破落戸とイケメン
挨拶をして、僕は街を歩いた。
なんてことない気まぐれだった。
人生が変わるのなんてそんな程度の気まぐれなんだろう。
「おい手前面ぁかせや。」
「な、なにかな……」
破落戸どもが声をかけてくる。
「なにかなぁじゃあねえよ。すかしてんなよ優男ぉ。テンメェ最近調子乗ってんジャあねえかヨぉ。」
「いや、そんなこと。」
「いやあ?反抗か反抗かあ?反抗はうちらじゃ犯行なあんだよぉ。」
「ごめんなさい。知らなくて。」
「ごめんなさいぃ?申し訳ございませんだろぉけいごってしってっか?しってらしゃいませか?知らないが通ったら、ポリ公はいらねえんだよ」
いらっしゃいませ?警察はいらない構文って破落戸も言うんだ。へーいがい。
「グアァッ……」
僕のみぞおちはこん棒のような腕に押しつぶされる。そこに追い打ちをかけるみたいに手の出っ張っている部分がじくじくと腹に響く。後を引く痛みがじわじわと快感をもたらす。
「ぐあぁ、だってやぉ、ぐあぁ、へっへへ。」
汚らしい嘲笑、汚らしい言葉。僕は興奮を抑える。
「なぁにもじもじしってんだぁよ。てめえあれか?マゾかマゾヒストかドM野郎ってか?」
汚らしい笑い声は波紋のように広がる。
意外と勘が鋭く危うくご主人様にしてしまうところだった。
僕は意図せずにやけてしまったのかそれを気にくわない破落戸の一人が僕のお腹を狙う。僕は抵抗するふりをして、足の届く先を鼠径部近に変えた
いたい。イタイ、痛い。
鼠径部に響く郷烈な痛み、まるで車でも突っ込んできたのかと思うほどの衝撃。
僕は今日はやけにのどが渇き、トイレに行ってないことを思い出した。
僕は、決壊した。下半身が温かい感覚。その瞬間僕の惨めさは天元突破し同時に快楽も天元突破した。
「こいつちびりやがった!きったねぇ!まぁだトイレトレーニングも終わってねえのかぁ?おむつでもつけて、授業受けろよ。日本地図野郎。」
さっきから思っていたんだけど、この破落戸、言葉攻めの筋がいい。もっと鍛えれば使えるかもしれない。
後になってわかったことだが、この破落戸どもは水無月しあの弟子らしい。なるほど筋がいいのも納得だ。また今度虐めてもらうとしよう。
「かはっ……」
一発ビンタをされる。
ぐわん。グワン
視界が揺れる。
破落戸が増えて見える。不快感が増し、快感が募る。
水を差す鶴が一声かける。
「おい!大人数がたかって一人を虐めるなんてどういうことかな。」
「はぁ、じゃますんなよ。こっちはこいつ苛めんので忙しいんだ」
邪魔しないでよ。こっちは苛められるので忙しいんだから。
「まずこいつが、おれの、」
「ってやべぇよ先輩、この人……」
取り巻きの一人がごにょごにょと何か話す。
「……………す……すんまっせんでしたあああああああああああああああああああ!」
破落戸どもはそう言って足早に帰っていった。
僕は内心むすっとしながら、助けてくれたお兄さんに声をかける。
「あり……が……」
バタン。体が崩れ落ちていく。思考も崩れだす。無理やり嵌めていたパズルのピースが結界する。
そういえば、いっぱい殴られたっけ。
そりゃそうか……
「簗型つむぐ……でs……」
ブラックアウト
視界は完全に黒に落ちた。落ちる視界の前あったのは
僕好みの長髪の男性の整った顔だった。




