
「人を好きになるって、どういうことなんだろ。」
僕らは、いつものように屋上に来て昼食を食べていた。出会ってから2週間がたった。2週間欠かすことなく屋上に来て、なんてことない話をしていた。
「はな君はよくそういう疑問を見つけてくるよね。僕には思いがけない疑問を持ってきてくれて、うれしいな。」
「なんだか、嬉しいような……嬉しくないような……」
「ふふ、複雑なことを言ってしまったね、ただ、純粋にほめているんだよ。」
「そっか。」
「それで、どうしてそんなことを?」
「いやぁ、最近さ、ネットとかでよく、好き同士の人が喧嘩ばっかりしててさ。恋人って何だろうって、それに恋人については、簗型君は一家言ありそうだし、聞いてみようかな、って。」
彼は心を許すとブラックジョークをはくようになるらしく、たまに僕のことをいじってくる。それは、友達の範囲で許されるので不快にならず。なんなら、腫物として扱われないだけ快適だった。
「そうだね、確かに一家言あるね。ふふ、それに君がせっかくいじってくれたからね。ある程度納得できるものを提供しないとね。」
「あ!そんなつもりは!」
……たまに天然でやることもあるみたいだ。
「こほん。これは、完全に僕の持論だけど、恋人は利害関係が一致しない限り、どちらかが施して、どちらかが施されるそういう関係性なんだ。恋人って、成功している恋人は、何かができないところを補ってもらって、相手の足りていない部分が偶々、自分の余った部分だった。それだけの関係性なんだと思う。
もちろん施すのが好きだったり施されるのが好きだったりする二人は、各々の欲望を満たせるから、それも、利害関係の一致だ。」
「うん……」
「あと……これは、あんまり信じてないんだけど。
例外として、純愛ってのはある。んだって。」
「じゅんあい?」
「そう、よくあるラブコメの、この人が好きってお互いが思って、そのまま、付き合うみたいな、アレ。」
「え……それが、例外なの?普通じゃなくて?」
「例外も例外だよ。だって、好きってだけの利で二人の人生を混ぜて二等分するんだよ。そんなの、狂っていると、思ってしまうな。
ただ、これは、もちろん持論だから、世間的に見れば、逆なのかもしれない。ただ。僕は今、そう思ってしまっている。」
「そっか……ぼくは、ぼくは簗型君の言う例外を求めようかな。それが、ぼくが求めている。人を好きになる方法。なのかも。」
「……そうだね、確かに君には例外を求めて、例外として生きてほしいな……君は幸せになっていい。なったほうがいい。」
「……ねえ、簗型君。なんで、君は諦めたみたいにそんなことを言うの?」
「僕は、純愛をしていいような、人間じゃないんだ。」
「そんなこと!」
「ダメなんだよ純愛なんて、僕の趣味じゃないんだ。気にしないで、はな君僕はコッチのほうが好きってだけなんだ。」
「そう……なんだ。」
「気にしないで、はな君、僕の少し悪い癖なんだ。」
「そっか……うん。簗型君が言うなら気にしない!ぼくが純愛が好きなように、簗型君も好きな愛の形があるよね。」
「あぁ……」
気おされた、っていう表現が一番しっくりきた。あまりいい友達に恵まれてなかったのもあるが、恋愛に関しては歪んでいる自覚があったから、こんな真直ぐに僕のことを見てくれたのが嬉しいのと一緒に気おされた。
「え、えっとぉ、ぼく何かへんなこと言っちゃた?」
「いや、いやあ、違うんだ。僕は、こんなに真直ぐ僕を認められたことがなくって、少し……面食らってしまって。」
「……じゃあ、ぼくが、簗型君の初めての友達だ。友達は認めて認められて、受け入れて受け入れられる。そういうものだから。だから、君は、ぼくの一番の友達で、ぼくは、君の初めての友達だ。」
胸に優しい言葉が溢れてくる。
かわいい人だなみたいな初対面から、話すたび、ずっと愛おしさを感じていた。
でも、今の彼は、まるで王子様みたいだった。
思えば
「友達」
友達と呼べる人はいなかった。虐められ、利用する。そんなことばっかりの人生だったから。
「友達に、」
改めて、彼に言いたいことがあった。どうしても言いたいことがあった。
「ともだちに、なってくれますか、親友に、なってくれますか!」
微笑みながら、彼は、花野小路花乃は返事をした。
「―もちろん。」




