僕のシアワセ
イチゴのショートケーキ
マスカットのタルト
オレンジを使ったタルトタタン
「どれがいいかな?」
僕は甘い匂いのお店で悩んでいた。
「呱々呂さん。どれがいいと思います?」
「んー。僕はマスカットが好きだから、タルトがいいと思うな。」
「じゃあ、それにしよっかな。」
あれから一ヶ月僕は呱々呂さんと遊ぶことが増えた。勇気を出して声をかけたら快くOKをもらって、いろんなところへ行ったが、
「マスカットのタルトになりまーす。」
カフェdolce;に落ち着いていた。カフェでいうと.deepにも行ったことがあるが帰り際に店長さんに「あんま大物連れてこないで、隠れ家じゃなくなっちゃう。」とささやかれてから、行かないようにしていた。
「チーズケーキとブラックコーヒーとミルクになります。」
呱々呂さんはよくここに行くみたいで、たまにファンがいることがある。キャーって甘い声を出していた、女の子から「男の子とこころくんがいるの珍しー!新しい一面発見!ありがとう。」髪の色が派手ってだけで、とってもいい子だった、が、いい子だからこそこれ以上関わりたくなかった。
ファンになりたくはなかった。
「最近、クラスの子は僕をのけ者にするから、呱々呂さんが話してくれてとっても嬉しかったんです。」
呱々呂さんは何でもニコニコと聞いてくれるから調子に乗って何にもないことをずっと話してしまう。自業自得なクラス事情を少し僕に都合よく話す。
どんなことがあった、あんなことがあった。
だれが、なにに、どうして、どうやって、なんのために。
何でもないことを、何でもないように、初心な少年のように。
「へぇー、最近の学生さんって、何が流行ってるのかな?」
呱々呂さんは何でもないことが終わるころに何でもないことを何でもないように話してくれる。
なんでもないこの時間がとっても心地よくて
「流行りですか、デザート系はもうやりつくされて、一周回ってマカロンとか無難なとこに落ち着いてる感じです。」
僕は流行りがよくわからないのに気に入られたい一心で、必死に取り繕う。
そんなこと聡明な彼なら多分見破ってるはずなのに、僕を見捨てないでいてくれる。
それがうれしくてくだらない話をする。
愚かだな。誰かが言った気がする。誰も言わなかった気もする。
「日が暮れてきちゃったね。」
「そうですね!そろそろ帰らないと……」
「そんな悲しそうな顔しても時間は止まってくれないし、僕はどこにも行かないよ。」
なんでもないように言うその言葉に心があキュンと救い上がる。
「じゃあまたね……簗型君」
「はい!また明日です!呱々呂さん!」
僕はわかっていたんだと思う。
この人なら、僕をシアワセにしてくれると。
「呱々呂さん……呱々呂さん、呱々呂さん。」




