ジェットコースター
平穏は好きだ。だって上がることも下がることもできる。
ジェットコースターの平坦な部分。あそこが一番興奮する。
僕はつまらない授業を片目に平坦なレールを加工する。
放課後
「ねえ、あーちゃん少しお話しないかい?」
「……おはなし?」
「うんお話。」
「……まあ……いいよ。いーよ。」
「どうしたんだい?何か暗い顔をしているね。」
「……いやー、何も、なにも、ナニもないよ。何もないさ、何もないとも。」
「明らかに動揺しているね。こんな時は楽しい話をしよう。そうだな……恋人の話とか?」
「―っつ!」
怒る。怒っている。怒った。怒らせた。
「どうしてそんなに動揺してるのかな?まさかもうシアワセになってしまっていているから、恋人なんて言う定義に怒り、憤り、憤慨したのかもね。そうだったら謝罪をしなければならない。」
断定。
「ねー……やーくん。それは最近つぼみがぎこちなく、かつ、海のクラゲみたいに私を避けている。ことへの当てつけか何か?」
「そうだったんだね。それは申し訳ないことをした。花束さんと何かあったのかい?」
「……なにもないの……何もないからわからないの。暗い顔の理由を話してくれない。
つぼみの事を友達に相談するたび、暗い顔をする。」
それは、はなたばさんは独占欲があるのに対して君のそれはアクセサリーの自慢だ。相性のヒビはもともと入っていたらしい。
「それはつらかったね。」
「それで……」
―スマホのバイブレーション。ピコンという通知音。
「……いーよ。みなよ。」
「うん。花束さんからだ……」
「っ!つぼみが!なんて。」
僕はあまりのことに顔を隠す。
振りをする。
「いやこれは……見ない方が……」
「いーから!いいから!」
「忠告はしたからね。」
僕は彼女にスマホを手渡した。
*************************
彼女と出会ったのはスーパーマーケットだった。
私はわんわんと泣き叫ぶ少女がいた。
同年代の子だなーって言うのはわかっていた。
「だいじょーぶ?」
声をかけたのは偶然だった。なんというか、可哀そうだった。
「だぁれ?」
幼い自分よりもっと幼い少女に出会った
「あお、あじさいあお。」
「あおちゃ、って言うんだ。」
ちゃんがまだうまく発音できないらしい。ちゃ、やちゃむといった発音になっている。
もう少し言いやすくしてあげたい。そうおもって、少し前に読んだ絵本を思い浮かべていた。
このころは絵本を何冊かそらんじることができるほど本を読んでいて、自分のことを童話のプリンセスか何かだと思って過ごしていた。そしてその中のさんや君子他にさまというのがあった。
「あおさまとよんだらよびやすいんじゃない?」
「あおちゃま?あおちゃま。あおちゃま!」
我ながら図々しいお願いだったが彼女は喜んでいたようだった。
「おなまえはなんていうの?」
「はなたばちゅ、…チ…つぼみ、っていうの」
「いいおなまえ!つぼみ私たちお友達になりましょう!」
無理やり彼女の手を取った。
気分はお転婆なプリンセス。
そんな手を
「うん!」
彼女は取ってくれた。
それから、ずっと彼女は私を慕ってくれた。
いくつ年が変わっても変わらず。
「あおちゃま」と呼んでくれた。
私は多分世界一シアワセなお姫様だった。
*************************
脳は一番幸せだった記憶を無遠慮に見せてくる。
ジェットコースターはもう止まらなかった。
『いぃでしょつむぐん。ご主人様見つけたの。』
そんな文言とともに写真が送られてくる
熱っぽい視線。瞳はハートマークであふれている。
鎖骨の下あたりに付けられた印は隷従の印だった。
あいていなかった耳にはピアスがついている。
だらしなく舌を出しご褒美を待つ駄犬のような表情それは
私でない
紫陽花あおでない
誰か
彼女
に向けられていた。




