ハイドレンジア
しとしとと雨が降った夜だった。
いつものように日記をつけていた僕は気分が悪くなって日記を切り上げて眠りについた。
朝日が僕を照らす。支度をして外に出る、雨が降った形跡がポツポツと目に入る。
珍しく咲いた花に意識を向かせてみた。
青と紫の紫陽花がお互いに領地を主張するみたいにいがみ合っていた。真ん中に蝶が止まり紫の花と青の花をどっちがいいか悩むみたいに飛び回っていた。
キーンコーン
予鈴がなった。
急がなければ。
「おはよう。」
「おはよー」
僕の挨拶は返された。
「ん?どうしたの?やながたくん?」
「えっと、紫陽花さん?」
「紫陽花さんだよ?」
「どうして?」
「どうして?あー。そういう事か。
今までごめんね。挨拶したらしのちゃんに色々されちゃって。」
「いや、それは。」
「でもね。しのちゃんはいないし、今までみたいな扱いはされなくていいの!
だから挨拶はしたら、返してもらえるんだよ。」
ちがう
「それにね。ほら。おいで?」
ちがう
「笹本さんと日緑さんのふたりがね。今までのこと謝りたいって言っててね。」
ちがう
「やながたくんさえ良かったら、謝らせてあげて欲しいの。」
ちがう
「「ごめんなさい。」」
頭を下げる2人、その後ろにいる紫陽花あお
「許してくれるとうれしいんだ。」
ちがう。こんなの、望んでない。
「それを世間はワガママっていうんだよ。」
他の誰にも聞こえないように、彼女の声が僕の耳に響く。
「1番下でありたいなんてワガママ、私も私達も許しはしないんだよ。
それが、世間だから。」
やめろ。分かってる。そんなこと分かってる。
「いじめの被害者は成敗が終わったら、優しくされなきゃ行けないの。
被害者なんだから。」
やめろ、僕を上にするな。
「それじゃあやながたくん。またね。」
気持ち悪い。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
「おぇ、うぇ」
何も気持ちよくない。計画が壊れる様を特等席で見せられたような感覚がする。
すっかり吐きなれたと思ったのに、今回の嘔吐はいつもの数百倍気持ち悪かった。
彼女は僕の計画を台無しにしようとしている。
何とかしなければ行けない。
計画を立て直さなければならない。
それに。
あの女から全てを奪いたい。
僕の快楽を、僕の欲望を
わざと壊すようなことをする。
それも、一見正義なやり方で。
これはワガママだ。傲慢だ。
でも、これまでだってやってきたことだ。
宣戦布告。甘く見ていたかもしれない。
わかった紫陽花あお。君の宣戦布告。全て壊そう君ごと。
僕を怒らせるって言うのはそういうことだから。




